第15話 レール工場
アモリの実家にレール工場を頼んだところ、注文からわずか5日で完成するとの連絡が来たので、完成日に合わせて行ってみた。メンバーは俺、アモリ、リンちゃん、シルベスたち魔法ラットが4人と、すっかり足代わりにしてしまってるルナだ。
しかし、ルナがいてくれるだけで、移動が楽だけど、ルナにこれ以上負担がかからないよう、早く鉄道網を作らないとな。
鉱山まで行くと、鉱山のすぐそばにいくつものボタ山があった。
「アモリ、これが全部黒魔鉱なのか?」
「はい、そうですね。このボタ山1つでおよそ100万トンですから、半分が大和さんのものになりますね。」
「半分だな。しかし、昭和山ほどじゃないけど、でかいな。」
高さが10mはありそうなボタ山の半分の8割をレールにするのは骨が折れそうだ。
「で、レール工場があれか。」
「そうですね。」
注文通りの30m四方の建物の前には、数十人の人が集まっていた。
「で、あの人だかりは、うちに入りたい人と、金属を売り付けたい商人たちかな?」
「ええ、そうですね。」
俺とアモリは苦笑する。なぜなら、ここで作業するのはここにいるメンバーだし、必要な金属はすでに入手済みである。というか、ある程度の金属なら錬金魔法で産み出せてしまう俺がいるんだから必要な希少金属であるミスリルも問題なく手に入る。将来的に俺がいない状態で稼働させるにしても、レールに刻印する魔物避けの紋章は魔法ラットたちじゃないと刻めないほど細かい。だから、一度本社工場に持ってきて刻印する必要がある。なので、ここには盗まれて困る技術はない。レールを作ったとしても売れるのはうちだけだし、売値を吊り上げようとしてもうちで作れるから逆に買い叩けるんで赤字になる。品質が良ければ工員を引き抜いた方が安上がりになるだろう。
「ま、ともかく行こうか。ルナはそのままついてきて。」
「わかった。」
俺たちはフェンリルを従えて工場にむかう。そうすると、集まっていた人たちが、割るように左右に分かれていく。そりゃあ、フェンリル怖いからな。工場は一応立て板で囲ってあり、周りから見えないようになってるな。そして、入り口には衛兵が立っている。まあ、こんな状況だから、領主としては衛兵を派遣するよなぁ。
「どうも、マルサロア鉄道の大和です。」
「お疲れさまです。私はベレフェヌス男爵より警備に命じられましたエドガーといいます。」
と、頭を下げる俺たち。
「まあ、こんな状態になっていれば警備が必要になりますね。」
「ええ、そうです。就職希望の者や、商人が集まっておりまして……。」
「でしょうね。とりあえず、ここにいる人たちを解散させましょうか。」
俺は、後ろに集まっている人だかりに向いて……。
「マルサロア鉄道では、現在従業員の募集を行っておりますが、現在王都の本部でのみ募集を行っております。こちらでは一切募集を行っていないので、王都のマルサロア鉄道本部か商業ギルドにお問い合わせください。また、現在、マルサロア鉄道での資材について、すでに仕入れ終わっており、当面は購入する予定がありませんし、仕入れは本部で行っています。また、土地などに関しては、すでに王家より公有の土地の供与を受けており、私有地は商業ギルドに間に入ってもらうことになっています。こちらでは受け付けておりません。また、国との契約の際、鉄道建設用地の事前買収の上マルサロア鉄道に高値で売ること自体、契約違反になりますので、その土地へは鉄道を向かわせないことになっています。それ以外で、用件がある方は、こちらに残っていてください。あ、冒険者として依頼がしたい方は冒険者ギルドで、指名依頼をしてください。」
と大声で声をかけた。大半の人は肩を落として帰っていった。
「で、残られた人たちはなにか用があるのでしょうか?」
「はい、私、この村の村長をしているダルメシアンと申します。こちらに大規模な工場が作られると聞いたので、ご挨拶にと。」
「これはこれは、マルサロア鉄道の社長の新庄大和です。新庄が名字で、大和が名前です。」
そう言って俺は名刺を村長に渡した。
「ほう、冒険者もされるのですか。」
「まあ、ここではこちらに作った工場でレールを作るだけですね。」
「そうなのですか?」
「ええ、ここの鉱山で採れる黒魔鉱をレールに加工する工場です。王都まで運ぶコストと手間――――――1本作るのに1トン以上いるのに、どれだけの馬車を往復しなきゃならん。っということで、ここで加工する方が楽なんで、こちらに工場を作りました。」
「そうでしたか。では、こちらに工員を呼ばれるのですか?」
「将来的にはそうなりますが、当面は加工できる技術者が少ないのと、その他諸々の都合で今は職員の配置は少ないですね。」
まあ、ここに工員を送り込んでも、紋章が半ブラックボックス化してるから、王都の工場に一回運び込まれてから、各地に送られることになるかな。まずは、ここからユーフィと、ユーフィから王都までを最優先で作れば、ここは指導した工員で回せるようになるかな。
「まあ、それはともかく、この地では長く工場を稼働させる予定ですから、末長くよろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそ。」
そう言って、頭を下げる俺と村長さん。
「で、そちらは?」
「おう、俺はこのモルテック鉱山の鉱山長をを任せられている、グランツだ。ここで採れる黒魔鉱を大量に買ってくれたんだってな、そのお陰で俺たち鉱夫にもボーナスが支給されてよ、ありがとな。」
「いえいえ、これからも大量に購入させてもらいますんで、よろしくお願いします。」
「おう。で、どれくらい入り用なんだ?」
俺は少し思案するが、まあ言ってもいいだろう。
「そうだな、購入した分で国内を単線で建設はできるんだが、複線や、支線を考えるとまだまだ要るな。他の国に伸ばしていく予定だから、そうするともっと要るかもしれん。ただ、アモリから聞いた話だと、たぶん今ある分だけで足るはずなんだけど……。」
「そうか。じゃあ、当面は採掘は現状維持ってとこだな。」
「ああ、追加購入するときはよろしく。」
こうして、村長さんと鉱山長さんと話をし、レールを作り始める。今日はここに泊まることとして、目標10000本レールを作ろう。
昭和山:大阪市大正区にある山。大阪市営地下鉄の建設工事で出た残土を利用して建設、造成された人工山。当時、大阪万博を控えていたため、地下鉄の路線整備が急速に進んでいたため、残土処理の一貫で作られた。




