表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/128

第18話 試乗会2

「こちらが1等車になります。本来なら席番号通りの席に座ってもらいますが、今日は試乗会なので、ご自由にお座りください。」

「ヤマト様はどちらにお座りになられるのですか?」


 メフィが聞いてくる。ま、俺の隣に座りたいから言ってるんだろうけど……。


「残念ながら、この試作車ができて間なしなので、運転士の育成ができておりません。ですので、俺が運転をします。車内での解説は前世が同郷で、鉄道の一般的な知識を持っているアモリシアが担当します。」


 俺はアモリが転生者だと説明し、機関車に向かおうとした。


「あの、運転の様子を見ることはできませんか?」

「あー、……そうですね、運転席は狭いので難しいですね。ですが、前面展望を見てもらうことはいいかもしれませんね。今後の参考にさせてもらいます。」


 メフィの提案に、安易に許可を出してしまうと、なら自分もと言う人が続出して収拾が付かなくなるかもしれないので、代案を出す。前面展望を見せることは鉄道業界では比較的よくあるし、撮影して再生する魔道具を作っているので、それを利用すれば簡単にできそうだ。


「では、出発までの間、しばらくお待ちください。」


 そう言って、俺は機関車に向かった。



 現在、マルサロア鉄道は職員の育成が終わっていない。と言うか、始まってすらいないので、通信魔道具と仮設の転轍器を使って行う。これは、現状後退運転が危険なためで、実験線の終端部に仮設の機回り線を作ったからだ。ここまでを魔法を使って一気に仕上げた。やっぱ魔法ってすごいな。


注:大和がチートなだけで、普通の人にはここまでできません。


 俺は運転席に座り、マスコンキーと、ブレーキハンドルを所定の位置に差し込む。万が一のためにブレーキハンドルも着脱できるようにしたので、乗務の度にブレーキハンドルを付けなければならない。マスコンキーで運転台を立ち上げたら、逆転機を前に入れる。そして、ブレーキを少し緩め、正常に動くかチェックする。準備が整ったら乗務員扉の窓から顔を出し、扉閉め灯が点灯しているのを確認する。ここで本来なら乗務員時刻表を確認して、信号が停止現示から変わるのを確認するのだが、現在この1編成しか運行できるものはないのと、信号機の設置ができていないこと、そして試験運行であるため省略する。本当は省略しないほうがいいんだけど……。


「出発、進行。」


 俺は声を出し、まだ作られていない信号を指差確認し、ブレーキを緩解し、マスコンのノッチを少し入れる。車両が少し動き、連結器が伸びきった僅かな衝撃を感じながら、ノッチを進段させ、さらに速度を上げる。列車は15㎞/hまで上がったのを確認し、ノッチをもどし、工場内から車両を出す。そのまま15㎞/hくらいで列車を走らせ、踏み切り予定地の手前でブレーキを入れ、停止させる。

 この場所は東門の前で、踏み切りの準備を終わらせ東門の衛兵に話をつけて列車運行時に人や馬車が通らないように通行止めしてもらうことになっている。俺は合図の警笛を鳴らし、衛兵に指示を出した。衛兵たちが列車が来たことに驚いて立ち止まった街道を来た通行人や馬車を安全な場所に下がらせたのを見て、もう一度警笛を鳴らして運転を再開する。

 この先は2.5㎞くらい先にある森の手前で線路が途切れているが、そこまでで障害物になるようなものはないし、レールを使った魔物避けの結界もうまく作動しているので、安心して走らせることができる。俺はさらに速度を上げ、65㎞/hまであげた後、徐々に減速し、仮設の停止位置目標に停車させた。




Side:客車内

 私は、今日のために用意されたマイクに向かって、事前に作成した注意文を読む。


「マルサロア鉄道のアモリシアといいます。これから、乗車中の注意事項について説明させていただきます。まず最初に、窓から顔を出さない。もし転落しますと命の危険がありますのでご注意ください。次に、走行中は揺れますので、転倒などしないよう注意してください。また、走行中やむを得ず急停車する場合がございます。その場合かなりの慣性――――――前方への衝撃みたいなものがあります。非常時ですので乗務員の指示にしたがって行動してください。勝手な行動をされますと危険です。では、まもなく、発車いたします。」


 少し待つと、軽い衝撃と共に、列車が動き出した。


「「「おお~~~~~。」」」


 この巨大な物体が動き出したのを感じて、この世界で始めて鉄道に乗った皆さんが驚きの声を上げた。


「ふむ、馬車よりも少し早いくらいだな。」

「ですが、馬車よりも多くのものを運べるのはいいですな。」


 タタンタタンと言う鉄道特有の音と同時に、そう言う貴族たちの声も聞こえた。ふふん、まだ鉄道は本気を出していないのだよ。

 そしたら、列車は速度を落とし、停車した。そしてパーンという音が鳴る。


「なんだ!緊急事態か!?」


 こわばった声を上げる貴族たち対し私が説明に入る。


「只今、当列車は踏み切りの予定地前で停車しております。東門の衛兵の皆様の協力の元、安全のため街道を一時的に封鎖をしております。建設が進めば、警報器と遮断機で、街道を事前に封鎖し、スムーズにこの場所を通過できるようになります。」


 そう解説していると、再びパーンという音が鳴り、再び列車が走り出した。


「これより列車は速度を上げ、実験線の終点まで走行します。僅かな時間ですが、列車の旅を御堪能ください。」


 列車は速度を上げた。と言ってもそこまで速度が上がってないな。っと思っていたら、客車内では驚きの声が上がっていた。


「なんだ!この速度は!馬車の比ではないぞ!!」

「外の景色があっという間に後ろに流れていくぞ!」

「この速度に追い付ける盗賊なんぞ、おらんな。」

「ルナちゃんよりも速いですね。」

「やはり、ヤマト殿は規格外だな。」


 うん、この世界でこれだけの速さで走っているのはないから、みんな驚いてるなあ。でも、まだ新幹線どころか、新快速よりも速度は出てないんだよね、これって。そうしていると、列車は減速し、森の手前で停車した。


転轍器:線路の行き先の分岐を切り替える装置。


機回り線:機関車を前から後ろに移動させるために設置した隣の線路。


扉閉め灯:扉がちゃんと閉まったか表す灯。点灯していたら閉まっている。


停止現示:道路で言う赤信号。


停止位置目標:列車を停止させるための目標。この位置が運転席と同じ位置になるのを目標にする。


警報器と遮断機:赤い灯を点滅させ、カンカンと鳴るのが警報器。遮断棹で道を塞ぐのが遮断機。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