第18話 ローズミア公爵の最後
ローズミア公爵邸
公爵邸は大騒ぎだった。
邸内に15mの狼が突然現れ、大暴れしていたからだ。
「おい、兵は中庭の方に向かえ。奴はそっちにいる。」
各々武器を持って走る兵士、逃げ惑う非戦闘員。大パニックだった。
「うわっ!こっちに来るぞ!」
「食い止めろ!」
「うわぁ、ダメだー。」
狼が走りだし、武器を持つものをかわし、何人かの人間を咥えて中庭の一角に連れ去っていく。その中にはローズミア公爵もいた。
「おい、お前ら、ワシを助けろ!」
「そんなことを言われましても、この狼、隙がないんですよ。」
警備隊長、副隊長も捕まったので、代わりに指揮をとらざるおえないのが偶々捕まらなかった分隊長だった。
他にも執事長や公爵軍の司令など、公爵家の中心人物ばかりであった。メイド長は捕らえられてもメイドは捕らえられてなかったり、日勤の警備兵は捕らえられないのにもかかわらず、夜勤の警備兵は捕まったり、何かの意思を感じさせる捕らえ方だった。
そんな大騒ぎの中、さらに混迷を極めることが起こる。王国軍が王女と共にやって来たのだ。
「あらあら、公爵家ともあろう家が、王女である私が来たのに誰も応対しないのですか。」
王女を先頭に王国軍が中庭まで押し入ってきた。
「お、王女殿下、ここは危険です。お下がりください。おい国軍もこの狼を討伐するのに協力しろ!」
追い詰められながらも、軍勢が来て討伐協力を命令する公爵。だが、王女も、軍も笑顔を崩さず動こうとしない。
「ここにいる最上位者は私ですよ。軍があなたの命令を聞くとでも?」
笑顔で話すメフィリア王女。
「な、なんだと……。」
「そもそも私たちは貴方を捕らえに来たのですよ。ルナちゃん、ここにいるので全員?」
驚く公爵に通告をして、巨大狼に声をかける王女。
「うん、ここにいるので全部だよ。ね。」
「はい。そうです。ここにいるものが犯罪に関わったものです。」
そんな声がして巨大狼――――ルナの頭の上に一人のピクシーが現れる。
「証人は他にいるかしら?」
「はい、厨房の隣にある休憩室にいるメイドが公爵に対する愚痴を溢しておりました。今後の保証をすれば証言してくれるかと。」
「そ、そんな証言、証拠にはなりませんぞ!」
公爵は怒鳴ってくる。
「それはそうと公爵、昨晩はお楽しみだったみたいですね。」
「なっ!」
「ルナさん、隣にいた人を連れてきてください。」
「任せて。」
そう言うと、ものすごい速度で走っていく狼、そして1分もしないうちに一人の女性を連れてくる。虚ろな目のその女性の体には痣が付いており、明らかに暴行を受けた痕であった。
「昨晩は彼女でした。他にも数名地下に捕らえられています。」
「だ、だがそれは正式な奴隷――――っ!」
公爵が弁明を図ろうとしたとき、巨大な狼が一人の少女に姿を変えた。今朝、この公爵邸で引き渡された少女だ。
「元々、彼女に潜入してもらったんですよ。人化できるフェンリルって珍しいでしょうし、すでにこちら側に付いた盗賊団を使えば、警戒されないと思いまして。」
そう言いながら、王女の側にいた男が話しかける。
「まあ、大体の情報はピクシー達に集めてもらったんで、あとは捕まえるだけだったんですけど。」
「貴様は何者だ!!」
一人だけ、騎士の装いをしていないその男に誰何をかける公爵。
「ああ、この件が終わったらアダマンタイト級になる冒険者ですよ。そのフェンリルも、ピクシー達も俺の獣魔です。まあ、十日ほど前までこの世界にいなかったんであなたが知っていなくても当然ですが。俺としては、とっとと鉄道建設の方を進めたいんで、罪を認めておとなしく刑罰を受けてもらえると助かるんですが。」
すでにその男は公爵達に興味は無くなっていた。
「ふ、ふざけるな!死ね!ファイア――。」
公爵が炎の魔法で攻撃しようとした瞬間、公爵の右腕は切り飛ばされていた。
「危ないので、片腕を切り飛ばさせてもらいました。俺、チートなんで、素直に投降してもらえませんか?一応、映像証拠もあるんですがぶっちゃけR指定しなきゃならないんで勘弁してください。」
公爵は右腕を押さえたまま、男をにらむ。
「えいぞうしょうこ?なんだそれは!」
「あー確かにわかんないよね。と言うことで、こちらをご覧ください。」
そう言うと、男は魔道具を取りだし、壁に向かって光を放った。それは今朝、白銀の髪の獣人を地下室に送り込んだ時の姿が音付きで写された。
「なっ……。」
「ちなみに昨日の夜の地下の寝室のものもある。もちろん彼女らが違法奴隷であることも調べがついているよ。」
そう突きつけると、ようやく公爵も諦めたようだ。
こうして公爵を筆頭に20名の罪人を引き連れ王都に帰ることになった。




