限界の向こう側へ!
一方。試合展開はと言うと、ダウンしたロバートが復活。
再び羅刹と向き合う。
「すげぇタフネスだなあんた」
「へっ、ストリートファイターの頑丈さナメんなよ。俺らはグローブなんてつけねぇ。技を当てたら一本勝ちもねぇ。いつだって素手で死ぬ程殴り合って立ち上がれなくなって初めて勝負がつく。お前らスポーツ格闘技とオレとじゃモノが違うんだよ……いくら速くってもなぁ!」
ロバートがアメフトタックルをかける。
顔面に羅刹の全駆右ストレートが炸裂。
「フンヌッ!」
「なっ!?」
ロバートは額であえて受けて、そのまま体格と体重で押し切った。
交通事故にでもあったようにして羅刹が跳ね飛ばされる。
仰向けに倒れた羅刹の上に乗り、ロバートはマウントポジションを取った。
「気ぃ張っていれば我慢できんだよ! 喧嘩野郎のガッツをナメてたなガキが!」
勝者の笑みで始まるロバートのラッシュ。
一・五倍の体重を誇るロバートがマウントポジションを取りやることは一つだけ。
その剛腕が生み出すパンチを振り下ろすだけだ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
「くっ!」
羅刹は顔の目で両腕を構えてガード。
しかし重量級パワーファイタ―、ロバートのマウントパンチ。
ガードの上からでも十分に響く。
体格差を考えれば、いつ羅刹の腕の骨が折れてもおかしくない。
羅刹は驚嘆する。
――こいつ、全駆が効かない!? まずいな、この体勢じゃ他の二つも使えないし。奥義全部封じられてるな。
両腕の激痛が増し続ける。
骨の強度には自信があるが、折れにくいのと絶対折れないのは別だ。
これはトーナメント、決勝までに怪我をすると不利だ。
今の状態が続けば、確実に羅刹の敗北だ。
――なら、あれだな。
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…………」
羅刹は肺の中の空気を絞り出すと、今度は深く吸い込んだ。
そして次の瞬間、
「あっ?」
羅刹がブリッジ。
背筋力でロバートを跳ね上げた。
「つつ、なんだ?」
持ち前の運動神経だけで着地をするロバート。
今、彼の眼には、羅刹の異様さが映っていた。
ロボット。
まるで銅像や石像のような無機物感と同時に、エンジンを噴かしているバイクのような熱量を感じる。
何よりも今の背筋力。
ロバートは思い出したのは、テキサスの暴れ馬に乗った時のパワーだ。
真下から超重量物質が一気に跳ね上がるようなエネルギーが、こんな小柄な子供から放たれた。
羅刹は何も言わず駆けて来た。
「いいぜ、こいよ、付き合ってやっ」
気付けば、もう羅刹は懐にいた。
剛速で距離を詰めた羅刹の、万国ビックリ人間ショーが始まった。
――見てくれよ礼奈。これが俺の……ビックリ芸だ!
鬼ラッシュ。
上段中段下段突き蹴りが、一切の途切れなくガトリング式にロバートを襲った。
顔。
喉。
胸。
肩。
腕。
腹。
足。
全身の全てを叩きのめされ、反撃の隙が一切無い。
無呼吸による無酸素運動は確かに莫大なエネルギーを生むが、それを考慮してもなお異常過ぎる身体能力アップだ。
長年無呼吸運動の修練を積んで来た羅刹。
その体は無酸素運動の効率を大幅に上げ、より長くかつ、より多くのエネルギーを生み出すように進化しているのだ。
「ぐぅっ」
ロバートは反撃こそできないが、両腕でガードの構えを取るのに成功。
分厚い筋肉と腕の鎧で、耐え忍ぶ。
天城羅刹の全力鬼ラッシュを受けて一分。
まだロバートは耐えている。
彼とてアメリカNVTのスター選手。
その戦闘力は並大抵のものではない。
羅刹が並大抵の一五歳ではないように、ましてロバートは一切のトレーニングをしないナチュラルボーンファイター。
常人とは生まれ持ったモノが違う。
――駄目だ。押し切れない!
無呼吸状態は二分しか持たない上に、使用後はやや運動能力が落ちる。
終われば、またロバートのターンだ。
一分三〇秒。
ロバートは倒れない。
だがガードが開きかける。
一分四〇秒。
倒れない。
だがガードの隙が大きくなる。
一分五〇秒。
ロバートのガードが開いた。
これで顔を直接殴れる。
だがもう無呼吸状態の残り時間がない。
二分。
とうとう羅刹の限界時間が来てしまった……が、何故かまだ続けられた。
二分一〇秒。
羅刹は息を吐き出してバックステップ。
ロバートはまだ立っている。
「…………」
ロバートは喋らない。
無言で一歩、二歩と前に進んで、そして前のめりに倒れた。
バニーガールのお姉さんが駆け寄って、ロバートの顔を覗きこんだ。
『試合終了!』
お姉さんは、何故か羅刹の手を握って振りあげる。
「え?」
『勝者! 天城羅刹選手♪』
ニューヒーロー誕生に、観客席から拍手喝采。
そして、
「せっちゃんやったー♪」
「羅刹―!」
VIP席で好美と礼奈が跳び跳ねている。
そしてバニーガールのお姉さんが顔を近づけ、
「すごいねボク。お姉さん応援しちゃう♪」
自然と彼女の爆乳が脇腹に当たって、羅刹は顔が熱くなるのを感じた。
「おい……らせつ」
倒れたまま、ロバートが虫のような声を絞り出す。
「いいケンカだった……また、やろうぜ、へへ」
羅刹は握り拳を向ける。
「おう!」




