第28話 馬車ギルド
さて、今日は馬車ギルドとの話し合いだ。具体的には長距離馬車の目的が駅と街を繋ぐものになり、将来的にバスみたいに大きな街中や、駅から離れた街や村を結ぶものになる。たぶん、馬車の需要はあまり大きくは変わらないが、内容がかなり変わる。なので、商業ギルドのギルドマスター、ゲオルグ氏についてきていただいた。
「はじめまして、俺はマルサロア鉄道社長の新庄大和だ。」
「はじめまして、馬車ギルドギルド長のボルシチです。」
馬車ギルドに来た俺は、馭者らしき人たちに囲まれながら馬車ギルドのギルマスに名刺を渡す。
「で、馬車ギルドを潰しに来たのですかな。」
おお、いきなり喧嘩腰だな。
「いえ、馬車ギルドとは共存していきたいと思っています。馬車の需要はなくなりませんよ。」
「……そうなのですか?同じ輸送を担うので、てっきり馬車の役目を全て奪うのかと。」
「無理ですね。鉄道には鉄道の、馬車には馬車の得手不得手があります。住み分けは十分可能ですね。」
「……そうですか。いや、てっきり馬車の役目はなくなるのかと。ならば全面的に抵抗しようかと思っておりましたが……。おお、そうだ、応接室に案内しましょう。」
囲みから解放され、応接室に移動した。
「で、どういう風に共存するのですか?」
早速細身のギルマスから質問が飛ぶ。
「まず、鉄道の得意なこと、苦手なことからお話ししましょう。鉄道は速さと一度に運べる量が多いことが特徴です。そして苦手なのは、急坂、小回り、そして、レールの上以外走れないことです。拠点から拠点に荷物や人を運ぶことはできますが、拠点から先は運ぶことはできません。馬車ギルドの皆さんには鉄道側の拠点――――――駅と言いますが。そこから先をお願いしたいのです。駅には馬車が待機できるスペースを用意します。そこから人や物を各地に運んでいただきたい。」
「ほう、つまり長距離は鉄道に任せて、駅?を中心とした輸送を馬車に任せると。」
「そうなります。で、馬車のほうですが、鉄道との連絡輸送の場合一定の割引をしたいと思っております。乗り継ぎ割引ですね。」
「ほう、どういう風にするのですか?」
「簡単なのは割引券を渡すことですね。鉄道は切符売場で切符を購入しないと改札を通れないので、割引券を売場で渡してもらうと割引します。馬車の方ですが、支払いは先払いですか?」
「ああ、特段の理由がなければ先払いだな。」
「なら、同じように先払いの時に割引券を渡せば、その金額を割り引きする形ですね。その割引券をマルサロア鉄道の窓口に持ってくれば割り引かれた金額をお渡しするという感じですね。」
「なるほど。だが、偽造されたらどうする?」
「それは皆さんを信用するだけですよ。まあ、ある方法で偽造できないようにしておきます。方法は秘密です。」
「そ、そうですか……。」
「あと、希望者がいればの話なんですが、マルサロア鉄道に就職する馭者がいたら、受け付けようかなと思っています。ほら、長距離馬車の需要は減りますし、うちはできたばっかりなんで列車の運転士が足りないので。あと、純粋に馬車としても募集します。馬車と鉄道の一体運用をしようかなと思って。特に貨物とかは、駅から店まで運んだ方がいいですから。」
「それはどう言うことだ!?」
ゲオルグさんが、割って入ってきた。確かに、商業的に考えると、聞きたくなるな。
「説明しましょう。まず、馬車で店や工場等から荷物を受け取ります。このとき、大口の案件以外はそれぞれの場所まで馬車で巡回して受け取りに行き貨物駅まで運びます。そこで行き先別に貨物列車にのせてそれぞれの貨物駅へ、そこからまた馬車に積み替えて各配達先まで持っていく。そうすれば、貨物駅に荷物を受け取りに来る人や馬車が殺到したりしないで済むだろ。」
「なるほどなぁ。となると、街道を走る馬車が減るな。」
「そうですね、ですが、貨物駅は旅客駅より減るので、そう需要が全くなくなるということはないはずです。」
「そうなのか?」
「はい。貨物駅は現在予定している終着駅と中間駅に作る予定です。ちなみに、終着駅には王都を含んでいます。」
旅客駅予定地全てに貨物駅を作ってしまうと、人がいくらいても足りなくなってしまうからな。
「その後は分岐駅と大きな街に貨物駅を作るつもりではあります。」
需要の大きい大規模都市と、分岐で編成を組み替えることで運行本数を減らしてスムーズに運行できるようにとの配慮である。複線化したときも変わらず有用な場所に貨物駅を作る予定だ。
「それでお宅の傘下に入るとどう変わる?」
「そうですね。恐らく今の馭者の賃金は運賃をそのままでしょう?その代わり、馬車の運営費用――馬の餌や馬車の整備費用は馭者持ちで。」
「ああ、ほとんどの馭者はそうじゃな。」
「大商会や貴族についている馭者の運用費は経費ですよね。そっちに近いですけど、給与は月給と歩合給、それに罰金の組み合わせになります。月給は銀貨10枚、歩合給は1行路あたり銅貨50枚。ただし、一月に勤務できる日数は22日までとし、連続勤務は5日までとし、5日働いたら1日は休むことを義務付ける。馬車本体や馬の費用は会社持ち、ただし馬車にはうちのロゴを大きくわかりやすい形で入れてもらうことが前提。罰金は誤配やちゃんと梱包された荷物の破損など、旅客の場合は早発とかが罰金になります。ちなみに、鉄道の運転士も月給と罰金は同様ですが、歩合給は1行路銀貨3枚になります。鉄道は泊まりを含めて5日で1行路になるので、その分金額が高くなってます。他の業務も業務によって給与が変わります。」
「ほう、かなり手厚い上、休みが月に6日まで貰えるのか。」
「いえ、6日以上です。まあ、休みの分給与は減りますよ。」
「ちょ、ちょっと待て。一日も勤務しなくても給与は貰えるのか?」
「貰えますよ。ただし、不当な理由で休んだ場合、クビにできますけどね。」
他の仕事をしていたり、仮病などで働く気がないならクビだ。さらにブラックリストに載せてうちを利用できなくなる。旅客としてだけではなく、荷物を送ったり受け取ったりすることもできない。まず路頭に迷うだろうな。それ以外の場合は状況によって変わっていく。出産、育児で休まなきゃならないなら出産祝い金や育児休暇を与えたり……、保育施設を作って働きながら育児もいいな。準備はしとこう。
「じゃあ、他の皆さんにもよろしくお願いします。」
俺はそう言って募集要項を両ギルド長に渡した。




