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第12話 温泉地開発

 職人たちは翌日から仕事をするため、各自工房へ帰っていった。俺たちは商業ギルドのギルマスとの打ち合わせを行うため本部の会議室まで移動する。


「さて、今日はなんの打ち合わせでしたっけ?」

「いや、特になかったんだが、鉄道の車両を作るって聞いて視察に来た。」

「なかったんかい。ま、お陰で手が抜けるところが見つかったからな。2期線以降だと食堂車が必須になってくるから、早くそこんところを詰めておきたいし……と言っても、さっきのでいいんだけどな。」

「そうですね。我々としては、他に必要なものがあれば、準備させて貰いますが……。」


 俺は少し思案をし、


「ホテル従業員を探している。僻地だが、王族も訪れることになる。」

「なるほど。では、元王城の侍女で引退された方を教員にできればいいでしょう。」

「たしかに、その道のプロだな。あとは宿経営をサポートしてくれる人だな。最終的にはその周辺が観光地として発展してくれればいいかな。」

「そうですか。」

「温泉地として開発するつもりだからな。温泉はいいぞ。まったりとして、ほっこりとする場所だ。そういった開発をする予定だな。有馬温泉みたいにしたいな。」

「ほうアリマオンセンですか。それは転生者、転移者の故郷の娯楽施設か何かですか?」


 ギルマスが聞く。まあ、娯楽施設っていうのも間違ってない場合があるけどな。宝塚とか箕面とか。


「いや、温泉は保養施設だな。ゆっくり癒される場所だ。ちなみに有馬は地名だよ。」

「そうですか、保養施設という考え方はあまりないですから、流行りそうですね。」

「鉄道が開業したら流行ると思う。それまでに宿泊施設や、温泉入浴施設を整備しなきゃとは思ってる。と言うか、あそこってどこの領地なんだろう?」

「どこですか?」

「ああ、ユーフィって村なんだけど。」

「ユーフィですか。ちょっと調べてみましょう。」

「アモリん家から近いから、アモリんとこだとよかったんだけど、どこの領地かいまいちわかんなくてな。」

「アモリとは、うちで働いていたアモリシアのことですな。それで彼女の実家の領地に近いのですな。となると、ひょっとしたら今は直轄地かもしれませんな。」

「直轄地?」

「ええ、あのあたりにローズミア公爵の飛び地があったのですが、公爵は処刑されましたし、後継に引き継がれたとも聞いてませんので、形式上直轄地になっているかと。」


 あの公爵の土地だったのか。で、今は誰も管理していないと。


「ちょっと相談してもいいか?」

「ええと、俺でいいのか?」

「ああ、俺はこの世界の出身じゃないので、貴族社会のことを知らんので。しかも、俺が相談できる人で詳しい順にいくと、国王、王女、宰相、内務卿、軍務卿、アモリだぞ。ノータイムで俺の領地にできる人か当事者しかいねえ。」


 今までの経緯が経緯だけに、知り合いがものごっつ偉い人しかいない。


「そうですね。アダマンタイト(ランク)冒険者であるヤマト殿に恩を売りたいと暴走する人しかおりませんね。」

「だろ。」

「では、僭越ながら相談に乗りましょう。」

「ああよろしく。」


 ということで、商業ギルドのギルマスに相談する。


「俺は領主にはなるつもりはないので、マルサロア鉄道として開発に参画して、村自体はアモリん家に治めて貰うのがいいと思うんだけど。」

「その場合には、一族のもの――――――おそらくアモリシアを婚約者にすることを求められるかと。」

「だよなぁ。そんな前例を作りたくないんだよ。じゃないと、後々色々面倒になる。」


 確かにとうなずいてくれるギルマス。だって、俺の方で決めたルールに抵触するんだ。


「では、王家直轄領のままヤマト殿が開発するのは――――――。」

「嬉々としてメフィの領地にしてくるだろうな。」


 そして正式に結婚したら結納金代わりに俺の領地になる。


「ですよね。」


 頭を悩ませる俺たち。しばらくしてギルマスがポンッと手をたたく。


「ヤマト殿、鉱山事業の方法を利用するのはどうでしょう。」

「鉱山事業?」

「ええ、鉱山事業は犯罪奴隷を使ってはいるのですが、それでは足りないので、職人ギルドが作業員を送り込んで参入しているんですよ。このとき、鉱山はその土地の領主のものだが、作業員の給与や福利厚生は商業ギルド所属の商会が行っている。商会は領主に鉱山の採掘料を支払い、採掘権を買っているわけだ。」

「なるほど、それを温泉と土地の使用料を払って宿や施設を作るって訳か。」

「ええ、宿も我が商業ギルドの範囲ですし、マルサロア鉄道の宿および開発部門として、切り離せるようにしておけば、問題ないかと。」

「なるほど、もし婚約者にしろだとかメフィの領地にするだとか言った場合、マルサロア鉄道から切り離して別の企業が行うことにすればいいのか。」

「その場合は、商業ギルドが責任を持って有能な経営者を用意しましょう。」

「だったら、企画・発案はこっちで。実際に作るのは商業ギルドってできませんか?」

「どう言うことですか?」

「ええ、マルサロア鉄道で、村の再開発をするのは変わらないですが、商業ギルドが一枚噛むのが違いですね。商業ギルドが行う予定の村の再開発を、うち(マルサロア鉄道)が下請けすると言う体にするんです。」

「確かに、村の開発をヤマト殿が行うが、開発後の業務はうち(商業ギルド)が行うことになるな。」

「さらに一歩進んで、運営もうちが代行するということも可能になります。まあ、そこは商業ギルドに任せることになりそうですが。」


 さすがに餅は餅屋、宿は宿経営を知っている商業ギルドに任せた方がいいだろう。


「コンセプトはこちらに任せてもらいたいですが、経営は完全に商業ギルドに任せようと思います。」

「え、いいのですか?」

「だって、俺は鉄道の事は詳しいけど、宿屋の事は詳しくないから、詳しい人に投げます。」

「お、おう、そうか。なら、任せてくれ。」


 こうして、商業ギルドに村の開発の協力を取り付けたのだった。

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