第4話 建設予定地と魔法ラットたち
冒険者ギルドを出た俺は、そのまま南門近くの本部に帰る。そこには数人の人たちがいた。
「お待たせしました。それじゃあ行きましょうか。」
来てくれたのは、大工の棟梁たちだ。このあと駅や工場、研究所等を建ててもらうので、その打ち合わせで来てもらったのだ。建設予定地まで案内する。町の外だが、この数日こっそり作っていた簡易結界(四角形)を作ったので、たぶん大丈夫だろう。将来的にはレールに魔物避け結界が組み込めるのが一番なんだが……。
南門をでてすぐの場所に着く。と言っても本部から徒歩2~3分ってとこだ。移動時間より南門の検問の時間の方がかかったほどだ。まあ、俺は顔パスみたいだった。冒険者証出す前に通されたよ。
「で、ここが、駅の建設予定地になります。元からある街道を避けて、この辺りに馬車だまりを作って――「ヤマト殿、こちらにいたのですね。」」
なぜか、内務卿が馬車で現れた。
「どうされましたか?」
「いえ、ヤマト殿が依頼を受けていただけると冒険者ギルドから連絡がありまして、お迎えに上がったわけです。」
「――――俺、明日行きますってギルマスに伝えてって言ったはずなんだけど……。」
「……。」
「……。」
「あなた、ちょっと確認に向かってください。」
「はっ!」
護衛の騎士の一人が走って戻っていった。
「それで、今は何をしているんでしょうか?」
「ああ、駅建設の打ち合わせだな。この街道の西側に駅を作る予定だ。それで、この場所に踏み切りを作って、東側に車庫と工場、研究所を作る。将来的にはここに跨線橋を作ることになりそうだな。」
高架にすることは考えてない。高架で駅を作ろうとすると、数年かかるとよんでのことだった。
「……例えば、街道を左右に分けて、東西の門から入るようにして、この南門の正面に駅を作ることってできない?」
「…………はあ?」
「いえね、たぶん国王陛下なら『ヤマト殿の作ったものだ。城の正面に駅を作るがいい。』とでも言いそうじゃない?それに、この王都ドリスの中央にお城があって、東西南北に街道が出ているわけなのだけど、門を1つくらい潰してもいいと思うわよ。その場合北門の方がいいと思うんだけど、あなたの商会の本拠地が南門の近くですからね。」
そういう内務卿。でも、俺が南側にしたのには訳があった。
「南側を選んだのにはちゃんと理由がありますよ。それは、北にはほとんど線路を伸ばせないと言うことなんです。理由は勾配ですね。地図見せてもらって、西150㎞のところで山を迂回しなけりゃならないと言いましたよね。そこ以外のところも比較的山が近く北に向けて路線を作りにくいんですよ。北に10㎞行ったら勾配が30パーミルほどの坂になり、さらに5㎞行くと50パーミル近くまでなる。なので、まっすぐ北に走るルートはほぼ馬車に任せようと思っています。そう考えると、今ある街道の北にあると南へは主要都市から主要港湾に向けて何本もルートを考えますが、北は、温泉地と、鉱山以外は作らない予定です。実際、南へは10本以上を想定してますが、北には第一期線以外は西と東に1本ずつを予定してます。南に向けて線路を繋ぐというと、町の北側に線路を作ってしまったら東西の主要街道を踏み切りが寸断したりし得ます。しかも、鉄道の曲線半径を考えたら、町から離れたところに踏み切りができたりしますし。北の東西は等高線に沿ってある程度作れるかと思いますが、やっぱりトンネルが作れないと話にならないですね。山沿いは主に貨物主体になるかも。」
大体の構想を言う。
「なるほど、坂と踏み切りですか。」
「ええ、南側も東西の街道の北に作ります。まあ、こっちの場合は”日本の鉄”としての知恵ですね。」
「そうなんですか?」
「日本は地震大国で、津波もよく襲来したんですよ。で、街道はだいたいが津波を避けて作られることが多いので、その山側に作っておくと言うことになります。」
さんてつとか、津波前提で作られた路線だから、あの時も特殊な例を除いて比較的被害は最小限に収まっていたからな。
「ま、ともかくお言葉に甘えて南門正面に作ることにするか。となると、図面を新しく書き換えなきゃいけないな。まあ、実際こっちの建設は後になる予定だったから問題ないか。」
このあと、早急に作らなくちゃいけない研究所兼工場の建設予定地に向かう。
「研究所はこのあたりで、工場はその隣に作ります。研究所は3階建てで、3階に宿泊場所を用意してほしいですね。工場の方は高さのある外壁はあるけど、中は壁はほとんど要らない。」
「高さはどれくらい必要でしょうか?」
「そうだね、5mはほしいかな。車体そのものが3mほどなんだけど、足回りが1mほどあるので4m、車体の上での作業を考えたら5mは必要。」
「なるほど、では、2階建ての建物の床と壁をぶち抜いた感じでいいのかな。」
「ええ、そうですね。」
「では、それで作り、ま……。」
「ん?」
どうした?って、なにかが足を引っ張ってるな。
「ああ、シルベスか。そっちが仲間か?」
足を引っ張っていたのは、魔法ラットのシルベスだった。シルベス以外にも58匹の鼠――――魔法ラットたちが並んでた。シルベスは「ちゅう」と鳴いて、黒板に書いた文字を見せる。
”われら魔法ラット59名、ヤマト様の配下に入るため参りました。”
「そうか、みんなよろしく。あとでみんなの従魔証を用意するね。住みかは……、せやなー、仕事をここで頼むことになるから、ここに作る研究所内に住みかを作ろうか。どんな部屋がいい?」
そう俺が聞いたら、魔法ラットたちはちゅうちゅうと会議をする。そして、代表してシルベスが黒板に書く。
”我々は屋根裏部屋がいいです。個室は必要ないので、大部屋でお願いします。”
「オーケー、屋根裏に魔法ラットたち専用部屋を用意するよ。当面は町の中にある本部で泊まって。」
「ちゅう」
頷くラットたち。
「そういえば、魔法ラットって、どんな魔法が使えるんだ?」
”土と水の魔法が大半ですね。炎はまず使い手がいません。”
「土と水なら整地や盛土を作るのにいいね。あとは……付与魔法は使える?」
”使えるものはわずかですがいます。我々の魔法への適正は高いのですぐ覚えることができるかもしれません。”
「結構手伝ってもらえるな。じゃあ、付与魔法を覚えた子たちは工場での機関車やレール作成を手伝ってもらおうかな。土魔法と水魔法の使える子は路盤の新設工事の方を頼もう。」
「なんと言うか、すさまじいですね。」
「何がですか?」
内務卿の呟きを聞いて、思わず聞き返してしまった。
「ええ、こんな大量の魔法ラットを見るのもそうですが、その魔法ラットたちをあっさり手懐けているのがなんと言うか……。」
「ああ、魔物使いと指揮と調教――はちょっと違うか、まあその辺りがレベル50とか70とか超えてるからなあ。さすがチート。」
「ですね。」
その後、本部から魔法ラットの従魔証を取ってきて、本部に帰った。
さんてつ:三陸鉄道のこと。元々明治三陸地震の時に陸の孤島になった三陸地方の物資輸送を前提に作られたため、東日本大震災の時も一部(島越駅など)を残して津波の被害は限定的だったため、5日で部分再開、3年で全線復旧をした。
足回り:車体の下の部分。台車や色々な装置が吊り下げられている部分。
盛土:鉄道的には周りの地面より高くするために土を盛った場所を言う。築堤ともいう。




