第31話 温泉回
翌日、俺はルナに乗って北の山間にむかっていった。どこに向かっているかと言うと、温泉である。話に聞く温泉街が山間にあることを聞いていた。さすがに向かうのに普通なら2~3日はかかると聞いていたので、同行者はルナと、温泉に行くと言ったらノータイムで『行くっ!』と言った元日本人のアモリさんだけだ。より正確に言うと、メフィ王女も行くと言ったが、さすがに宰相をはじめとした重臣たちに止められた。そりゃそうだよ、王女殿下が行幸するのにどれだけの警備がいるか。この前の件(第1章第29話)があるから余計に警備を厚くしなきゃならないんだから。他のメンバーは今回は遠慮してもらった。ルナが乗せられるのは2人程度だったこと。線路を繋いだらいの一番に温泉旅行をすることを確約したからだ。
と言うわけで、3人で温泉街ユーフィに来た。ユーフィは温泉街――――――というより温泉が湧く村程度しかない。その村の中で宿を探して回った。そして、無かった。
温泉地なのに宿がないという状況に、俺たちは愕然とした。そして、俺たちは誓った。絶対温泉街を作ってやると。
仕方ないので、村長の家に行った。
「ようこそいらっしゃった。何もない村じゃが、ゆっくりしていくとよ「「温泉ありますか!!」」
思わず、村長さんの言葉を遮ってしまった俺たち(俺とアモリ)。
「――――――裏に、共同の温泉があるのでそこに入られるのがよろしいかと。」
「「やったーーーーー!!温泉♪温泉♪」」
小躍りする俺たち。
「そういえば、ここは温泉があるのに、なんで温泉宿がないのですか?」
ふと正気に戻り、聞いてみた。
「ああ、ここは山の裾野の村で、街道の終点じゃから、ここへ来るのは月に何度か来る商隊だけじゃからの。」
「じゃあ、温泉宿を作りましょう!ここに鉄道を通すんで、それに合わせて温泉宿を作って、観光客を集めてガッポガッポ稼ぎましょう!!」
「お、おう。」
おー村長さん引いてるなあ。だが、日本人の温泉愛をなめるなよ!
「あ、俺はアダマンタイト級冒険者でマルサロス鉄道の社長になる大和と言います。」
ペコリと頭を下げる。
「まず、駅を作るなら、勾配も考えるとやっぱり南側に作るべきだよね。」
この村自体がやや坂になっているので、その対応を考えると、やはり東側から回り込むように配置するのがベストかな。鉱山があるのが、位置的にここから西なので、そういう意味でもちょうどいい。
「村長、資金は俺が出します。この村の位置なら、狩りをして獲物を得たり山菜を採っていると思います。それを中心としたこの村独自の料理を作ってください。あと、宿のスタッフですが、トップはこの村の人間にやってもらい、サポートに優秀な人材を探して送り込みます。」
「お、おう。」
「最終的には、この村出身の人だけで回せるようにしたいですね。場合によっては移住ってことを考えてもらえるといいでしょう。」
「和風の温泉旅館がいいかな?」
「いや、ホテル形式がいいんじゃないか?大浴場を完備させて。」
「あーなるほど。この世界は中世ファンタジー風ですからね。畳に布団は無理ですね。」
うんうんと頷くアモリ。
「そうだろ。だったら宿屋に温泉を付加する方が合ってると思うんだこの世界なら。」
「じゃあ、どれくらいの規模のホテルを作るの?」
「最低限、王族が泊まれるくらいだな。となると、5~6階建てになるかな。」
「温泉はどこに作るの?」
「1階がいいんじゃないか?地下大浴場も心引かれるけど。」
「そうね。建物自体は鉄筋鉄骨コンクリート製で。鉄筋鉄骨はうちの黒魔鉱を使えばいいし。」
「なるほど。で、アモリの実家の領地の鉱山はどの辺り?」
「実は以外に近くて、ここから東に50㎞くらいのところなの。」
「うわ、近っ!じゃあ、こことアモリん家の鉱山も第1期線に組み込もう。」
「ありがとー。それはそうとして温泉入ろう!」
「「温泉♪温泉♪」」
再び小躍りする二人。
「あ、村長。一泊お願い。」
そう頼んだのは、珍しくルナだった。
Side:女湯
共同浴場は男女別になっていて、それぞれ脱衣室と浴室に別れている。浴室は四方を壁に囲まれただけの露天作りになっており、湯船は岩をうまく配置したいわゆる岩風呂になっていた。
「温泉だーー!!」
「……何が楽しいのかわからない。」
「うーん、こればっかりは日本人の魂に刻まれた性だからね。」
「ルナ、ニッポンジンじゃないからわからない?」
「うーん、温泉は万国に知れわたる日本の文化だから、わかるようになるんじゃない?知らんけど。」
(しかし、イヌミミ美少女に好かれる大和さんは何をやったんだろう?うん、胸のサイズは勝った。)
そう思いながら、かけ湯をして湯船に浸かる。ルナちゃんも真似して入った。
「は~~~~、極楽極楽。」
思わず声が出てしまう。まー日本で生まれて17年、この世界に転生しても17年。内面的にはいい歳だもんなぁ。
「ゴクラクってなに?」
あー、この世界に仏教的なものは無かったっけ。
「極楽とは、極楽浄土って言って、私の前世が新庄さんと同じ世界なんだけど、その世界にある仏教という宗教の概念のひとつね。死んだあと、悪事を働かなかった人が行くことができるものすごくいいところかな。」
「へー、そうなんだ。」
そう言って、広い湯船で泳ごうとするので、「湯船で泳がない」と注意しつつ、まったりとする。
「あー、日本人に生まれてよかった……、って今の私は異世界人か。」
自分の紫の髪を見ながら自分でツッコミをいれた。




