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パーティーは女子会

エルミナ視点です。

「みんな!クラインさん連れてきたよ!」


会場の奥に設けられたテーブル席に、わきあいあいと女子が集まっていた。


(みんな、すごくおしゃれで可愛い…)


こんなに同じ年の女の子が集まっているのを見るのは初めてで、少し圧倒されてしまう。


「エルミナ・クラインです。誘っていただいて嬉しいです。よろしくお願いします」


私の最初の挨拶。女の子の目から見ても、ちゃんと出来ているだろうか。


「ね、あたしイブ・エスター。あなたと同じ部屋よ!よろしくね!」

「私たちみんな部屋が近いの。だから寮で困ったことがあったらいつでも言ってね!」

「そうそう。全然かしこまらなくっていいんだから」

「お腹すいちゃった!とにかく食事にしましょ!」



もうここは場所がパーティーホールというだけの、彼女たちの空間だった。

自分の話、家の話、授業の話、先生の話…そして、恋の話。

私は新参者だったからずっと聞き役だったけれど、みんなの仲がいいことはすぐにわかった。すごく楽しい。



「それにしても…さっきのはびっくりしちゃった」


だいたいみんなが食事を終えたところで、近況の話題も出尽くしたのだろう。

一人の女子がうっとりと話し出す。


「ね、私も!舞台の演出かと思っちゃった!」

「すごく素敵だったぁ~。周りもみんな静かになっちゃってたよね!」


自分が来る前に舞台でもあったのだろうか。それならすごく見たかった。


「ね、クラインさんとヴィクトールさんってどういう関係なの!?」

「え…」


それまで思い思いに話したいことを話したいように話している、そんな空間だったのに一気に視線が自分に集まる。みんな少し前のめりだ。

急に話が自分に振られたことに驚いてしまった。

女子の会話、すごく展開が早い。


「ごめんね、会ったばかりなのに不躾よね」

「でも私、ヴィクトールさんがあんな感じなの初めて見て…ちょっとびっくりしちゃって」

「なんだか二人並ぶと絵になる~って感じで、なんかすごいもの見たな~って」


そんなに人に見られていたなんて気付かなかった。

そして私の知らないルディがいることを知って少し…ううん、だいぶ彼女たちが羨ましい。




「ねぇ、みんな待って。もう時間だわ」


きゃいきゃい盛り上がっていた場の空気が変わる。

まだ消灯時間には時間があるようだが、どうしたのだろうか。

不思議に思っていると、ミリーゼがそれに気付いてくれた。


「実はこういうパーティーって暗黙の了解っていうの?があってね。終わり一時間ぐらい前になると、男女の時間…みたいになるの」

「男女の…時間…?」



なんだか思い描いていた学院生活にそぐわない言葉が出てきた。


「そう。親の目が届かない学生のうちに遊びたい人とか、結婚相手を探している人なんかが行動し始める時間。ずっと前からそういうのはあるみたいで、学院自体も黙認しているし、何か危ないことがあるわけじゃないのよ。それぞれ家の事情もあるから、まぁ自分は相手を探しています、っていうアピールの場かな」


そうか、家の事情といわれるとわからなくもない。


「ただ、そういうの求めてない人からするとちょっと面倒くさいし、相手に勘違いさせてもいけないから。興味ないなら一時間前をめどに退散したほうがいいかも」


話なら談話室でもできるから、そうミリーゼが笑う。


「ほら、あそこ。もう早速はじめてるわよ」

「ほんと露骨よね…って珍しいわね。あの二人がこの時間まで残っているなんて。餌食になってるじゃない」


見るとその先ではルディとクリスさんが綺麗に着飾った女子生徒に絡まれていた。


(!!)


その光景は私にとって衝撃的なものだった。

私は、本当に自分のことしか見えていなかった。ルディに他の女性の存在を考えたことがなかった。


「大変…」


この学院でとてもいい女性と出会ったら。ルディはきっと去ってしまう。私みたいな、面倒な女…

見ているのが辛くて、自分の足元しか見れない。胸が、苦しい。


「クラインさん?大丈夫?」

「ねぇ、いつもは彼らこんな時間に残ってないわ。今夜はたまたまだと思うの。心配しなくて大丈夫よ」


さっきの『二人の関係は?』その質問に答えていないのに、イブやミリーゼが気遣ってくれる。


「大丈夫。大丈夫です…ごめんなさい」



全然大丈夫じゃない。どうしよう。私はどうがんばったらいいの。距離を縮めるって、なにをするの?

ルディが取られちゃう――。


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