運命3
“おそらく、紫竜だ。確定は太陽が昇って明るくなって、体毛も乾いてからだが…理屈ではない、竜族という血が、紫竜が生まれたといっている。おそらく、全ての竜が紫竜の誕生を感覚で感じとっているだろう。”
チッタは続けた
“ウールよ、今は言えないと言っていた言い伝えの話を覚えているか?
《竜王の絆の相手は竜王の宝である。全ての竜の話を親身に聴き、竜族全てを愛してくれる娘であった。だからこそ、我ら竜族はこの娘を全身全霊で護りたくなったのだろう》と伝えたられている。『話を聴く』とはすなわち『話を聴けた』ということではないか?”
チッタの言葉に、ウールは沈黙した…
そして、悪態をつきたくなった。
スウリがなぜ全ての竜と話ができるのかわからなかったが…
なんなのだこの巡り合わせは?
絆を結んでいる相手がいる竜は、番を作らないことが多いのに、番をつくり、その子どもの中に紫竜…竜王が生まれただと?
世の中に運命というものがあるのなら、このことはまさしく運命の歯車が動き出したことを示しているのではないだろうか?
スウリは、この歯車の一つで、逃れられない何かを、背負ってしまっているのではないか?
神よ、どうして、竜と話ができる者が王族に生まれず、スウリなのだ…
スウリはこれから、どうして行けばよいのだ…
私は、どうスウリを守ってやれば良いのだ…
長い沈黙の後、ウールは「とりあえず、朝になるのを待とう。」とだけ言った。




