運命2
チッタが交代し、ミツハリが食事から帰ってきても、あまりヒビは変わらなかった。そこから更に2時間。あたりは真っ暗になり、春口とはいえまだ冬の寒さを残らせている夜風は人間には堪えるのでミツハリが卵を、チッタがウールとスウリを温めながらまだかまだかと待っていた。
“誰かのくちばしが出てきた気がするわ”
ミツハリが、卵から離れた。そして、くちばしが見える卵を外からも突き割る手助けをはじめた。
ようやく一頭孵った。
すると、次を競うべく、2つの殻からもくちばしが見え、チッタとミツハリそれぞれ手助けした。最後の1つもくちばしが見え、4頭全て孵ったときにはぴぃぴぃと子竜がさえずりあっていた。
「まぁ、同じタイミングで生まれる卵なのに、色は一頭ずつ違うのね。親の色でもないわ!赤…紅と言うべきかしら?それに、黄と少し薄い黄色、最後のは…黒かしら?」
“イヤ…これは…”チッタが困ったような声をだす。
“紫、紫竜だわ!3000年ぶりに紫竜が生まれたのよ!”
“私たちの子の中に紫が生まれるとは…”
「ムラサキだと!?
竜王の色ではないか!
本当にこの黒っぽいのはムラサキなのか!?」
竜王の色は流石にリュラ国の民なら誰もが知っている。ムラサキだと…
そして、ムラサキは長らく生まれていないため、まぼろしではないかとなっていることも。
紫竜は現実にいた。それも、今目の前に。




