第九話 戦闘チュートリアル
ついに『戦闘』チュートリアルになった。
まあ、サクサク行きましょう。
《お待たせしました~! お待ちかねの『戦闘』チュートリアルの始まりますよ~!》
「お~!」
ピクシーさんの高いテンションに驚きながらも俺はパチパチと拍手と一応「お~!」って言ってみたけど、なんか思い出すと恥ずかしく感じてきました。
《テンション高いですね~! さあ! ストレs──ごほんっ。それでは、始めましょう》
テンション高いのはお互い様ですよね。
……ピクシーさんそれほぼ言ってます。そしてストレス溜まっていたのですか。
「よろしくお願いします」
《はい。それじゃいきますよ。
まず先ほど装備していただいた『木刀』ですが、どこに装着しますか?》
そうピクシーさんが言うと、俺の前にウインドウが現れた。
装着場所は『腰』『背中』の二択です。
「……腰で」
《分かりました。設定はこちらでしておきます──完了です。
装着場所を変えたい場合はメニューの『setting』から変えられます》
そう説明を聞いていると、俺の腰に少し重みが加わった。
……『木刀』、鞘にしまってあるんですね。
鞘が必要なのかはさておいて、俺は木刀を抜いてみる。少し重たいですが、その重みが懐かしかったり。
《……え~と、説明をしたいんですけど……》
「あ、すいません」
いけない。木刀の懐かしさに少し見惚れてしまいました。
最近は刀なんて振ってないし、確実に腕落ちてますよねー。
《それじゃあ、説明を始めますね。
まずは『耐久値』から説明します》
そう言って、ピクシーさんは片手剣を取り出す。
《これはブロードソード。一般的な片手剣ですね。どこの武器屋でも売っています》
そう言いながら、ピクシーさんはブロードソードの情報を見せてくる。
──────────
銘:ブロードソード
ランク:F
武器カテゴリー:片手剣
耐久値100/100
効果
攻撃力+10
説明
一般的な片手剣
──────────
「……これがブロードソードのステータスですか?」
《そうです。このステータスが基本的な情報です。ランクは『鑑定』系スキルを使うとあらわれます。次に──》
──────────
銘:ブロードソード
ランク:F
武器カテゴリー:片手剣
耐久値0/100 (損壊)
効果
攻撃力+1
説明
損壊状態の一般的な片手剣
──────────
《このように、耐久値の有無で効果に影響を及ぼし、隠しステータスである『切れ味』にも影響がでます》
「隠しステータスとか教えちゃって大丈夫ですか?」
さらっと口にした『隠しステータス』という言葉を教えてもらっていいのか疑問を覚え、ピクシーさんに聞く。
ピクシーさんはいい笑顔で言う。
《大丈夫です! もう『掲示板』では有名な話ですから! 基礎知識程度に覚えていればいいですよ》
「そうですか」
じゃあきっちり記憶しておきますね。
しかし何故か、言い終わってからのピクシーさんの顔が青いのですけど……「あれ、大丈夫です……よね?」とか小声で言ってますけど、本当に大丈夫ですよね?
《さ、さあ次です次! これらの『耐久値』の回復の仕方です!》
ピクシーさんは仕切り直すように言う。
ダメなんですね? 自分で探したほうが良かったんですね?
