仔竜4
議会部屋では、一人の困った王子の為に、竜の棲家のある伯爵達が声を荒げ、他の大臣達が沈黙を貫いて、王は溜め息をついていた。
困った王子…それは12年前、竜に吼えられていたあのアスワル王子だ。
12年たった今、帝王学を学び、変に賢くなっている。
国は、国民がいて成り立っているから民を大切にしなければいけないことも竜との友好関係が大切ということも頭では知識としてはある。
しかし、最終的な行動として、国は、王が仕切るからこそ成り立ち、竜との友好関係は歴代の王家が築いてきたものだと思ってることが出てしまう言動になる。大臣達の手におえないこともしばしばだ。
特に竜への執着は激しく、王子である自分には、絆を結ぶ相手がどこかにいると信じて疑わず、公務をほっぽりだしては、地方の竜の棲家に住んでいる竜にあいにいくのだ。
そんな、アスワル王子からすると、自分が生きている時代に竜王が生まれたのだ。自分がこれまで絆の相手に出会わなかったのも、竜王が生まれる前だからだったのだ、自分が紫竜の世話をせず、誰がするのだ。
と意気込んでいる。人間は近寄らせないとの伝言を宰相から聞いているにも関わらず…
王は、そんな王子の様子を見て、「なぜ今なのだ。」とアスワル王子とは逆で、実は王家にとっては災いの種にしかならないのでは無いだろうかと、ウールの報告を聞いた夜からそう感じていた。
なぜなら、竜王のみが「やっぱ、人間に力貸すのやーめた!」と言えるのだ。
つまり、竜王がいる間は人間はいつも以上に竜との関係に気をつかわなければいけない。他国との闘いに竜が力を貸す、その上で死傷するのは、理解の範囲内だろうが、リュラ国の民が、国王が竜に非道な行いをすれば長である竜王は黙ってはいまい。もちろん竜王自身の尊厳を損なうような行いもだ。
自分は老い先短い。つい先日生まれた紫竜との付き合いは次代のアスワル王子になるだろう。しかし、アスワル王子ではその機微をとても読みきれないのではないだろうか。と自分の息子ながら評価してしまう。
自分に後数人王子がいたら…と悔やむ。王には娘は3人いるが、王子は、後一人まだ5歳のシール王子がいるのみだ。
王は、「では、この場にウールに来てもらい、もう一度聴いてみようではないか?」と王子に提案した。




