巡り20
街に出て気づいたことは、やはり人間の食生活は豊かだということ。
雌仔竜たちに至っては次から次へと最初こそ遠慮していたが、ヒサキがかなり自分たちに好意をもっていることに安心してからは、今日はスウリよりもヒサキにタカるべきだと感じたようで、会話ができるわけではないのに、甘えた声や目線でヒサキと親交を深めている。
このヒサキという男、天然のたらしではないかとムラサキは感じた。
雌仔竜へは子どもの面倒を見てる感覚だろうからさておき、街の人間たちにかなりそつなく会話をする。自分のことはあまり多く語らず、相手に主導権を渡さないのに、相手が不快にならない会話など、いくら竜騎士として、知らない土地に行くことが多く初対面の人と接することが多いとはいえ、訓練でなんとかなる範囲を超えている気がした。
そして、安くしてもらっている。
スウリはというと、ヒサキのことを街の人に聞かれてどう答えるべきかとか、私達が籠から出てこないか、バレないかと、うわの空であちこち警戒しまくって楽しめてなどいない。
ヒサキが本気になればスウリをたら仕込めるのだとムラサキは確信した。そうなる前に、私が見定めねばと決意も新たにした。
悪いやつではないということはわかった。
この若さで竜騎士の偉い位についてるとスウリの母様も言っていたから、強さもあるだろう。
しかし、何よりもまずハルワとスウリを優先できる者であってほしい。私との相性は…悪くはない気がする…とムラサキの為にとヒサキがこの地方以外で取れた珍しい果物をたくさん籠にいれてくれたから思っているわけではない…
※一応補足するが、この時点で、ヒサキはまだまだスウリを尊敬する先輩の、可愛く育った娘としか認識してないということをムラサキは忘れている。ムラサキの中でハルワのヒサキのスウリ嫁候補説はハルワなら実現してしまうと感じたため、かなり強いインパクトを残してしまったのだ。
ともあれ、スウリとともに、街に来れたことは何より嬉しいし、ヒサキと雌仔竜と来たことは、より多くのごちそうにありつけた点で正解だったと感じていた。
ウールの呼んだ竜騎士達が今日着くことで、早めに切り上げになったことは残念だが、スウリと二人できていても、これだけ街のことは知れなかっただろうから、満足している。
まぁ、巣に帰ってから母様と父様に雌仔竜たちと共に街のことを話そう。
雌仔竜達はムラサキが話さなくてもたくさん今日の出来事を話すだろう。前はそれなら自分の話すことはないと感じていた。だが、どうやら、二人はムラサキの仔竜としての時間を、ムラサキの親としてできる時間を大切に考えてくれているようだ。この二人の間に生まれて良かったとムラサキは感じた。




