第九十四話 更なる……
「えぇー………」
そんなバカな。
俺は『Quest clear!!』という表示を呆然と見つめる。
………え? 嘘ですよね?
『いやー、お疲れ様でしたショウさん!』
「あ、やっぱクエストクリアなんですね………」
でも報酬いいですし………期待してもいいですか?
いや、変な意味ではないですよ?
『いやぁ………無事クリアできてよかったです!』
「いやぁ………本当ヤバかったです」
あれ、序盤の序盤でやるようなクエストじゃないですよね?
というか『Deianira』って………。
『いやぁ………まさか適性レベル5のクエストをクリアするなんて流石ですね!』
………ん?
一旦思考を止め、ピクシーさんの方を向く。
ピクシーさん。『あ、やばっ』みたいな表情をしていますが………もしやね?
「ピクシーさん」
『………はい』
「知ってましたね?」
『………はい。で、でも! まさか起こるとは思わなかったんですよぉ!』
半泣き顔で、ピクシーさんは訴える。
………うん。美少女は泣き顔も絵になりますね。
「いえ、責めてるわけじゃないですけど………なんで教えてくれなかったんですか?」
『そりゃ面白──いえ! 時間! 解説する時間がなかったんですよ!』
いや、『面白』まで言っておいて言い訳とか………まあいいですけど。
「そろそろ行きましょう。シロさん達と合流して、驚かせましょう」
『いいですねそれ! それじゃあ──』
ピクシーさんは緑色のワンピースを着た美少女に変身。
そして『小型化』して………。
「いや、髪の毛の中に隠れるって………」
『古典的かもしれませんが、いいじゃないですか』
確かに。
とはいえ少しくすぐったいのですがね。
「──普通に後ろに隠れているのは無しですか?」
『アリですけど面白くはないですね』
やっぱかーい。
不慣れなツッコミは内心で。
さて、そろそろ行きましょうか。
──と、移動を開始しようとした直後、犬の遠吠えのようなものが響きわたった。
「『今度は何ですかぁ!?』」
二人同時に叫ぶ。
………ところで、ピクシーさんも数え方は人で大丈夫ですよね? 妖精とか数えたことないのでわからないのですが。
『くだらないこと考えてないで逃げま──きゃあっ!』
ビターン! という音が聞こえてきそうなほど、見事に見えない壁に突っ込んだピクシーさん。
一人だけ逃げようとかズルくないですか?
『ふんっ! 今宵は面白いモノに会ったなぁ』
「………はい?」
声がした。
俺は声のした方向を向く。
そこには──
『ええい! 小賢しい! さっさとお縄につけ!』
『我は捕まらんし、お主では捕まえられんわ!』
──声高々に笑う狐と、その狐を追う犬がいました。
なお、どちらも大型。
………えーと? 俺達、巻き込まれただけ?
「さ、さあピクシーさん。逃げましょう」
『そ、そうで──『待て待て、話は終わっとらん』──ひゃあ!』
………目の前に先ほどの狐さん。目の前に現れる。
月明かりがシルエットになっていてわかりませんでしたが、いい毛並みをしてますね。
──捕獲!
『呵呵っ! その程度では、我のことなぞ捕まえられんわ!』
俺の伸ばした手を、サッと身を翻し華麗に回避する狐さん。
あー、残念………。
「──捕まえました」
『なあっ!』
足を掴むと、黒い狐さんが驚いて声を荒らげる。
ちょ、暴れるのはナシで………。
『でかしたぞ青年! 狐め! 覚悟!』
意地で片足を掴み、決して離さない俺。
そして暴れに暴れまくって、最終的に取り押さえられた狐さん。
………あ、ところでこれ、何ですか?
■■■■
『誠に助かった。感謝する』
「いえいえ、俺も善行を行えましたし、助けになれたなら幸いです」
『ハハハ! 面白いことを言うな! では、私はこれで失礼する………オイ! 早く来い!』
犬の方が手綱を器用に使って、狐さんを引っ張っていく。
うーん。シュールな光景。
一応スクショして………よし。
「それじゃあ次こそ………」
「待ちたまへ。そこの狐」
俺は猛烈な危機感に晒され、大きく後方に跳ぶ。
そして暗闇に向かい抜刀の構えをとる。
「………私は、別にキミに害は与えないさ」
そこにいたのは、平安装束に身を包んだ烏帽子を被った青年。
………え? 直衣? いつから平安時代になったんですか。
どんどんカオスになってきたね! いやっほう!




