第21話 保線作業
俺は試乗会の翌日には助っ人を連れてモルテックの工場に向かった。
「お疲れさま。助っ人を連れてきたよ。」
連れてきたのは、魔法ラット10人と、ドワーフの男が1人だった。
「親父!」
「おう!」
リンちゃんのお父さんだ。
「教える。」
「わかった。」
「こっち。」
「うむ。」
相変わらず、口数が少ない親子だな。
「彼らも作業に慣れてきたから、前よりも効率は上がると思う。」
「ちゅう。」
早速情報の交換をして作業を始めるみたいだ。俺は保線に必要なアレを用意するか。
8日後、工場にアモリと、男女10人が馬車に揺られてやってきた。
「社長、保線係候補を連れてきました。」
「うん、ありがとう。」
彼らは、違法奴隷にされていた人たちの中で、土魔法や金属加工ができるメンバーだ。
「じゃあ、一休みして明日から作業に入るから、よろしくな。」
そう言って彼らを宿に行かせて、翌日のためあるものを用意する。
翌日、俺は保線要員になる彼らを連れて、レールの設置をする場所に移動する。今日までに5000本のレールが作られていた。みんなに感謝だ。
「じゃあ、保線の仕方……というか、まず線路の敷き方を説明するね。」
そう言うと、俺は砕石を30mほど敷き詰める。
「このように、バラストを敷き詰めて、その上に枕木を乗せる。」
続いて、枕木を乗せる。
「枕木はもう1本入るくらいの間を空けて並べていってほしい。そしたら、この上にレールを乗せる。レールは重いので、レール運び専門の人員を用意するから。将来複線化した時は、レール運び専用クレーンを作っておくからそれを使うように。」
ぶっちゃけ1500㎏のレールは15~20人がかりで運んだ方がいいだろう。もちろん、筋力がある種族ならその限りではないが……。
「次に、レールの曲がりを調節する。これは慣れるまでは角度がわからないだろうから、定規を作っておいた。レールの曲がりは曲線半径という数字を使う。これは”半径何mの円と同じ曲線”という意味で、駅構内以外ではだいたい100m以上の曲線になるから、そんなん言われてもわかるかいってことになるんでこれを使ってくれ。曲線に合わせて金属加工で曲げればいい。」
そう言いながら定規を見せた。
「次に犬釘を打つ。枕木とレールを繋ぎ止める部分だから、弛まないように打ってくれ。場所は外側と内側の両方だ。」
そう言って犬釘を1本打って見せる。保線要員にも打たせてみた。
「続いてもう1本のレールを設置するんだが、幅が決められている。基本的には幅は1435㎜なんだが、カーブでは安定して曲がるために少し広げる。これをスラックという。これは何㎜広げるかを表す。確認にはこっちの定規を使うように。」
そう言って、実際に1435㎜の幅に置いて、定規を当ててみせる。
「問題なければもう1本も犬釘を打って、レールを枕木につなげる。次に、カントを合わせる。これはカーブで外側を何㎜高くするかで、これで遠心力――――外側に引っ張る力を減らしてスムーズに曲がれるようになる。これは水平器を着けた定規を用意したからこれで測ってくれ。」
そう説明をする。今回は必要ないので解説だけだ。
「最後にレールが波打たないように気を付けながらバラストを押し固める。これで、レールの設置は終わりだ。あと、レールとレールをつなげるために、この継目板の穴をレールに開いた穴に合わせて、ボルトで止めてくれればいい。裏表だけ間違えないようにな。」
そう言って、継目板とボルトを見せる。
「注意してほしいことは、レールの状態が悪ければ乗り心地に影響が大きいので、丁寧な仕事を心がけてほしい。あとは、保線の時には曲線標や逓減標、勾配標があるから参考にしてほしい。各標の読み方は後で説明する。」
そう言って1日かけて線路の引き方を教え込んだ。
翌日、保線要員を集めて、標識の勉強会を行う。今回連れて来たメンバーは文字が読めるので問題ない。
「じゃあ、保線の時に目印になる標識を教えていくね。あと、君たちが保線責任者になる可能性が高いから、頑張ってね。」
「「「「「「えっ!?」」」」」」
うん、ビックリしてるな。でも、ちゃんと覚えてもらわないと困るよ。
「じゃあ、まずはこれ。」
そう言って、1mほどの長さの下が黒、上が白の四角柱を三面になるように縦に割り、上部を三角にしたものを見せる。
「これが曲線標な。この広い面に曲線半径。残りの面に曲線のステータスを書いてある。Cはカント、Sはスラックで、CCLがカーブの長さ、TCLが緩和曲線長になる。緩和曲線ってのは、直線から急に曲がると脱線しやすくなるから、徐々に曲げることで脱線しにくくする部分のことね。」
続いて、下が黒、上が白の四角柱で、上部に黒の横線があるものを見せた。
「これが逓減標な。これが差してある場所から曲線標までが緩和曲線になる。」
次に、下が黒、上が白の四角柱に2枚の腕木がついたものを見せる。
「これが勾配標だ。このに延びる板が勾配を表し、白い部分の向きでどっち向きの勾配かがわかる。数字は勾配率で、1000mで何m上り下りするかになります。Lは水平ですね。黒い部分がそこまでの勾配になります。まあ、白の裏なんでわかりますね。」
さらに3本の標識を出す。ひとつは2mほどの曲線標に似た形をしたもので、もうひとつはそれを1.5mほどにしたもの。さらにもうひとつ、小さな白い柱だ。
「これが距離標、起点からの距離を表す標識で、大きいのはkm、中くらいなのは1/2km、小さいのは100m単位で設置する。数字は大きいもの、中くらいのものはkm、小さいのは100m単位で書かれている。これも線路横に立てておくので、保線作業に役立つだろう。よく覚えるように。」
こうして保線用の標識を保線要員に教えていった。
10日かけてモルテック工場とユーフィの間にレール輸送専用線が開通した。やっぱり魔法があると楽だな。じゃあ、次は運転士の育成かな。
今回、鉄道用語は結構あるけど、全部本編内で解説済みなので後書きの解説はありません。




