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必ず、迎えに来るから
今作のヒーロー、ルディウス視点から始まります。
「――また寝込んでいるのか…こどもを産める年齢まで育てろ――」
それを聞いて俺は決心した。
父に頼み込んで、王立学院への入学を決めた。
今までおろそかにしていた貴族の嗜みも精一杯励んだ。
勉学も運動も、容姿ですら完璧でありたかった。
***
見舞だと言って彼女の部屋を訪ねた。少し失礼だったかもしれない。
だが今日しかない。時間がなかった。
「俺、王立学院に入学するんだ」
部屋のベッドに横になりながら、彼女が潤んだ瞳に俺を映す。
「いいなぁ…私も行ってみたいなぁ」
きっと熱があるのだろう。力なく彼女が微笑んだ。
「そこは全寮制なんだ。だからしばらく会えない」
「…もう会えないの?」
「…そうだ。俺は学院でたくさん勉強する。誰も文句が言えないような、すごい男になる。そしたらお前を迎えに来るから。だからお前も頑張って元気になれよ」
これは俺の決意表明だ。必ず、やってみせる。
俺の気持ちが伝わったのか、それを聞いた彼女の顔に少し活力が戻る。
「うん。私もがんばる。がんばれ、ルディ」
それが俺たちの別れの挨拶だった。