「耐久値の回復ですから、やっぱ鍛冶師が行うのですか?」
《惜しいです! それもありますけど、基本的には『損壊状態』の武器のみです!》
ピクシーさんは勢い良く説明をする。
いや、本当に大丈夫ですか? 気にしたら負けですって。
それにしても『耐久値回復』ですか……。
刀とかなら研磨とかですかね? ですけど木製の武器……いえ某ハンティングゲームと似ているとすると──
「『砥石』とか……?」
《正解です! 正解したショウくんには『天然砥石』20個と『荒砥石』『中砥石』『仕上げ砥石』をそれぞれ30個ほどプレゼントー! きちんと『item box』に送りましたからね》
「……包丁とおなじですか」
ちなみにこの『砥石セット』はきちんとチュートリアルを行えば入手できるらしいです。いやぁ、さすがβテスト。凄い景品ですねぇ。
尚、俺は『荒砥石』を持っています。現実で。
そんなチュートリアルも、ついに戦闘が始まる目前となりました。
《次は戦闘なんですが、これはは実際にやってもらったほうが良いと思いますので、その前に一つ『技』を決めておきましょう》
「『技』。ですか……?」
《はい。これは『戦闘』系スキル全部にある所謂『必殺技』の事を指します。
例えば『剣』系スキルは『スラッシュ』──これは『剣』系スキルならどの武器を使っていても習得できる『技』──『汎用系アーツ』ですね》
なんか考え方としては某デスゲームの剣技──ソード○キルみたいなものですか。
で、そこに『この系統の武器全般の使えるアーツ』ってのがあるという考え方ですかね。
《そして……『刀』スキルでしたら『一閃』とかですね。それが『武器専用アーツ』です。
『武器汎用アーツ』は習得に『SP』を絶対に使います。しかし『武器種アーツ』は武器スキルのレベルを1上げると1つだけ『SP』を使用せずにその武器専用スキルを習得することが出来ます》
「それじゃあ、レベルアップを待てずにアーツを習得する際は『SP』を使うんですね」
《はい。ショウさんの場合、『刀』がLv5になっているので、最初から『アーツ』を5つもタダで習得出来ますよ》
ピクシーさんは《量は多いですが、アーツの説明は習得しなくても見れます。習得してみてください》と言うと、俺の目の前に習得可能アーツがリストアップされた。
──────────
【習得可能アーツ】
《刀》
Lv1~
・『一閃』説明:敵を斬る。EP1%消費 Cool time 10s
・『鋭斬』説明:刀を鋭くする。EP1%消費Cool time 5s
Lv2~
・『居合斬り』説明:確率で『切断』付与 (確率は器用に依存)。EP3%消費Cool time 300s
・『受け流し』説明:相手の攻撃を受け流す。カウンターにも使える。EP1%消費Cool time 30s
Lv3~
・『鏡花』説明:カウンターアーツ。カウンター成功時敵にダメージ大。EP3%消費Cool time 60s
・『桜花』説明:フェイントアーツ。攻撃時に『分身』付与。EP3%消費Cool time 60s
Lv4~
・『春風之刀刃』説明:敵の懐に一瞬で入り斬る。EP6%消費Cool time 90s
・『涼風之刀刃』説明:風の如く鋭く斬る。EP4%消費Cool time 60s
Lv5~
・『秋風之刀刃』説明:鋭く斬る。命中時HP少量回復。EP5%消費Cool time 80s
・『雪風之刀刃』説明:敵を惑わし、連続で斬る。EP3%MP10消費Cool time 100s
──────────
多いです。迷わす気満々じゃないですか。
んー、でもカウンター系ですかね。好きなんですよねぇ。勿論、フェイント系もですけど……まあフェイント系はなさそうですが。
散々考えた結果、俺は『鏡花』『桜花』『一閃』『鋭斬』『居合斬り』を習得。いや、『刀刃』のアーツも魅力的ですけどね? あとで習得します。
そして、ピクシーさんの忠告によって、『短刀』『体術』のアーツも習得。
ついでに『歌』のアーツも習得してしまった。
そうしたら、《完全にソロでやる気ですね》と言われました。
いや、いいじゃないですか? そうになりそうですし。
《ちなみに職業が『刀使い』なので『刀』関連のアーツ習得に必要な『SP』が少し少なくなりますよ。
それでは、準備も終わりましたので戦闘に参りましょー! 先ずはスライム! RPGにいる敵としてはポピュラーな敵から……どうぞ!》
ピクシーさんがそう言うと、景色はスタート画面の平原から森の中へ。そして突然、スライムの集団様が現れた。
怖っ! スライムの集団怖っ! 一体一体は可愛いと思うけど集団は怖いです。
軽くトラウマ光景ですよ。
《さあ! はやく『一閃』しましょう!》
「……」
なんかピクシーさんはストレスが溜まっていますね。でも、ストレス発散にはちょうどいいかもしれないです。
俺は『木刀』をスライムに向ける。
「行きます──『一閃』!」
俺がそう言うと、体が勝手に動きだした。
……この感覚はいやですね。
《あ、『一閃』のアーツは起刃の向きから一直線に切るアーツです。コツを掴めば一瞬『溜め』をすると何もいわなくてもアーツが発動するらしいです》
それ、もっと早く言ってくださいよぉ~。それじゃあ、『一閃』は使えるアーツ! 大当たり! それじゃあ『鋭斬』と『一閃』で倒すしかないじゃないですか。
「『鋭斬』!」
すると、俺の視界の端に何かのアイコンが現れた。
《あ、『鋭斬』は『強化アーツ』と呼ばれるアーツでして、視界の端に現れたのは『鋭斬』のバフアイコンです》
「説明、ありがとう、ございます!」
俺はスライムの大群を斬りながら言う。
さすがにこの数はキツイです。
スライムは突進攻撃しかしてこないので対処は簡単。しかし数が、数が多いです。多すぎます!倒しても倒しても直ぐに新手が襲ってくるんですよ?
