ブレイカーVS超健康優良児
『それでは第四試合! 選手入場! 本当のなんでもありを見せてやる! アメリカで人気沸騰中のスターがついに登場! アメリカ・ストリーフォファイト界のキング! アメリカ企業! ナノソフト社代表! 身長一八六センチ! 体重九二キロ! ブレイカー! ロバート・ローブ選手!』
ボクシングトランクスを履いた白人男性が入場。
年齢は二十歳過ぎくらいだろう。
分厚い胸板と上腕二等筋が目立つ重量級ファイターだ。
『対するは本大会発出場! 選抜大会で全試合をぶっちぎりで勝ち進みデビューを飾った超新人ファイターの参戦だぁ! 一日三食旗大路フーズの健康食品だけを食べて過ごし、新陳代謝で彼の体を構成するのは旗大路フーズの製品のみ! 日本企業! 旗大路フーズ代表! 身長一七〇センチ! 体重六五キロ! 超健康優良児! 天城羅刹選手!』
羅刹が笑顔で入場。
その様子を、礼奈はVIP席で震えながら見ていた。
「ああもう羅刹の奴、能天気なんだから。あいつこの試合にうちの社運がかかっているって理解しているのかしら?」
「……ねぇ礼奈。強い格闘家っていうのは、どう戦う人だと思う?」
「え?」
華奈の問いに、礼奈は一瞬困惑してしまう。
「最強を目指して戦う人、戦うのが楽しい人、お金を稼ぐ為に戦う人、戦う理由、戦う時の気持ちは人それぞれよ」
「……最強を目指す人? じゃない? 志は高いほうが」
華奈は、たおやかにほほ笑む。
「答え、私はね、やっぱり……楽しんで最強になる人が最強だと思うの」
「あんたがアメリカの喧嘩チャンピオン? すっごい強そうだな」
羅刹は頭のうしろで手を組んで軽口を叩く。
けどロバートも楽しそうに笑って答える。
「おうよ。アメリカのストリートファイトキング、ロバート様だぜ。日本の選手は小せぇなぁ。ていうかお前まだガキじゃねぇか」
「おう、まだ誕生日来てないから一五歳だ」
「マジでガキかよ!? 言っとくけど手加減しねぇぞ?」
「手加減なんかしてもらう気ないよ。俺も手加減する気ないし」
「言うなお前」
ロバートはニヤリと笑う。
「ああ。なぁお前さぁ、子供の時、トラとライオンのどっちが強いんだろうって思った事ないか?」
「あん?」
「だからさ、二つのモノがあってさ、どっちが強いだろうとか、前に見たアレとどっちが強いんだろうとか、自分がこいつと戦ったらどうなるんだろうとか思ったことないか?」
「ああ、それなら昔、ティラノサウルスとウルトラサウルスってどっちが強いんだろうって思ってたぜ」
「そんな感じ。他の試合見ると、どっちが強いんだろうって楽しくなるし。俺の目の前に誰かがいたら、こいつと戦ったらどうなるんだろうって楽しくなる。そんで、おもいっきり倒したらすっごい気持ちいいんだろうなぁって思う」
羅刹が、両手に拳を作る。
「だから、俺は手加減脚で思いっきりあんたを倒すぜ」
「へっ、いいじゃねぇか。気に入ったぜお前」
「俺もあんたとは気が合いそうだ」
雄同士の会話を聞いていたバニーガールが、笑顔で手を上げた。
『それでは両者構えて! 試合! 始めぇ!』
ロバートが一瞬で踏み込んできて右ストレート。
を、空中に跳んで回避。
羅刹は空中バック転しながらロバートの後頭部を蹴り飛ばした。
「あれって弘樹選手の!?」
VIP席で礼奈が叫んだ。
好美が嬉しそうに笑う。
「せっちゃんまたコピーしたんだ。でも当てるのが足の甲じゃなくてカカト。これは弘樹選手の躰道よりも威力高いよ」
羅刹は着地と同時にラッシュを駆ける。
息もつかせつパンチとキックの嵐。
だがロバートも負けていない。
頭部へのダメージから早くも立ち直り、羅刹と壮絶な殴り合い蹴り合いを繰り広げる。
体重差だろう。
ロバートの蹴りで羅刹が後方へ飛んだ。
頭部にカカトを喰らい、ラッシュのダメージも追加したにも関わらず、ロバートはまったく消耗した様子が無い。
礼奈が震える。
「うわわわわわ、やっぱり本戦の選手ってみんな化物揃いじゃない……選抜であれだけ余裕だった羅刹の攻撃全然効いてない! やっぱり会社は終わりよぉ!」
礼奈は頭を抱えてうずくまってしまった。
「せっちゃんがんばれぇ♪」
「って、あんたちょっとは心配してあげなさいよ! 幼馴染でしょ!」
隣で笑顔を崩さない好美に礼奈が怒鳴る。
しかし好美は、
「だいじょうぶだいじょうぶ♪ だってせっちゃん、まだ『三全』も二つの形態も使ってないもん。これからせっちゃんの全力が見られるよ」




