第17話 俺に打たせろ!
トンテンカントンテンカンジューとチートを駆使して1本の包丁を作り出した。
「出来は――――うん、なかなか良さそうだな。」
鍛冶師の職業レベル68のお陰か、パッと見ただけで良いものであることが分かる。
「親方、これでいい で す か?」
後ろを振り向くと、親方とレンちゃんが大きく目を見開いて顎を落としそうなほど大口を開けている。
暫くして、二人とも正気に戻る。
「ちょっと見せろ!なんだこの刃は!この大きさで十分な固さと粘りがある!これなら、大抵の魔物を切り裂くことができるな!」
「す、すごい!あんな風にナイフを打つなんて!感動した!」
いきなり饒舌になる二人。
「いきなり饒舌だなぁ。」
「「あ……。」」
「あ、声に出てた?」
こくこくと頷く2人。
「と、ともかく、このナイフならどんなモンスターだろうが切り裂けるな。」
「あ、それ料理用のナイフです。」
「「料理用!?」」
「この包丁ならどんな肉でも、カボチャでも切れます。」
「「いやいやいや。」」
さっきからシンクロしてるなぁ、この2人。やっぱり父娘だなぁ。
「肉どころか、ドラゴンの鱗ですら切れるぞ。」
「それどころか骨まで切れるんじゃあ。」
うーむ、どうやら包丁作ったら、伝説級の武器になったみたいだ。ステンレス製なのに。
「ワシを弟子に……、いや、ワシの娘をやる。婿に来てくれ。」
「おいおい、色々と問題があるだろ。娘の気持ちとかさぁ。」
思わずツッコむ。
「オレ、あんたんとこ嫁ぐ。」
「即答かよ!」
さらにツッコむ。
「おう、そんだけの技術ん持つあんたんとこなら、オレから申し込む。結婚してくれ!」
父さん、俺、異世界に来て初日にプロポーズされたよ。
「いやいやいやいや、ちょっと待ってくれ。まず、出会って……何時間だ?」
「そうだな、二時間半ってとこだな。」
「出会って二時間半の男に娘をやるって親が普通どこにいるんだ!」
「ここにいる。」
「あんた以外でだ!それに、出会って二時間半でプロポーズするのも……、中途半端だなぁ。でも、まあ有るか。」
ひとめぼれで、即、プロポーズはなくはない。うまくいくかは置いといて。
「おう、旦那以外と添い遂げるつもりはねぇ。」
赤くなりながらも、堂々と言いきりやがった。
「え、あ、おう、うん、男前だなぁ。じゃなくて、まず確認なんだが、婿養子になれって言うことか?」
「婿養子になるのはありがたいが、そこまでは考えてない。」
「オレは嫁だ。」
「うん、レンちゃんはぶれないなぁ。」
「おう。」
「次に、俺は旅の者だ。だからこの町を出ていくが、いいのか?」
「オレはどこまでも付いていく。」
「ほんと、ぶれないなぁ。だけど……、レンちゃんは俺の鍛冶の腕を見て言ってくれたんだね。」
「おう。」
「それって、俺の鍛冶の腕しか見てないのに結婚するって言ったんだよね。」
「だからそうだと――――。」
「それって、俺自身の事は見てないのに結婚するって言うんだよね。俺がどういう人物で、どんなものが好きで、何を求めて、何がしたいか……、そういうことを全く見ずに結婚するって人と結婚できるのかな?」
俺の発した言葉に、はっとなる父娘。
「確かに王公貴族なら政略結婚で会う前から婚約、はじめて会うのが結婚式と言うのもあると思う。だけど、俺たちは庶民だ。それも俺は冒険者で彼女は鍛冶師だ。同じものを見てるとは思えない。」
「……、確かに性急過ぎたな。すまん、話は無かったことにしてくれ。」
「オレも、旦那に失礼なこと言った。」
そう言って、項垂れる二人に、一つ提案をしてみる。
「ところで、レンちゃんは金属加工はできるのかい?」
「へっ?」
「金属加工。」
「おう、鍛冶師だからな、当然出来る。」
「なら、一つ提案があるんだが……。」
「なんだ?」
「実は、俺は異世界から来たんだ。」
「なにっ!」
「えっ!」
まあ、ビックリするわな。
「で、この世界に鉄道を走らせたい。その為には金属加工が出来る人物が不可欠なんだ。」
「――――色々聞きたいことがあるな。」
「まあ、当然だろ。まず、鉄道って言うのは――――」
俺は鉄道に関して簡単な説明をする。そして、大雑把に”鉄道車両”について解説をする。
「――――と、言うわけで、金属加工の技術で車体や機関車の製造をする。」
「なるほど。だが、軍事利用されるな。」
お、ちゃんと理解してる。
「それは当然だろう。それに関しては3重の対策を考えてる。」
「そうか。」
「そのうち一つが民営でやるということだな。」
「みんえい?」
「まあ、普通ならこういう事業なら国営――――国が主導でやることになるけど、国境を”越えて”鉄道網を作るには、国じゃない”民間”で事業を行う必要がある。そして鉄道を引くときに国に対して”軍事利用しようとした場合、鉄道は撤去する”と契約すればいい。」
「なるほど、車両にもか。」
「いや、機関車の方だな。」
長距離の時は機関車牽引の方がいいと思うし。
「そうか。」
「で、これだけ話して何なんだが、提案って言うのはレンちゃんに機関車を造る手伝いをしてもらう――――、と言っても、しばらくは資金集めなんだけど、そういう方向で一緒に来てもらうって思ってね。」
「そうか。」
「あと、結婚云々は俺がこの世界で地盤を固めてから考えることになると思う。」
リンちゃんは少し考えて、
「……オレ、旦那に付いてく。」
と、答えた。
「いいのか?」
「ああ、付いていって、役に立って、旦那に惚れさせる!」
おう、男前。
「ま、まあ、ともかく、それよりも先にやらなくてはならないことがある。」
「おう。」
「なんだ?」
「まず、先に――――」
二人ともゴクリと息を飲む。
「俺に、刀を打たせろーーーーーーー!!」
俺がこの工房に来たのは、自分の刀を打つためだった。
「「あ、忘れてた。」」




