第10話 出陣
翌日、王都から1000人の軍勢が訓練の名目で出陣した。それに合わせるように冒険者ギルドからも3グループの冒険者が出発した。それと、人知れず狼に乗った男が一人旅立っていった。
「王女殿下、そんなに落ち込まず。」
「騎士団長……、ヤマト様はもう行かれたのですね……。」
思いっきり沈みこんだ表情の王女が馬車に乗せられ街道を行く。
「ええ、ですが、この遠征が終われば会えるでしょう。それまでの辛抱です。」
「そうですわね。よし、頑張りましょう。」
そう言って、気合いを入れ直す王女殿下。
「オラ、アダマンタイト級に恩を売られてんだ、気合い入れていくぞ!」
「「「「おう!」」」」
冒険者ギルド率いる部隊は、王都ギルマス自身が率いていた。
「特に恩を売るのを邪魔された王国軍の連中には負けるな!」
「「「「おう!」」」」
そんな気合いが入る男性陣を眺めながら……。
「暑苦しいて敵わんわ。」
「そうだねー。」
「あははは……。」
冷めた目で見る女性陣だった。
「みんなどうしてるかな?」
「たぶん、各々でつつがなく動いてると思うけど。」
「ルナたちが先に着くけどね。」
「確かにな。まあ、これもルナが速いおかげだ。」
「むふー。」
上機嫌のルナのスピードはさらに速くなって、夕方には目的のブルームの村に着いてしまった。
「戻ってきたよ~。」
「お帰りなさいませ、ヤマト様。」
ミューが声をかけたが、シータが頭を下げたのは俺だった。
「シータ、酷いじゃない。私が声をかけたのに。」
「ミュー様。この中で一番上の方に挨拶するのは当然でしょ。召喚してくれたヤマト様以上の方はいませんよ。」
「あ、そうか。いつも『お帰りなさいませ、ミュー様』と言われてたからねぇ。」
さすが族長の娘、上の人がいなかったんだな。
「それはさておき、今後の方針が決まったんで、報告するよ。」
俺はピクシーたち、盗賊団、村民を集めて、王都で決まったことを伝えた。
「と言うことで、これからセルウォリスのギルマスと領主の捕縛作戦に参戦する。ピクシーのみんなには偵察と連絡の役目をしてもらう。あと、盗賊団の面々は2~3日したら騎士が来るんで、そちらの指示に従うこと。そして、この村を連絡網の拠点とする。村長、部屋を1つ貸してくれ。」
「ああ、わかった。」
村長が頷く。
「あと、ピクシーのみんなには、俺の従魔として一族すべてを受け入れる。従魔証を渡すので手の空いたものから俺のところに来てくれ、従魔証は腕輪型、ペンダント型があるが、数は揃っているのでここにいるものは自由に選べるだろう。」
「「「うぉーーーーーー」」」
ピクシーたちの歓声が上がった。これからは俺の従魔として狙われなくなったからな。
「ミュー、あとで15人ほど選抜してくれ。偵察、連絡要員として軍と冒険者に送り込む。」
「わかった。まかせて。」
「あと、食料も持ってきたので、村の皆さんで食べてください。」
「ホントですか。ありがとうございます。」
頭を下げる村民たち。
「あとで食料庫に案内してください。それじゃあ解散。」
そう言って、村長の案内のもと食料庫に食材収納に入っている食料を降ろし、貸してくれる部屋に案内された。
ちなみに食料は国王が提供してくれた――――正確には盗賊団に占拠されていた村を解放した後の復興支援の食料を、軍が持ってくるのを俺が代わりに持ってきただけだ。その方が早いし、軍が持ってくると敵側に不審に思われてしまうので、俺が持ってきた。
空き家でピクシーたちに従魔証を配布して、ミューの選抜してくれたピクシーたちと対面する。
「君たちが選抜メンバーだね。これから君たちが使う魔道具の説明と配布を行う。」
そう言い、ピクシーたちの前に魔道具を出す。1つ目は、見た目は、ショルダーフォンだ。
「これは通話の魔道具で、ここにある親機と通信ができるだけの魔道具だ。こちら側で誰から連絡が来たかわかるようになっている。もちろんこちらからも個別に通信可能だし、一斉通信もできる。」
元ネタは乗務員室にある輸送指令と繋がる無線だ。
「これを一グループ2つずつ配布する。一人は騎士や冒険者の近くにいて連絡業務。一人は偵察部隊として異変があったときの緊急連絡用だ。あと、偵察班には、秘密兵器としてこの魔道具を渡す。この魔道具は――――。」
使うことにならないのが一番なんだがな、コレ。
全員に作戦を伝えた後、ルナを呼ぶ。
「ルナ、明日ピクシーたちを冒険者たちと軍に連れていってくれ。冒険者はウリアさんの臭いで、軍はリーフの臭いを目印に行けばいいはずだ。先に冒険者に向かってくれ。頼んだぞ。」
その為にそれぞれの隊によく知っている人物を配置したんだから。
「わかった。任せて。」
そう言うと、少女の姿のルナは、撫でろとばかり頭を差し出した。




