第九十三話 その真意、神(運営)のみぞ知る
「おいガキぃ………無視するのもほどほどにしろや」
えぇ………俺、喧嘩とか苦手なんですけど?
指をポキポキ鳴らして絡んできた冒険者………というか荒くれ者? は、ニヤニヤと見たくない笑みを浮かべている。
「………ピクシーさん。放置という方法とて俺はあると思うんですよ」
『ショウさん。一応私今エルフなんです。パラスでお願いできますかね?』
………えー、説明とかしてるので別にピクシーさんで良くないですか?
それにエルフって作品によっては森妖精とも訳されてますし、ピクシー呼びは別にOKだと思うんですよ。
『ちょっとショウさーん? 心の声漏れてますよー。そして名前で呼びましょうよー』
「それじゃあパラスさんで」
『それでいいのです』
というかやはりアテナ様に殺されるのではないですかね?
「おい、オレ様を無視してんじゃねえよ!」
──あ、忘れてました。
そして俺の目の前に『SQ【Deianira】START』の文字。
「おい外に出ろ! 上下関係ってのを教えてやるよ!」
そう言って、荒くれ者さんは外に出ていく。
………まあ、肩慣らしと考えればいいですかね。
『それじゃあ、頑張ってくださいねー』
ピクシーさんの声援を聞きながら、俺は外に出る。
………んー、武器が木刀なのもちょっと心配。
「よく来たな」
「最終的には出てこないと行けないですからねぇ」
キャンセルも出来なさそうですし。
──特殊条件を承認しました。バトルフィールドを展開します。
冒険者さんが棍棒を構える。
俺もそれに倣い、木剣を構える。
目の前に簡易的なルール説明が流れる。
どうやら、俺か冒険者さんのHPが二割を切ったら終了で、魔法でも剣技でもなんでも使ってOK。
まさに、肩慣らしには最適ですね。
「後悔しても知らねえからな?」
「お手柔らかに」
──5、4、3、2、1 BATTLE START!
「死ねや!」
スタートの合図と共に、冒険者さんが仕掛けてきた。
一足で近づき、横薙ぎに一閃。
おお………怖い怖い。
俺は剣で受け止め、その状態で『スラッシュ』を発動。
「ぐっ、オォ!」
予想通り、冒険者さんの態勢を崩すことに成功………ですが、俺にも硬直時間。
──結局、硬直が解けるのと態勢を整えるのは同時でした。
再び、剣と棍棒が交わる。
うおっ………これは負けそう………っ!
俺は流すようにバックステップで回避して、カウンターの『スラッシュ』を発動させる。
………あわよくば当たれと願いながら。
「ははっ! 遅えなあ!」
屈むように回避して、更に追撃の横薙ぎ。
うわっ、ヤバい。
俺は足に魔力を集中させ、右方向への緊急離脱をはかる。
回避自体は出来ましたが、HPの三割を持っていかれました。
これで、俺のHPは残り四割。
相手のHPは六割以上残っているので、完璧に劣勢ですね。
「いいねいいねぇ! さあ、もっとだ!」
冒険者さんから魔力が吹き上がる。
そして先ほどよりも俊敏に攻撃を開始する。
………え? これヤバくないですか?
俺はジグザグに回避しながら後方に。
「オラオラァ! 避けてるだけじゃあつまんねえじゃねえか!」
棍棒を横薙ぎに振るう態勢で突進してくる。
──少し、落ち着きましょうか。
俺は剣を鞘に戻し、抜刀の構えをする。
そして──
「──」
「ハァ!」
剣と棍棒が交錯──
「なあっ!?」
──せずに、俺の姿がブレる。
そして霧散して消えていき、冒険者さんの棍棒は地面を深々と抉った。
「──!」
「次、行きますよ」
俺はつばめ返しの要領で『スラッシュ』の二連続発動を行う。
まずは横薙ぎに。
次に袈裟斬りで。
ちなみに『スラッシュ』のCTは僅か0.5秒。
発動から0.5秒でCTが終わるので、少しの隙はできますけど………まあ、なんとかなりましたね。
「勝負あり、ですね」
二連撃『スラッシュ』の二連擊目──袈裟斬りによる胴体へのダメージで、HP八割まで削れました。
………部位によって与えるダメージが変わるのは、変わってないですね。
それに──
──WINNER! 『ショウ』!
──これでクエストはクリアですかね。
とはいえ、これで終わりとは思えませんが。
冒険者さんがむくりと起き上がる。
「カハハ、覚えておけよ………借りは必ず返す!」
「はぁ………」
借りだと思われたくな………行ってしまいました。
俺の目の前には『Quest Clear!』の文字。
………え? 終わりなんですか? というか馬人だったんですね………気づかなかったです。
レベルアップのファンファーレを聞きながら、俺は呆然と佇んだ。
ゲームだからね。神様は運営だよね。
……ユーザーは仏様? いいえ信者です。WFに限ってはね。生みの親が断言しているので間違いない。




