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Various World Online  作者: 束白心吏
第二章第一節 ディオニュソスの獣
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第九十五話 妖狐は狐を追う

「………どちら様ですか?」


 俺は青年に問う。

 直衣に烏帽子というシルエットの、不自然で目立つ格好の青年はフフフと笑う。


「私の名前は………まあ、言えないね」

「………教えたらあなたが俺の支配下におかれるから、ですか?」

「………面白い想像だね」


 想像、ですか………結構推理には自信があったんですけどね。

 それに姿を見せないというのも──


「………エロース神?」

「ははっ、()()()()()には関係ないかな」


 顔の見えない青年──いえ、神様は笑う。

 恋愛には関係ない………まあ、大体の検討はつきますが。


「………死の世界を旅しなくていいんですか?」

「太陽神でもないかなぁ………」


 ………マジですか。

 まあ俺が真名を言っても、意味ないと思いますけど。


「ああけど、故郷ではあるねぇ」


 ──!

 俺の中で閃きが走る。

 まさか………まさかまさか!

 高揚していくのを感じる。

 こりゃあ真名呟くより御加護を貰うほうが………いや、是非ともお近づきになりたいですね!


「ふふ、もうここまで言ったんだ。わかってくれて嬉しいよ」

「御高名はかねがね承っております」


 俺は片膝立て頭を垂れる。

 ………ところで常世出身の神だからと言って、日本神話の神出しちゃって大丈夫なんですかね?


『あのー………私にもわかるようお話していただいていいですか?』

「あー、まあ、いいですけど………」


 俺はちらりと一瞥。

 神様は頷いたので、解説をする。


「──日本神話には、様々な種類の神様がいます。

 太陽神、豊穣神………環境の神様や学問の神様まで多種多様でして、その中に知恵を司る神様もいるんですよ」

『なるほど。その『知恵の神様』が、目の前の怪しい方だと』


 説明にそこまで時間をかけません。

 そして真名もいいません。忙しいので。

 納得した様子のピクシーさんは『ところで──』と、話を戻していく。


『あなたは何が目的でショウさんに近づいたのですか?』

「ああ、そうだった。忘れていたよ」


 やっぱ人はいいねぇ………と、おじいさん臭いことを言って、神様は一枚の札を投げてきた。


「………これは」

「呪符さ。何度も使える特殊な、ね。

 それを使い、あの狐を捕獲するか、改心させてほしいのさ」

「捕獲、ですか………」


 狐と犬。

 ギリシャ神話。

 これだけであれば『テウメソスの狐』と断定できますし、内容も思い出せます。

 ………あれ? 捕獲無理じゃないですか?


「もちろん。あれは捕獲できるようなものじゃあない。けれど、これは時間との勝負なんだよ」

「………石になってからでは、遅いと?」

「その通りであり、少し違うかな。キミもテウメソスのことは知っているんだろう?」


 俺は神様の言葉に頷く。

 テウメソスの狐。

 端的にいえば、怪物『テウメソス』の悪事を止めるために『ライラプス』という猟犬といたちごっこをする話ですね。

 ちなみに最後はゼウスによって両方石にされ、ライラプスはテウメソスの悪事を止めたという功績から、星座になったのです。

 確かおおいぬ座でしたかね。

 余談ですが、テウメソスはディオニュソス様の聖獣である狐です。

 そしてディオニュソスの意味は『若いゼウス』。まあ『若い神』ともとられますが………ディオニュソスがゼウスなら、若い頃の過ちを清算した。みたいな感じがするんですよ。


「私はね、ゼウス様に呼ばれて来た常世神。

 常世出身の神様だから他の神話にも行けて、更には知恵の神様でもある。

 問題解決の為に外部から呼ぶ神として、私ほど適任は神様はそんなにいないのさ」


 まあ、災害を止めろとか無茶なことを言われたけどね──なるほどです。常世神は外界………隠世から現世から来た神です。ならば隠世──他の神話世界に登場してもおかしくはないでしょう。


「期限は?」

「そうだねぇ………まあ、無期限とは言わないけど、彼の狐が逃走してから三ヶ月くらいかなぁ」


 三ヶ月………例え『VWO』内時間で三ヶ月でも、結構時間はありますね。

 その間に、猟犬ライラプスと共に狐を捕獲する………無理難題とはまさにこのこと。


「それじゃあ、キミ達の旅路に祝福を」


 そう言い残し、神様は消えていった。

 あれ、どうなってるんでしょう………『透明化』のスキルでもあるんでしょうか?

 さらっと出された設定。それをスルーしていく主人公。更にカオスになる現状。

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[一言] 日本神話の知恵の神・・・菅原道真公かな?
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