第26話 やらかした領主
王都に戻ると、続いて西に向かう。ウェルミュも分岐を予定しているターミナル駅になる。今回のメンバーは、高速移動のルナ、連絡役のピクシーたち、そして先乗りしてウェルミュに向かっているメフィだ。
今回も移動しながら駅や線路の配置を確認していく。今回は東西なので橋を多めに作らなくてはならないな。
俺たちは、ウェルミュ直前にいたメフィと騎士団一行と合流し、ウェルミュに入市した。
街門はスルーされ(王女と騎士団にアダマンタイト級冒険者じゃ門番は止められない)、先触れによって待機していた領主の兵たちに先導され、領主の館に案内された。超VIP一行だからそうなるわな。
「ようこそお越しいただきました、メフィリア王女殿下、ヤマト様。」
領主が館の玄関で出迎えてくれた。まあ、VIPならある意味当然だな。
「では、こちらへ。応接室までご案内させていただきます。」
俺たちは4人で応接室に入った。内一人は姿を消して……。
応接室では、一番上座に俺が座った。通常なら身分が一番高い王女が上座だが、今回は鉄道建設に関する契約の話なので、話の主体になる俺が上座に座ることになった。そのため、でっぷりとした領主は一瞬首を傾げてから、挨拶をする。
「メフィリア殿下、ヤマト様。私、このウェルミュ侯爵領の領主をしておりますグラフストール=バルマス=ウェルミュと申します。」
「メフィリアです。こちら、アダマンタイト級冒険者にしてマルサロア鉄道社長、そしてこのドリュフェス王国の救世主であらせられます、ヤマト様です。」
メフィに紹介されたので、軽く頭を下げる。――――――って、救世主ちゃうんやけどなぁ。
「では、打ち合わせをしましょうか。」
「ああ、その前に――――――。」
侯爵は執事に合図をし、執事は我々の前に袋を置いた。ひょっとして……。
「こちらをお納めください。このウェルミュまで鉄道を繋げてもらえるお礼です。大したものじゃありませんがな。まあ、このウェルミュが領の最南端ですので、北の領内に鉄道を走らせていただければありがたいです。」
がっはっはと笑う領主。だが……。
(うん、アウト。)
今、この瞬間ウェルミュ侯爵領の衰退が決定した瞬間だった。
「いえ、これは受け取れませんのでお返しします。で、このウェルミュへの建設の予定でしたが、色々見させていただいた後、この街の駅等の計画が完成したらお伝えしますね。一応、この街の南側に建設する予定でした。」
「ほう、そうですか。領内へ路線を伸ばすなら色々予定も変わりますからな。」
再びがっはっはと笑う領主。すでにこの場で建設されないどころか、ウェルミュ領内に線路を引かないことになっていることに気づいていない。
「では、計画の変更があるので、色々見に行くのでこれにて失礼します。」
「そうですか?晩餐もご一緒にと思ったのですが。」
「いえ、色々しなければならないので。」
そう言って、俺たちは席を立った。
「まさか、最初の計画の終点がこんなことになるとはな。」
「そうですね。で、どうするのですか?」
「とりあえず、ウェルミュの手前の村から南に回り込んで行く予定になるかな。当然ウェルミュ領に駅は作らない。だけど、地形を調べないと、なんとも言えないかも。」
建設が難しい地形だと、大幅に迂回しなきゃならないからな。
「まずは、南を見に行こう。メフィは王都に戻ってこの件を報告してくれない?あと、俺から正式発表があるまでの箝口令も。」
「わかりました。お父様に報告しておきます。」
「気を付けて帰ってね。」
俺はピクシー1人をメフィに同行させることにし、メフィと騎士団一行と別れ、一路南に向かった。




