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超人

「何よ今の!? えっ、ちょっ!? あれ人間!?」


 VIP席で取り乱す礼奈。

 羅刹はもう何も言わず、好美と次の試合の賭けオッズを見始めている。


「へぇ、次はアメリカのスタボーって選手が人気なんだなぁ」

「うん、倍率たったの一・〇五倍だって、逆にこっちの桐生って選手は七倍だって」


 好美のスマホを、二人で覗きこむと羅刹と好美の顔が近づいて、好美はちょっと頬を染めてしまう。

 その間にも礼奈はパニック状態が収まらず、姉の華奈が説明を始める。


「ギリシャのエースランカーアドニウス。彼の事なら知っているわ。彼、確か全身がピンク色の筋肉なのよ」

「ピンク? スケベなの?」

「お前は馬鹿か」

「雇い主に向かって馬鹿とは何よ羅刹!?」


 猫のように歯を剥き出しにして怒る礼奈。

 その姿を見て、羅刹は無表情に一言。


「社長、妹さん可愛いですね」


 好美も、


「可愛いですね」

「わかる?」

「なんかすっごくバカにされてる気がするわ!?」


 ますます目を吊り上げる礼奈に、羅刹は説明する。


「筋肉には白筋と赤筋があって、人間はそのどっちから一方だけを使って運動しているんだよ。長続きしないけどパワーのある白筋は短距離走やバーベル上げの時に使う筋肉。パワーはないけど長続きする赤筋は長距離走や姿勢維持に使う筋肉だ。ようするに人間は半分の筋肉で運動しているってわけだ」


 羅刹は自身の腕を差し出して見せる。


 太く逞しいが、実際には運動によって使う筋肉を使い分けるので、この半分の筋肉しか働いていない事になる。


「じゃあ、ピンク色の筋肉って言うのは?」


「白筋と赤筋は普通半々だけど、実際には両方の運動で使えるピンク色の筋肉が少し混じっている。アドニウスが全身ピンク筋だって言うなら、あいつはどの運動でも全ての筋肉を使って運動できることになる。つまり、あいつはあらゆる運動を見た目の二倍の筋量のパワーを発揮できるってことだ。何せ赤白どっちから一種類だけで運動している俺らと違って、どんな種類の運動でも全筋肉が稼働しているんだからな」


「……羅刹のピンク筋って多いの?」

「まぁまぁだな、鍛え方でピンク筋肉を太くしたり比率を変えたり、それでも完全に全身がピンク筋っていうのは、そりゃ体質だな」


 礼奈は唇を尖らせる。


「むー、なんかズルイわね」

「ズルくなんかないさ。才能も実力の内だ。おっと、次の試合が始まるぞ」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ピンク色の筋肉については間違いです。

 これを書いている当時の私が間違って覚えています。

 が、あえて当時のまま投稿しています。

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