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入学歓迎パーティー

ルディウス視点です。

エルミナの手を引いてホールへ入ると、もうすでに大勢の生徒がパーティーを楽しんでいた。

ざわざわとした喧騒が、潮が引いていくように静かになった。

みんながエルミナを見ている。

俺は自慢したいような、舌打ちしたいような複雑な気持ちになった。




そんな時、エルミナと目が合った。

何かこっそりと言いたげにしていたので、少し屈んで耳を傾けた。

俺の耳元で小さくエルミナの声がする。


「緊張しちゃうから、まだ一緒にいてね」


何を言うのかと思えば…そんなの決まってる。一人になんてしない。

エルミナに頼られているのが嬉しくて、思わず頬が緩んだ。


「あぁ。わかった」


それを聞いて安心したのか、エルミナが微笑む。


(あぁ…いいな)


エルミナが微笑んだのを確認したかのように、周囲にもざわめきが戻る。




ホールの中まで進むと、たくさんの料理やデザート、ドリンクが並んだテーブルがある。

そろそろ落ち着いただろうかと、エルミナの手を離す。

エルミナもホール内の様子が気になっているようで、辺りを見回している。

ちょっと口元が緩んでいるのが、ものすごく可愛い。



「普段は昼も夜も食堂で食べるんだが、今日みたいに何か催しがある時は食堂は手一杯だ。みんなこういう会場で好きに食べる。立食でもいいし、奥に行けばテーブル席もある。外でするように形式にこだわらず、みんな好きにしているからエルミナも楽しむといい。ただ夜食はないから、話すのに夢中になって食べるのを忘れないように。しっかり食べろ」



自分の過去の失敗を思い出しつつ、エルミナに説明する。

それを聞いたエルミナが驚いた顔をしている。


「え…ここにあるもの全部、食べていいの?」

「どれでも好きに食べていい」

「一人いくつまで…?」

「いくつでも」


エルミナの目が輝いた。


「すごい…すごいわ、なんてこと」


侯爵令嬢ならこんなことで感動しないのだろうが…食事も管理されていたのかもしれない。

それが今の彼女を作っているのだから、間違ってはいないのかもしれないが…

好きなものを、好きなだけ食べさせてやりたい。甘やかしてやりたい。



「ごめん!食事の前にちょーっといいかい?」


エルミナに声を掛ける男。クリスだ。


「俺はクリス・レヴォーグ。ルディウスの友人だよ。よろしくね。学年長と女子寮長を紹介したくて連れてきたんだ。何かあったらこの二人を頼るといいよ」


クリスの紹介に、男女二人が前へ進み出る。


「学年長のエドガーです。よろしく」

「女子寮長のミリーゼよ。あなたの部屋と私の部屋、同じ階なの。よろしくね!」

「あ、ありがとうございます。はじめまして。エルミナ・クラインと申します。私からご挨拶に伺わず、申し訳ありません」


少し焦った様子でレディのお手本のような美しいお辞儀をした。


「いいのいいの。そういう堅苦しいのはここではなし。それにみんな君に話しかけるの怖気づいてたから、まとめて僕が連れてきたんだ~」


怖気づく?と小首をかしげるエルミナに、ミリーゼが話しかける。


「ねぇクラインさん!向こうで女子寮の仲良し組でちょうど食事するの。テーブル席確保したのよ。よかったら一緒にどう?」


ミリーゼがエルミナの手を引いて、奥のテーブル席へと誘う。

手を引かれたことに一瞬驚いたようだが、すぐに嬉しそうに笑った。


「嬉しい!ぜひご一緒させてくださいな」


そして俺を振り返ることもなく、ミリーゼについて行ってしまった…少し寂しい。




俺が一人になったのを待っていたかのように、クリスがガシっと肩に手を回してくる。


「可愛いね。どういう関係?まさか君が女性をエスコートして入ってくるなんて…って女の子たちが絶句してたよ。ストイックで女遊びもしないあのルディウス・ヴィクトールが、って。僕も君のあんな顔初めて見たよ」

「あんな顔ってなんだよ…あいつは俺のだから。手出すなよ」

「俺のって…婚約者とか?」


婚約者。そう言われて顔に熱が集まる。熱い。


「え…ちょっと。そこ照れるとこ?いやいや、君の言ったセリフのほうが何倍も恥ずかしいでしょ」

「うるさい。俺たちも飯食うぞ」


からかってくるクリスを置いて、空いているテーブル席へと移動する。


「いやぁ~君とは長い付き合いだけど…君がこんなに面白い人間だとは知らなかったよ。楽しくなるね、ルディウス!」


後ろでクリスが何か言っていたが、俺もエルミナの位置を確認しつつ、食事をとることにした。


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