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第20話 試乗会4とその後

 連結が終わり、機関車から客車に移動し、俺は帰りの予定を告げる。


「それでは、これより元の場所まで帰ります。今度は座席は後ろ向きに走りますが、正式開業した後は三角線を作って、1等車と2等車の前後を進行方向に合わせます。では、準備ができ次第、すぐの発車になります。」


 俺はそう言って客車の手歯止めを外してから機関車に戻り、自動解結装置を運転に切り替え、前方の運転席に移り、マスコンキー、ブレーキハンドルを取り付け、逆転機を前に入れる。そして、踏み切り予定地まで戻り、警笛を鳴らして衛兵に通行人や馬車を安全な場所に下がらせ、もう一度、警笛を鳴らし、発車したときの仮設ホームまで戻り、そのホームの停止位置目標に合わせて停車させた。

 俺は、マスコンキーを外し、機関車から客車の方に移動する。


「以上で、試乗会を終わります。どうでしたか?」

「素晴らしいな、この鉄道を使えたらどれだけの軍事的アドバンテージが取れるか……。」

「軍務卿の言いたいことはわかりますが、ヤマト殿と対立して一般向けにも使用できない方が大損害ですよ。」

「確かに、我が領地にも引いてもらいたいですが、強引な誘引は禁止されておりますからな。バカな領主じゃなければヤマト殿と敵対するリスクの方が高いことに気づくでしょうな。鉄道のルートから離れてしまえば衰退は免れませんぞ。」

「王女殿下が輿入れしていただけるなら、我が国においては素晴らしい幸運ですな。」

「だからこそ、ヤマト殿に誠実にならなければなりませんね。」

「確かに。」


 そう言って笑う参加者たち。うん好評でよかった。


「今後、運転士の指導を始め、できる限り早急に建設を行います。建設予定地の皆さんには協力をよろしくお願いします。」


 こうして、この世界始めての鉄道の試乗会が終わった。




 試乗会が終わり、王城の会議室には王国の首脳陣が揃っていた。


「さて、鉄道に乗った感想を聞かせてもらおう。といっても、先ほどヤマト殿に言ったものがほぼ全てであろうがな。」


 そう切り出す国王。首脳陣もうなずく。


「そうですね、馬車より速く、馬車より振動の少ないですから、金があれば間違いなく乗るでしょう。どれだけ費用がかかるかわかりませんが。」

「今後の交通網は鉄道を中心に再編されるでしょうな。むしろ、再編されない理由が見つかりません。」

「まずはこの王都とウェルミュ、港町のハーコンと北部のユーフィ村に繋ぐとか。なぜユーフィなのかわかりませんが。」


 理由が日本人だからとは誰も思わないだろう。


「ユーフィはヤマト殿が主体で開発されるそうだが。」

「ユーフィとはどこの所領だ?」

「元ローズミア公爵領の飛び地ですな。今は一時的に直轄領に組み込まれています。」

「では、ヤマト殿にユーフィを領地として――――。」

「残念ですが、ユーフィはヤマト殿が企画、立案。商業ギルドが開発、運営ということで話がまとまっており、ヤマト殿は直接は行わないそうです。」

「そう……なのか。」


 ここに、あわよくばメフィの結納代わりに温泉地をヤマトに譲渡しようとした国王の目論見は絶たれてしまった。経営を商業ギルドに丸投げでは、領主にすることはあまり意味がなかった。


「ともかく、この国の経済が発展することは喜ばしいな。」


 そう言ってお茶を濁す国王だった。

三角線:九州にある鉄道路線三角線(みすみせん)ではなく、三角形状に敷設された配線のことで、この配線を利用して編成ごと進行方向を変えることができる。デルタ線とも言う。

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