第13話 ギルマス
苦笑いをしながら、フェンリルを撫でていると……。
「おいオルガ!仕事をほっぽりだして訓練場でなにして――――」
初老の男性が怒りながら訓練場にやってきた。その人は訓練場に入るなり、フェンリルを見て絶句する。
「あ、ギルマス。」
あの人がこのギルドのギルマスらしい。そして、しばらくフリーズしていたギルマスが言葉を発する。
「おい、オルガ。」
「なんですかギルマス?」
「あの、腹を見せてる超大型の犬の魔獣ってフェンリルじゃよな。」
「そうですね。」
「あんな特級モンスターがこんなところにいるのは問題あるが、従魔みたいじゃし、まあ置いておこう。」
「そうですね。」
「じゃがお前、フェンリルを従わせれる冒険者なら最低ミスリル級じゃわな。」
「そうですね。」
「なぜお前、そんな超VIPが町に来てわしにすぐ伝えんかったのじゃあ!!!」
と、隣にいたオルガさんを怒鳴り付け、大慌てで俺の前に土下座する勢いで頭を下げ
「すみません、超一流冒険者の方がいらっしゃるとは知らず。と、とりあえずわしの執務室へ……。」
ギルマスさんは自分以外全員が苦笑しているのを見て……。
「どうしたんじゃ?」
ギルマス以外全員は思った。(まあ、普通フェンリルを手懐けてるのが、今日、異世界から来たばかりの新人冒険者とは考えられないよなぁ)
とりあえず、オルガさんとウリアさんたちパーティ(『青薔薇』と言うらしい)と一緒にギルマスの執務室に向かう。最初は、銀級冒険者のウリアさんたちがついていこうとするのを渋ったが、俺が「この町に来るときに世話になったから」と同行を求めるとあっさり認めた。フェンリルは大きさを変える能力があるらしく、大型犬くらいの大きさになってもらった。そういえば俺、まだこの建物から外に出てない……。
「どうぞお掛けになってください。」
ギルマスの向かいのソファーに座る。ウリアさんたちも一緒だ。
「私はこのセルウォリス冒険者ギルド、ギルドマスターのクラウス・フォールマンと申します。お名前を伺ってもよろしいでしょうか。」
うーん、ウリアさんたちに対する態度やこのギルマスを信用していいかわからないなぁ。ギルマスの後ろに控えるオルガさんに目配せすると、首を横に振った。信用できないのか……。なら――――
「ヤマトと言います。」
「ほう、 ヤマトさんと申すのですな。冒険者証を見せてもらえますかな?」
まずいな、冒険者証を見せると、木級とバレてしまう。どうするか……。
「彼は、飛び級でのランクアップで、今、冒険者証があらへんねん。そいで新しい冒険者証が出来るまでまだ彼の事が知られとらん辺境で骨休めに来とるんや。」
おお、一応言い訳になっとる。
「では、訓練場に居たのは?」
「あー、そらあウチが頼んだからや。魔法を見たいっちゅうてな。」
「なるほど。」
ギルマスは訝しい目で見ている。一つ信用できるか試してみるか。
「ところで、先程怒鳴り付けていた受付嬢ですが、なにか処分でも行いますか?」
ここで渋るなら信用できるよな。だが処分をするなら……。
「そうですな、50%の減給半年ですな。人手が足りないのでクビにはできないですからな。」
おいおい、話を聞かず処分するとは……。信用以前の問題だな。
「では、その処分の代わりに彼女を”新しい冒険者証”を手に入れるまで案内役をして貰いましょう。この町には不馴れなんで。なに”こちらを優先してもらう”だけです。」
「……なるほど、……わかりました。では、オルガを案内役としましょう。」
おっと、ギルマスが一瞬、悪い顔になるのが見えた。うん、何かしらの理由をつけて給金を巻き上げようとしてるな。欠勤かな。
まあ、こんな小悪党の元にいたら十分能力の高いオルガさんが飼い殺しみたいなことになりそうだし、ちゃんとしたギルドに移籍した方がいいだろう。どこのギルドに移籍するかはウリアさんたちと要相談かな。
「じゃあ、今からお借りしますね。」
そう言って、オルガさんも連れてギルドを出る。出口がわからなかったので他の人について行ったのだけど……。
ようやく、冒険者ギルドの建物から出られた(笑)
更新ペースを少し減らして月、木、更新とします。また、第1章部分はすべての投稿の予約が終わりました。引き続き第2章部分の準備を進めていきます。




