第25話 踏切と競合と起業
「あとは街道との交点に踏切を付けるけど、その場所はできる限り町近くにして、第1種踏切がベストだけど、間に合わない場合は第3種、第4種の踏切を作る必要があるかな。」
「踏切ですか?」
おっと内務卿の疑問で、そういえば踏切って鉄道関連以外使わないなあっと思いだし、解説することにする。
「踏切は、簡単に言ってしまえば道と線路――――鉄道が走る場所の交差点で、鉄道車両が来ているときに道を塞いで鉄道を通すものを第1種、警報器だけが第3種、看板だけが第4種になる。」
「なぜ塞ぐのだ?」
国王陛下が疑問をぶつけてきた。
「それは、鉄道車両は急に止まれないからです。俺のいた世界では、制動距離――――ブレーキを掛けてから止まるまで600m以内と法律で定められていました。これは人間が視認できる限界の距離といわれています。そして、鉄道車両は定められたレールの上しか走れず、回避できないということが挙げられます。あと、もし鉄道車両がぶつかったら……、死にます。100トンの物体が高速でぶつかってくるんですから死にます。馬車?跡形もなく吹っ飛びます。なので、街道の安全のために塞ぎます。」
「そ、そうか……。」
皆さん、納得してもらえたようだ。みんな青ざめているからな。
「乗ってる者は無事なの?それ。」
「まあ、事故の内容によるとしか言いようがないですね。まあ、単純に馬車とだったら急ブレーキによる症状がでるかなってくらいですね。」
踏切事故の死者の大半は、乗客じゃなく踏切にいた人物だから。
「ルートの大まかな設定が決まったところで、今後のことも踏まえて、馬車と競合するので話し合いをしたいのですが、馬車組合かギルドはありませんか?」
「馬車ギルドならあるぞ。正確に言うならば、商業ギルドの傘下だな。」
おお、それはちょうどいい。このまま話を聞いてもらおう。
「ルート設定を見てもらってわかる通り、馬車での長距離輸送と完全に競合します。ただ、鉄道はご覧の通り柔軟性はありません。なので、馬車に鉄道の苦手な部分、駅と駅のないところを結んでもらいたいのです。その代わり、こちらで駅に馬車溜まりを作ります。そこから乗り合い馬車や貨物馬車を運行してもらいたいと思っています。」
この話を聞いて、商業ギルドのギルマスは少し考えたあと、頷いた。
「なるほど、競合相手ではなく、協力相手とするのですか。ですが、それだけでは彼らの収入を奪っていることには変わりませんね。」
俺は『やっぱりそうか』と思いつつ、もうひとつ案を出す。
「なら、馬車組合の馬車を俺が雇って、馭者にたいし最低限の基本給+歩合制か鉄道の運転士に転職斡旋が一番いいかな。」
鉄道会社がバス路線を運行するような感覚でいいか。
「ふむ、収入の保証と失業者の就職斡旋ですね。その場合、馬車はあなたの鉄道と一体で扱うと言うことですか?」
「いや、両方あってもいいと思う。ただ、馬車運賃の連続割引はするから、うちと一体化する方が多くなるかもしれないね。あと、提携を結んで、割引適応とすることも有りかもしれない。」
「それはどういう……。」
「ああ、一体型なら、馬、馬車の所有をうちが持って乗客には馬車で行く目的地までのチケットもしくは、割引券を鉄道のチケット購入時に渡して、馬車を降りるときチケットの回収、または割引券の記載額割り引いて支払いしてもらう。馬車が先ならば、駅到着時に日付の入った割引券を渡し、駅窓口で鉄道運賃から割り引く。提携馬車は割引券だけだね。そういえば、馬車組合で運賃の規定はあるよね。」
「ああ、あるな。」
「なら、やはり鉄道運賃の割引という体でやるのが得策か。どっちにしろ、馬車ギルドと対立するつもりは全くないからな。」
そう言って俺は腕を組んで頷いた。
「そういえば、商会を始められると言ってましたね。」
商業ギルドのギルマスが聞いてきた。
「そうですね。輸送業として起業するつもりですが。」
「ならば、起業のための書類を――――「登録用紙はもう貰ってます。」」
そう言って、俺は鞄から書類を出す。
「おお、すでに入手されておられたのですね。では、私が預かって最速で処理しましょう。」
そうギルマスが言ってくれたが、俺は首を横に振る。
「残念ながら、まだ全部書けないんだ。なにせ、まだ本拠地もなければ、商会名も決まってないからな。」
「商会名は『ヤマト鉄道』でいいんじゃないですか?」
メフィ王女から提案を受けた。
「いや、大和鉄道は俺の世界にあったのと、片仮名表記だと某宅配業者っぽいからできれば避けたい。」
「では、この世界の名前マルサロスをとってマルサロス鉄道と言うのはどうだ?」
国王陛下からそう提案された。うんこの世界の名前をつけるのは将来的なことを考えて有りだな。
「じゃあ、その案を受け入れます。あとは、拠点と後見人ですね。」
「拠点は国から報酬の一部として適当な物件を与えよう。後見人は俺がなろう。」
と、国王陛下。
「……確かに、国益になる事業の後見人を陛下がなされるのはいいですね。拠点もヤマト殿の希望にそって用意しましょう。」
内務卿も賛成した。俺も少し考えたが、この国での活動なら国王陛下が後見になる方が得策と考え、了承した。下手な貴族に目を付けられないように最高権力者と手を結んでおかないと。
「では、拠点は決まり次第連絡いただくことにしていただいて構いません。残りの部分を書いていただけたら私の方で処理しましょう。」
と、ギルマスが言ってくれたので、すぐに書き始める。
こうして、この世界初の鉄道”マルサロス鉄道”が起業した。
第2種踏切:本文に出ていないので解説。第2種は普段は係員がおり、係員が遮断機を下ろすけど、係員がいないときは第3種、第4種踏切と同じ扱いになる踏切の事。
大和鉄道:奈良県に実在した鉄道会社。新王寺~田原本~桜井間を運行していた。新王寺~田原本間は現在の近畿日本鉄道田原本線
ついに、タイトル通り鉄道会社を起業しました!
このまま、開業を目指します!




