第11話 車両製作2
「次に、車両内部の説明をします。といっても、現在は距離の関係で座席車のみの運用を予定していますが、じきに寝台車、食堂車も必要になると思います。この二つはいずれ作るというものとして頭の中に入れておいてください。特に食堂車は竈を作るわけいかないから、料理用の魔道具を作る必要があるので、まだしばらくかかりますね。」
「料理用の魔道具ならあるぞ。『携帯用コンロ』という名で売り出されているはずだ。」
「えっ。……それって手に入りますか?」
「近くではなかったからな、後で調べておこう。必要な数がわかれば、商業ギルド経由で発注をかけておこう。」
うん、ここはギルマスの好意に甘えておくか。
「じゃあ、お願いします。食堂車はその携帯用コンロが手に入ってからですね。」
食堂車は後回しだな。携帯用コンロのサイズが関係するからな。
「では、まず客車の席ですが、3等級にして、シートピッチ――――――座席の間隔は1等1000㎜、2等900㎜、3等はボックスシートで1500㎜を標準とします。幅は1席450㎜から500㎜でお願いします。基本1等車2等車は全て進行方向に向いて運用します。中央部に通路を開けてください。1両あたりの座席定員は1等車は18列×4席で72名、2等車は20列×4席で80名、3等車は4席×12ヶ所×2列で96席になります。また、トイレが必要なので、2両に1つは4席分潰してトイレにしてください。じゃあ、実際に作ってみましょう。材料はこちらで用意しました。」
俺はそう言って実際に作る準備を始める。
「まず、台車の上にのせるためのピンを用意します。このピンの幅が台車中心距離になります。長さは13800㎜です。で、床下の部分は金属製でお願いします。この中心部分の前後にこの密着連結器を取り付けます。」
俺はその金属加工の技術を遺憾なく発揮し床下部分を組み上げた。
「ここで重要なのは、連結器と台車の間をこの魔力線で繋いでもらいます。この魔力線は特殊なもので、これを繋がないと事故に繋がりますので、必ず取り付けてください。取り付けるときは台車との接続部は緩く張ってください。台車が左右に動くので、張りすぎると切れてしまい事故に繋がります。この上は家を作るように作っていただければ結構です。」
「柱の数は?」
「お任せします。」
「材料と図面があるなら作ってみてもいいか?」
「そうですね、実際作ってみれば、作り方や問題点がわかるでしょう。」
そう言って、俺は許可を出した。30人の大工たちが図面を見ながらあれこれ話し合う。
「椅子は?」
「家具職人に依頼を出して、今朝届きました。一応1等車用の幅500㎜のものです。」
「窓は?」
「板ガラスを用意しました。」
「よく用意できたな。」
「実は、魔法ラットたちが、作り出してくれました。一応現在の技術で、工業化は可能です。」
「そうか。では作ってみよう。」
そう言うと、大工たちは一斉に動き出す。大工の七つ道具を持ってきてくれと言っておいたからみんな鉋や鑿を使い車体を組み上げていく。まず最初に床を張り、柱を立てていき、さらに床に椅子を取り付けていく。そして扉や壁、窓を取り付け、屋根を付けていく。そして4時間ほど経つと、1台の車両ができた。
「基本構造は今やった通りだな。2等車3等車もシートピッチ以外はほぼ同じだ。次に、貴賓車を作ることになる。これについては、王公貴族――――――というか、おそらく開業日に国王陛下が乗るのが目に見えているので、絶対必要だ。それで、この工場で車両を作ってもらうのだが、最も早く丁寧に作った大工工房に国王陛下専用列車『お召し列車』の御料車――――――国王陛下が乗車される専用車両の製作をしてもらおうと思う。まあこの世界風にいうなら、『国王専用馬車を作る』になるのかな。」
「「「「は、はぁあっ!?」」」」
「まあ、作ってもらうのは車体と内装だけで、対魔法結界とかは俺が作るんだが。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺たちなんかが国王陛下の専用車を作るのか!?」
「いや。」
「ああ、なんかの間違いだったんだな。」
ほっとする棟梁のおっさん。だけど……。
「国王専用車だけじゃなく、各国の要人が来たとき乗ってもらう貴賓車も作るぞ。」
「もっと酷かった!」
「もっとも、数は作らないがな。御料車は2両。正と予備だな。王太子専用も用意することも考慮すると3両かな。それに、各国要人の貴賓車は予備を入れて2~3両でいいと思う。」
「そ、そうですか。」
「あと、各貴族たちが自分の専用車両がほしいと言い出すかもな。その場合は値段を吹っ掛けるから、そこまで多くならないと思う。」
「……。」
絶句する大工たち。
「だ、旦那。一両どれくらいで売るんですか?」
「そうだな、金貨100枚くらいだな。ただし、専用車を作っても、運賃はもらうけどな。」
大体1両1~2億円ほどといわれているので、その5倍くらい吹っ掛ける。まあ、自社製作が基本なんで、そんなにお金がかかる訳じゃない。実際かかる費用は台車の製作で必要な鉄と車体の材料の代金と、大工の工賃だけで、金貨5枚くらいでいけるんじゃないか?で、保管場所はうちの車庫内にしか置けないから、保管代も毎年請求できるから、頻繁に使わないのなら貸切列車の方が安いかもしれない。
「え、専用車を持っても運賃はかかるんですか?」
商業ギルドのギルマスがそう聞いてきた。商業ギルド専用車を買うつもりだったな。
「ああ、この場合の運賃は、実際にマルサロア鉄道が鉄道を運行させるときの費用になります。馬車でいう御者は御者としてお金を貰うでしょう。それに、商業ギルドの本部で事務仕事をしている人にも給料は払いますよね。その給料はどこから手に入れたかというと、ギルドの年会費的なものがあるならそこからですし、仲介手数料があるならそこからです。それと同じように、鉄道を安全に運行するのに必要な人件費、それと列車を動かす魔力のもとになる魔石の費用も入ります。ただで列車は動きません。そして、1等車、2等車はいい車両と着席保証の付加価値にお金を払って貰い、専用車両はここに区分するので、その分の費用を除いた運賃そのものだけで運行するわけです。」
「なるほど、そう言うことですか。」
ギルマスも納得したようだ。




