第35話 勲章と褒賞と鉄道建設の公表
「次に、ドリュフェス王国より、褒賞の発表を行う。ヤマト様は席にお戻りください。」
ギルマスたちと俺が席に戻ると、国王が発表する。
「褒賞だが、すでにある程度は事前に決まっておるが、これほどの功績をあげることは想像していなかった。いや、想像できなかった。事前の打ち合わせでは白金貨100枚とヤマト殿が起業した鉄道の建設許可契約であったが、これでは少ないと思う。よって、追加で白金貨50枚と勲章を与え、我が娘メフィリアを婚約者候補に加えてもらいたいと思っておる。」
「陛下、宜しいでしょうか。」
貴族の一人が声をあげる。
「申してみよ。」
「はい、平民の冒険者ごときを王女殿下の婚約者候補にするなんて前代未聞です。」
「おい、勘違いするなよ。」
「は?」
「娘の婚約者候補にヤマト殿を入れるんじゃない、ヤマト殿の婚約者の候補としてうちの娘を考えていただくのだ。」
国王の言葉に、思わず目が点になる貴族たち。
「陛下、ここは私から説明いたします。」
宰相が国王に代わり説明するみたいだ。
「まず、認識の違いから修正します。まず、ヤマト様はアダマンタイト級冒険者です。冒険者のアダマンタイト級については、ちょうどこの場に冒険者ギルドの統括ギルドマスターがおられるので、解説してもらいたいと思います。」
宰相がそう言うと、ギルマスが説明に入る。
「冒険者ギルドに冒険者のランクアップについての内規がある。これは木級の冒険者は見習いとして10日間すれば鉄級になるだとか、銀級以上の昇格は支部や本部で試験を受けるとか、ランクアップ時の飛び級とかあるのだが、アダマンタイト級とオリハルコン級については特別な昇格条件があり、それを満たした時点で昇格となる。それぞれの昇格条件だが、オリハルコン級は『世界を救う』って無茶なことが起こらん限り昇格できん、アダマンタイト級は『国に匹敵するような実力、または国が敵対することを諦める実績』となる。ヤマト殿はフェンリルを従え、本人も盗賊団という仮面を被ったローズミア公爵の私兵の部隊長を瞬殺できる力がある。さらに、そこにいるミュー殿たちピクシーの一族を従え、今回の事件の解決に一役買っている。――――いや、ヤマト殿がピクシーを派遣してくれなかったら、証拠を集めることは不可能だっただろう。姿を消し潜入するのだ、事前に知っていたとしても見つけることは不可能だろうな。そんなヤマト殿に敵対できるか?敵対した瞬間ローズミア公爵のようになるのがオチだぞ。それですめばいいが、いつの間にかピクシーによって寝首をかかれかねん。よって、冒険者ギルドはヤマト殿にアダマンタイト級の称号を与えることにした。」
「想像以上の的確な解説をしていただき感謝します。さて、これほどの力がある冒険者――――いえ、個人を、国が囲い込まない理由はないでしょう。実際事前の打ち合わせの時に王女殿下の婚約者を打診しましたが断られました。爵位も同様です。この時はまだヤマト様はアダマンタイト級の冒険者ではなかったので、断ったのは野心のない証拠になります。権力が邪魔と言っておられましたな。そして、アダマンタイト級になられた今は、敵対してはならない存在です。むしろ、権力が邪魔とまで言われたら国として扱いが難しいです。」
うん、俺、鉄道以外興味ないからな。
「ですので、ヤマト様の希望を最大限聞き入れ、あわよくばヤマト様が我が国に危険が迫った場合、気に止めてもらえるよう、ヤマト様の婚約者候補にメフィリア王女殿下を入れていただこうという魂胆です。ヤマト様はメフィリア王女殿下自身は嫌っておられないのと、メフィリア王女殿下がヤマト様を好いておられる事もあり、打診させていただきました。」
ぶっちゃけたよ宰相。しかも、外堀埋められとるやん。NOって言いづらいやん。隣の狼っ娘、ものごっつ勢いで尻尾振ってるし。しかも、後ろで聞いてるリンちゃんが婚約者候補にしてくれって言うよな。しかも断れない。とほほ。はぁ、婚約者候補が3人になるのか……。
さすがに自分の命を天秤にかけられないから、貴族たちも黙った。
