第20話 結界
そういえば、弱い魔獣を防ぐ結界があるのに、ピクシーであるミューやアルラウネのリーフは平気っぽかったな。ちょっと気になるから調べてみよう。
そう考えて、ミューを喚び出す。
「ヤマト様、どうしたの?急に喚び出して。」
「ああ、ちょっと確認したいことがあって……、この町は弱い魔獣を入れないような結界があるんだけど、わかる?」
「あーなるほどね。私たちピクシーは魔獣に入んないと思うよ。」
「そうだよな。」
確かにモンスター知識の魔獣にピクシーは入ってないな。
「じゃあ、低ランクの魔獣を召喚してみるか。」
そう言って、召喚獣を考える。
まず、区分:魔獣で、かつ、強くない。あと意思疏通できればなお良い。そうなると、狼系がシンプルだが、他の系統の魔獣も興味はあるしバランスを考えるとなぁ。
と言うわけで、魔獣系下位で、意思疏通が可能な進化ができる、魔法ラットを召喚した。
「ちゅう。」
「うまく召喚できたみたいだな。早速、頼みがあるんだが、この場に魔物避けの結界が張ってないか?」
「ちゅ~。」
首を横に振るラット。
「そうか。ということは、魔物避けの結界は周囲に向かって発生させているのか。なら、線路の保護に使えるな。」
「ちゅう。」
ラットがこちらを見つめている。
「ああ報酬だな。チーズでいいか?」
ふるふると首を横に振り、手で何かの仕草をする。あれは、ペンと紙?
手持ちの紙とペンを渡すと、流暢に文字を書いた。
「なになに、自分も獣魔にしてほしい。なるほど、まあ確かにこれだけ意思疏通に問題なければ、仲間にしても問題ないよな。いいよ、君も仲間だ。で、君の名は?」
そうすると、何度か頭を下げたあと、文字を書いた。
「シルベルズドウビスか、長いからシルベスと呼んでいいかい?」
こくこくと頷くシルベス。
「これからよろしくシルベス。じゃあ獣魔証を用意しよう。」
そう言ってシルベスと一緒に宿に帰った。
翌日、王様に『鉄道の研究で街の結界を見てもいいですか?』と手紙を送ったら、メフィ王女が来た。
「私が案内します!」
「……ああ。案内できるのか?」
だって、一般的に王女様と街の結界は繋がりがない。
「ええ、私もはじめて行きます。」
「案内できへんやないかい。」
思わずツッコんだ。
「……ところで、ヤマト様の足元にいるネズミは?」
ツッコミにノーリアクションか……。
「ああ、こいつは……、ん?」
ズボンが引っ張られる。ああ、そういうことか。
「じゃあ、自己紹介よろしく。」
そう言うと、ちゅっと一鳴きして20㎝×15㎝の黒い板に、白いもので文字を書く。そして、ちゅっと鳴いて、メフィに見せた。そこにはこう書かれていた――――
”私、ヤマト様に召喚された魔法ラットのシルベルズドウビスといいます。シルベスとお呼びください。”
と、丁寧な字で書かれていた。結構頭が良く、普通に文字を書いていたので、黒板と白墨を持たせたのだ。しゃべれたらネズミ獣人と言われそうなんだが……。
「……えっ、魔法ラット?」
ん?この大ネズミ。何か問題があったのか?
「……あの伝説の魔法ラットですか?」
「伝説?伝説ってなんだ?」
「ええ、魔法ラットはこの500年確認されてないと思います。絶滅したと言われたのですが……。」
「ちゅー」
おっと、何か黒板に書いてるな。なになに――――。
”我々魔法ラットは魔法は使えるものの弱いので人間の街の結界を越えれないため人間の前に出なくなったのです。”
”そのため、今は一族と隠れ里を作って住んでおります。私は外の世界に興味があったので、ヤマト様の召喚に応じたのです。”
「へー、なるほど。街に入れないなら街の近くにいる理由ないからな。」
「ちゅー」
シルベスは首を横に振って、もう一つ書き出す。
”意外と近くにいますよ。私、ヤマト様の話は噂で聞いてましたから。だからヤマト様に喚ばれて嬉しかったです。”
え、そうなんだ。
「ち、近くってどこですか?」
メフィ王女が聞いた。確かに気になるだろうけど……。
「いや、隠れ里なんだから秘密に決まってるだろ。」
こくこくと頷くシルベス。
「うーん、残念です。」
確かに、レア生物がいたら見に行きたいわな。んーカワウソカフェみたいなものか。
「とりあえず、結界を見に行きましょうか。」
俺たちは結界の元まで移動した。
結界の魔道具には門の横から行くことができるとのこと。警備が少なくすむのと、まず、結界を破ろうとするのは敵国かテロリストくらいなので、あまり気にしすぎてもという理由らしい。
「で、これが結界の魔道具ですか?」
担当者が頷く。
「はい、とは言っても、ここにあるのは基点となる装置で、魔石を交換して結界が消えないようにしているだけなのですが。」
「なるほど。」
うん、俺の考えてる魔物避けの結界と同じだな。
「それで、この基点と、もう一つの魔道具との間を直径とする結界が作られるのです。」
「ん?円形しかないのか?」
それだとやっぱり新しく考えないといけない。
「ええ、円形だけですね。それ以外の形は聞いたことがないですね。」
「そう、ですか……。」
残念、そうは上手くはいかないな。
「すみません、お力になれず……。」
メフィ王女が謝る。
「いえ、すでにあるものならそれで済ますつもりだっただけですから。作り必要があることがわかっただけでも収穫です。」
「そういっていただけると助かります。」
情報は大事だからな。