だから休憩ができないです。トラウマになりそうです。
「……『回し蹴り』」
俺はスライムが囲んできたので、《体術》アーツ──『回し蹴り』で蹴り飛ばした。
これも発動の態勢によって蹴り方が違うらしいです。
《おぉ~、スカッとしますねぇ。いいぞもっとやれ!》
「……」
ピクシーさんは相当ストレスが溜まっているようです。
運営さ~ん! ピクシーさんに休暇を与えてあげてくださ~い!
俺は心の中で運営──いや『WF』の皆様に訴える。本当に、いつか過労死しますよ! ブラック企業反対です!
……まあホワイト企業なんてないと言われればそれまでかもですが。
「『鋭斬』」
俺はもう一度『強化アーツ』を使って出陣。何も言わずに『一閃』出来るようになりました。
それにしても……なんか、木刀でスライム斬るってのも可笑しい絵だと思います。そもそも『木刀』で斬るというのも不思議ですけどね。
っていうか、まだ終わらないんですか? もう結構倒したと思うんですけど……。
~♪
なんか音が脳内に響いた。
それと同時に、襲いかかってきていたスライムも消えた。
俺は緊張の糸が切れ、疲労やら何やらがどっと来てしまい座りこんでしまった。
《あ、レベルアップおめでとうございます! それじゃあ戦闘終了です。お疲れ様で~す》
「はぁ……はぁ……すごく疲れました」
《そうですね。あれを初見クリアできたプレイヤーさんはまだショウさんしかいませんし……》
えぇ……俺はそんな高難易度のモンスターを狩らされていたんですか。そりゃあ、Lv1の俺にはキツイ訳ですよ。
《あ、ステータスを見てください。レベルが上がったことで、『BP』と『SP』が増えていると思います。それを使う使わないは個人の自由です》
それじゃあ、俺は全てのチュートリアルを終えたら使おう。
あ、『BP』は5入手したので、『力』に全振りしました。
《それじゃあ、先ほどのボーナス戦闘の結果発表~!》
さっきのは討伐大会だと、俺は思います。
《さて、ショウさんはスライム (経験値1/10)を1000体討伐しました! まあ、1000体討伐しないとレベルアップしませんからね》
……スライム (経験値1/10)って何ですか? だからあんな倒さなくちゃいけなかったんですか?
まあ弱かったですけど……一匹一匹は。数の暴力反対です。
《さっきのボーナス戦闘で見事に1000体のスライムを討伐したので、ショウさんには報酬が贈られます。この中からお好きな装備を決めてください》
すると、俺の前にウインドウがでてきた。
ウインドウには『討伐報酬一覧』と書かれていた。
おお、凄い量の報酬が用意されています。
「……この『万華刀』ってやつでお願いします」
俺は刀があったので、それを貰う。
でも、俺のステータスで持てますかね? 重そうです……。
《はい、討伐報酬は『万華刀』でよろしいですね?》
「はい」
《わかりました! 『万華刀』は『Item box』へ送りました!》
「ありがとうございます」
ピクシーさんは、いい笑顔で説明をしてくれた。心なしか、先ほどまでより生き生きしてる気が……相当、ストレス溜まっていたんですね……。
俺は武器を『木刀』から『万華刀』に切り替える。
あ、『予備武器1』とかありますね。これ何でしょう? 疑問符を浮かべていると、ピクシーさんは俺の顔を覗きこむように、俺と画面の間に割って入ってくる。
《あ、気づきました? その『予備武器』というのは3つまで予備に武器を登録しておける場所です。
ショウさんの場合は『木刀』と……あ、初心者装備の『短刀』どうぞ》
忘れられてましたか……いえ使いませんでしたが。
というか『短刀』も木製じゃないですか………。
「あの……これはただ運営の手抜──」
《それは言わないでくださいね?》
ピクシーさんに止められた。もの凄い圧力に襲われて無意識に頷いてしまいましたよ。
……でも、これで《短刀》アーツが使えるんですね。楽しみです。結構威力は高いらしいし、重宝しましょう。