「これで説明はいいかな、グラス侯爵。」
「え、ええ、そうですね。」
疑問の声をあげた貴族も、国王の言葉にうなずくしかないようだ。
「では、ヤマト様への褒賞と勲章の授与を行う。なお、通常では獣魔への授与はないのだが、あまりにも功績が高いため、フェンリルのルナ殿、ピクシーのミュー殿、アルラウネのリーフ殿にも勲章の授与を行う。」
これは、俺に対するご機嫌取りかな。まあ、ありがたくいただいておこう。どうせ俺ももらうしな。
俺たちは案内に従いたちあがった。
「リーフ殿。前へ。」
リーフが前に出て、国王から勲章を着けられる。
「続いて、ミュー殿。前へ。」
リーフが戻ってきて、かわりにミューが飛んでいった。うん、ピクシー用に作られた特注の勲章だな。しかし、小さいから付けにくそうだ。
「続いて、ルナ殿。前へ。」
宰相が国王にちゃんと着けることができたか確認をとってから、ルナを呼んだ。ミューが戻ってくるのに合わせて前に出て、勲章を着けてもらった。そして、戻ってくる。
「では、ヤマト様への授与を行う。ヤマト様、前へ出てきてください。」
宰相の声に、俺は立ち上がり、国王の前に出る。国王が勲章をつけてくれた。ふとメフィ王女を見ると膨れっ面になってる。あー、やりたかったんだな、俺に勲章を着ける役。
「ヤマト殿、本当に助かった。これからも、よろしく頼む。」
握手を求める国王。俺もそれに応じる
「いや、俺はこの国だけに留まるつもりはないぞ。むしろ世界を回っていく。」
「あっはっは。そうだったな。世界に鉄道を走らせるんだったな。――――娘を頼む。」
「あー、まあ、外堀埋められてきたしな。一夫多妻になるしかないかと、諦めた。」
「そうかそうか。ならすぐに孫の顔が見れるな。」
「それはないです。俺の倫理観的に最低16歳まで待ってください。」
あ。嫁にする宣言になっちゃったかも……。
「……お義父さんと言ってもいいぞ。」
「いや呼ばんし。というか、国王陛下って何歳なんですか?30代半ばかなと思ってたんだけど。」
「ん?俺か。28だ。苦労してるからな。」
「おい、俺と3つしか違わんじゃねえか。」
「え?おまえ25か?……マジか。もっと若いと思ってたぞ。」
「……10歳くらい離れてると思ってた。」
「……俺もそうだな。」
「……。」
「……。」
思わず見つめ合う二人。うん、歳の話は止めておこう。
「……褒賞を貰いますね。」
「うむ、白金貨150枚だ。」
そう言って、布袋を渡してくれる。
「ありがとうございます。」
俺はそう言いながら受け取り頭を下げた。そして、自分の席に帰る。そして国王が貴族たちに俺と国とで交わした鉄道の契約の話をする。
「詳しくは文書で各自に公布するが、彼との報酬の一部として、我が国に鉄道というものを作ることになった。鉄道は我が国の流通網に大きな影響を与えるだろう。もちろん、我が領にも、いやこの町にと言うだろう。だが、そういったことはヤマト殿との契約上禁止されている。ただ、どう鉄道を通すかの話し合いはすると言ってくれているので、ヤマト殿の負担をかけぬよう、鉄道院を創設し、陳情を取りまとめてもらおうと思う。トップはメフィリアが務める。初期の計画は決まっているので、実際鉄道院が稼働するのは暫くしてからになる。なので、勝手な行動は謹むよう。」
そう国王が発表すると、宰相が声をあげる。
「これにて、授与式を終了する。ヤマト様とそのお仲間が退席される。」
そう言うと、貴族たちから拍手が鳴った。え、この中帰るの?や、やめてくれ~。
こうして、ドリュフェス王国が大きく発展する転換期とも言える授与式が終わった。
これにて第2章終了です。
蛇足ですが、鉄道院という組織、実は昔の日本に存在しました。鉄道院→鉄道省→運輸通信省→運輸省→国土交通省と、運輸省→日本国有鉄道→JR各社と変貌して、現在に繋がっています。
第3章の前に、登場人物が増えてきたので、キャラクター一覧を8月22日に投稿し、第3章を8月24日から変わらず毎週月・水・金に投稿になります。




