第九十七話 三人だと姦しい。四人になると……
「まあ、βの時はテストみたいなモンだったのよ」
ゲンテさんは頬をかきながら言う。
さらっとした茶髪が少し視界に入る。
「昔はスキンヘッドでな。ゲーム内ならば………って感じでやってたら違和感あってな。正規版では生やしたわけよ」
「………」
「んだよ」
やっぱイケメンは可及的速やかに御陀仏させるのが俺達の使命だと思うんですよ。
というか義務。使命とか重たいし、面倒ですし。
………いや、似合いすぎでしょ。なんすかアレ。
俺同性に恋できる人間じゃないですけど、それを踏まえた上で良きと思いますし。
捕まえた奥さん本当凄いですね。
なお、その奥様は偶々その会話中にやってきて、ゲンテさんの後ろで肩を小刻みに震わせていました。
「………ゲンテ感ない」
「うるせえ武器と体格は変わらねえだろ………」
ゲンテさんは少し落ち込んだ様子。
でも髪型って外見の中でも結構印象に残りやすい部分じゃないですかね? だからツキちゃんの言い分もわかるといいますか。
「まあまあゲンテ殿。それほど皆さんに頼られていた。認められていたと考えればいいのだ」
「………だな」
物は言いようですねー。
見方って色々ありますねー。
「これで全員集合かな?」
「シロさん。まだ二名ほど来てないです」
「え? 二名?」
シロさんは首を傾げる。
ゲンテさんとアイギスさんも同様。
ツキちゃんだけは、誰のことだか察したのか、小さく舌打ちをしてから呟く。
「メス豚が………」
聞こえてますからねー?
あの二人は正規版からのスタートなので、アバター作成からという面倒な手順を踏むのですよ。
時間もかかるのですが、ピクシーさんの御披露目が早くしたい今この頃。
ピクシーさんからも『お二人も? え? 私ずっとこのまま!?』とのフレンドメッセージが。
「ん、あと私の家族が一人くる」
おー、ツキちゃんの所からもですか。
最初から大所帯ですねぇ。
おやメッセージが。
「あ、お二人もチュートリアルが終わったようなので、すぐ来ますよ」
「………ショウの知り合いかー」
シロさんが遠い目をする。
「ショウの知り合いって個性強そうだなぁ」
うわぁ酷い。
確かに無個性ではないですけど。
………ん? 俺の知り合いって無駄に個性的な人多──
背中からの衝撃にそんな思考が飛ぶ。
………目を隠すの止めてもらいたいです。あと背中に地味に当たってるんですよねぇ。
「だ~れだ♪」
「………蕩音さん?」
俺の視界が開く。
後ろを向くと、そこには初期装備にベレー帽をしている蕩音ちゃんがいました。
………髪の毛と目の色変えたんですね。俺、変えてないんですよ。
「ん、今はトア」
「………ネーミングセンスが俺並みですね」
ちなみに姓と名の頭文字をとってトアです。
俺の予想ですが。
「ちょ、ちょっとアナタ! ショウに何してるの!?」
「ん、自重しろ」
シロさんとツキちゃんが反応する。
………まあ、いいですけど。
「私とアキのいつものスキンシップ。問題はない」
「いや違いますからね?」
信じてください? そこの茶髪イケメン筋肉さんと装備偏愛者さんは特に。
俺と蕩──トアちゃんは普通の幼馴染みであり、抱きついてくるのは昔からなん………あれ? 俺、普通と認めてませんか?
「はは、またライバルが増えてんのな。トア」
「問題ない」
「seeさんもこんばんわ」
「おう。今はヨウゲツな」
トアちゃんに少し遅れて、洋士さんも到着した。
………あのー、火に油を注ぐ行為はやめましょうね?
「マジかよ………」
「ショウ殿といると話題に尽きませんし、驚きの連続ですな」
「だろ? これからもウチのショウと仲良くしてくれ」
うわー、なんと早い。もう仲良くなってますよ。というかゲンテさんもヨウゲツ……seeさんのファンでしたか。
それに比べて………。
「──だーかーらー! ショウだって迷惑してるよ!」
「ん、さっさと失せろ」
ツキちゃんお口が………昔はあんな仲良かったのに。
いつからですかねぇ。まあいいですけど。
「それはアナタ達の考え。ショウの言葉ではない」
「くぅぅぅ!」
「ケッ」
だから油を注がないで!? そしてツキちゃんはいつからそんなヤンキーみたいな舌打ちするように!?
というかガチカオスですねこの空間!
『あーはいはい! 止めて止めて! リラーックスリーラックス!』
「「「………へ?」」」
「「ん? ………はぁ?」」
「おー?」
様々な反応の中、エルフ姿のピクシーさんことアテナ様のご友人と同名のパラスさんが突然現れる。
ちなみに急に出てきたように見えたのは、マリンさんのスキルである『小型化』と『飛行』を使ってたからですね。細かい説明は省きます。
『………リラックスできました?』
「「「かわいい!」」」
『へ? ええ!?』
突如三方向からもふられるパラスさん。
ふふ、ここにキマシタワーでも建てますか?
「まだあんな隠し玉いたのかよ………」
「完全想定外な俺の相棒ですね」
隠し玉ではないんですけどねぇ。まあそんな感じになりましたね。というかピクシーさんはそうしたかったようで。
俺とヨウゲツさんは、静かになった女性陣にほっと一息。
………『女三人寄れば姦しい』と言いますが、四人になれば静かになりますね。
個人的に皆が静かになるのは『栗の皮剥き』をしている時だと思ってます。毎年作ってる渋皮煮の皮剥き工程で皆黙々と皮剥きをしているのが証拠。ちなみにめっちゃ楽しいです。皮剥き (作って満足するタイプ)




