表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/98

最古の武術

『それでは戦いもついにBブロック! 選手入場です!』


 試合も食事も終わった羅刹達はVIP席に深く腰を下ろして観戦。

 二次予選は明日なので、今日の羅刹達はもうお客さん気分だ。


「中国四千年がどうした! 五千年の歴史を持つ世界最古の武術がそのベールを脱ぐ! カラリパヤットの達人が歴史の重みを見せつける! インド企業! インダス・ムービー社代表! 身長一八六センチ! 体重九七キロ! 古代戦士! アジャンダッタ!」


 麻黒い肌のインド人男性が入場。

 選手全体で見れば平均的な体格。

 細身でも、特別体格が良かったり過剰に発達した筋肉を持つわけではない。

 落ち着いた表情で、悠然とリングイン。


『対するはその筋力人類最強! スピードテクニック一切不要! スウェーデン企業! トールガルズ代表! 身長二一〇センチ! 体重二一〇キロ! Tレックス! レグナス・ラミエルソン!』


 続いて入場したのは、金髪碧眼の小山のような男だった。


 一言で言えば、格闘家ではなくボディビルダーの世界チャンピオンと言ったほうがいい。


 まるでアメコミヒーローのような、極端な筋肉。


 会場の誰もが目を丸くして、もしくその姿に熱狂して拳を突き上げた。


 手足の太さはまるで女性のウエスト並。


 背中は亀の甲羅のように盛り上がっている。


 首の筋肉が発達し過ぎて、首が無いように見える。


 腹筋と大胸筋の印象は、まるで鋼鉄。


 発達し過ぎて、常人とは形状が違い過ぎて肉襦袢を着ているのではと錯覚してしまう。


 それほどの筋肉だった。


 悪く言えば筋肉デブ。


 だが、この筋肉の塊が敗北するところなど想像できない。


 両社は互いに一言も話さず、ジッと相手を見据える。


『それでは両者、準備はいいですね? 構えてぇ! 試合、始めぇ!』


 動かなかった。


 今までの試合は、どれも試合開始と同時にどちらかが突っ込んだが、この試合は動かない。


 互いを見据え、相手を分析するように、相手の出方を観察している。


 レグナスを視界に収めながら、アジャンダッタは歓喜していた。


 かつて、人類は武を持たなかった。


 ただ力任せに手足を振り回すだけ。


 だが人類史において、初めて闘争に技術を、頭脳を使う人々が現れた。


 そうして生まれたのがインドのカラリパヤットだ。


 インドこそが武術発祥の地であり、武術の発明国。


 インドで生まれたカラリパヤットは時を経て中国へ伝えられ、中国拳法となった。


 中国拳法が琉球王国、現在の沖縄県に伝わり、琉球空手となった。


 琉球空手は日本に伝えられ、今の空手が完成した。


 多くの武の始祖として、

 現在世界を席巻する武術の起源として、

 原初にして最古の武の担い手としての誇り。

 アジャンダッタは負けられなかった。


「…………」


 まして、相手はあのレグナス。

 インドNVT業界でも、レグナスの名は知っていた。

 スウェーデン、否、北欧NVTの頂点に君臨するモンスターマシン。

 全ての武術を筋力だけで叩き潰し、武術など弱者の戯言と言い捨てているらしい。

 だから。


「レグナス・ラミエルソン」


 寡黙なアジャンダッタが、重い口を開いた。


「今日は、君に武術の真髄を教えてあげよう」


 アジャンダッタが消えた。

 身を低くして素早く駆け抜け、レグナスのふところに潜り込む。

 姿勢を低くした状態からレグナスの膝を真横から蹴り飛ばす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