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Various World Online  作者: 束白心吏
幕間 夏の始まりは波乱を孕む
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第八十話 我が家の人間はその時その時を楽しむ人でいっぱいです。俺もですが。

 車に揺られること三十分と少し。

 運よく信号に引っ掛からなかった俺達は、最短でお婆ちゃんの家に到着した。


「それじゃあ花月ちゃん。翔真くん」

「おう、匠兄さん! ここまでありがとう!」

「ん、助かった」


 翔真くん良い子ですねー。花月ちゃんもフランクですねぇ。


「おう、そこまで距離が近いが、気をつけてなー」


 秋原さん家の双子ちゃんと別れてから一分とかからずに、『藤原(ふじわら)』と書かれた門札の家──お婆ちゃんの家に到着した。

 ………おお、今年もやってますねぇ。


「お、来たか晶」

「お久しぶりです。洋士(ようじ)さん」


 自身の荷物を持って縁側に行くと、洗濯物を干している親戚のお兄さんに遭遇した。

 寝癖つけっぱなしのズボラな所とか………一年前とお変わりのないようで。


「お、晶。来てたのか」

「はい。今さっき到着したんですよ」


 俺は縁側に荷物と腰をおろし、我が家の夏の風物詩である喧騒を聞く。

 ふぅ………暑いですねぇ。


「洋士さん。手伝いますよ」

「お、本当か? じゃあ頼む」


 俺は立ち上がり洗濯かごに入っている洗濯物を干し始める。


「今年は何人来たんですか?」

「ほぼ全員だな。アイツらの妻やら子供やら夫やらを加えれば更に………」


 洋士さんの体が震えている。

 ええ、わかります。洗濯物の量からして恐ろしく感じましたが、まさかそれほどとは。


「昨日から皆来てるからなぁ………朝から洗濯機が大忙しだ」

「………これが後一週間も続くんですね」

「言うなよ………忘れてたってのに」


 いや、本当に大変ですね。

 洋士さんはこの家に住んでいますし、力仕事にも向きませんから、こういう事を任されるのも仕方ないと思うんですけどね。


「洋士ー! 俺達は行ってくるー!」

「おー、婆さんには伝えとくー」


 ちなみに洋士さんはまとめるのもうまい──所謂カリスマとかリーダーシップとか、そういう人を惹き付けるような魅力と指導者のようなものがある人です。それを存分に発揮しますよ。ゲームとかでも。

 ちなみに洋士さんの得意なゲームは戦略ゲーム──ストラテジーやウォーシミュレーション………まあ一番得意なのはFPSらしいですけどね。


「それで晶。お前『DF3』の今シーズンのレベルは?」

「50です」

「俺も同じくらいだな」


 ほー、あの洋士さんがシーズン始まって半年近く経つのに未だにレベル50程度………。

 ………マジで忙しいんですね。

 ちなみに『DF3』というのは『Dispute Fake Face Field』というFPSの略。世界的に有名なPCゲームであり、そのユーザー数は千万人以上一億人未満。

 ちなみに名前の重複が出来ないので、俺も『DF3』では『ショウ』ではなく『金剛』でやってます。

 ちなみに『金剛力士』からでなく『金剛石』からきてます。これ、洋士さんに言ったときは笑われましたっけね。

 ちなみにモバイル版もあるしPC版との連動は可能なので、俺は連動させているんですよね。まあPC版の操作が苦手………面倒だからなんですけど。

 それにモバイル版でも誤射がひどいからストレス発散で少しやるだけなんですよねー。


「今日の夜やらないか?」


 俺は洋士さんの言葉に、右に一歩引く。

 洋士さんも失言に気づいたのか、少し苦笑いをしている。


「すまん。言葉がたりなかった………今日の夜『DF3』やらないか?」

「やりますけど………俺、下手ですからね?」

「お前支援とか爆弾設置とか得意だろうが………」


 いえいえ、俺は銃苦手なんですよ?

 主に命中精度は滅茶苦茶低いですし。


「そもそもな、スコープ覗かずに米粒程度のアバター撃ち抜けるお前が下手なわけないだろ」

「洋士さんだってそれくらいの芸当は可能でしょうに」

「できるけどよぉ………」


 そういうことじゃあない。と不服そうな洋士さんは、空の洗濯かごを持って、室内に戻っていく。


「あ、婆ちゃんは茶室のほうにいるからな」

「わかりました。先に仏壇のほういきますね」


 俺は荷物を持ち、玄関から奥の部屋の仏壇に向かう。

 右手にはお供え物、左手には家で作ってきた料理。俺は左手の料理を居間に置き、お供え物と共に仏壇へ。

 仏壇には俺のおじいちゃんの写真ある。

 部屋の電気をつけ、仏壇の前に正座。線香の先端を燃し、線香立てにさす。

 そしてりんを鳴らして手を合わせ、帰ってきたことを報告する。

 俺はりんが鳴っている間は目を閉じていますね。

 終わったらお供え物の果物の詰め合わせを置いておく。おじいちゃん。果物全般が好きでしたから。

 ──さて、茶室に行きますか。

 俺は立ち上がり、茶室へと向かう。茶室は家の敷地内にあり、家とは通路で繋がっています。俺は茶室の障子をゆっくりと開ける。

 ………あれ? お婆ちゃんがいないですね。

 だけど綺麗になっているということは………掃除し終わったということですかね──!?

 突如、後ろから衝撃。

 そして口元にハンカチを当てられる。

 ………あ、これ、誘拐される時の──


 俺の意識があったのはここまで。

 犯人に心当たりはありますが………まあ悪いようにはされないでしょう。


■■~数分後~■■


「ううっ………もうお婿に行けないです………」

「大丈夫。私が貰うから」

「似合っとるよ。心配しなさんな」


 大丈夫じゃないですよ心配しますよ………。

 現在、俺は茶室………ではなく、お婆ちゃんの寝室にいます。

 何故か?

 それはお婆ちゃんの寝室と併設されている物置に様々な衣装があるからですよ。

 なお、今の俺のあられもない姿を見て、腰が更に曲がったお婆ちゃんは笑っています。

 ………うう、泣きたい。


「男がそう易々と泣くもんじゃないよ」

「………泣かした張本人さんには言われたくないです。それに今の格好で男のように振る舞えと………?」


 俺の返答に、お婆ちゃんは笑う。

 蕩音ちゃんは………俺にこれ着せてどこか行きましたよ。


「それにしても、まだまだ女装が似合うねぇ………」

「感慨深そうに言わないでください。気にしているんですよ?」


 お婆ちゃんはまた笑う。

 俺、本当に泣いていいですか? ある意味コンプレックスですよこの女装姿………。

 ──おや? 複数の足音………嫌な予感が………。


「お、今年も綺麗だねぇ」

「うん。とても着飾り甲斐があった」


 きょえあぁぁぁぁあああぁぁぁああ!? 一番見られたくない人に………写真とらないでください!?

 俺は洋士さんのスマートフォンのカメラ部分を指で塞ぐ。

 う、動きにくいです………。それを知っている洋士さんは一歩引いて連写開始。


「いやー、今年も可愛いね晶くん──あ、婆ちゃん。何枚撮るの?」

「ふっ………全身くまなく撮りな! 今年こそさっぽろ雪まつりで優勝するんだよ!」

「いえっさー!」


 ………く、屈辱………屈辱なり!

 なんでこんな姿で写真を何枚も撮られ──ひぃっ!?


「ちょ、洋士さん? どこまで撮るおつもりで………」

「無論、全部さ………」


 洋士さんはにこやかに、腹這いで俺に近付いてくる。

 え、笑みが怖いです………っと──あ。

 思わずの足元不注意で盛大にずっこけ、そこを狙っていたかのように撮られる。


「ふー、これくらいかな」

「見せてみな………よし、これで作ってきな!」

「いえっさー!」


 あ、ああああ………また黒歴史が一つ増えた………いとかなし。

 で、でも? これで終わりですよね? さ、さーて、俺は隣の部屋で………。

 ポンっと、肩を掴まれる。振り向けばそこにいるのは笑顔のお婆ちゃん………いえ、年を重ねるにつれ段々目は細くなっていたのですが、確実に笑ってるであろうとはわかるんですよ。


「ふふふ、まだ終わっちゃいないよ。明後日がなんの日か思い出してごらん!」


 今日………七月三十一………あ。


「朔日参り?」

「違うね………それは明日だよ」


 ………えー、なんでしょう? 男の俺が出る祭り?

 神輿は無理ですって──


「さ、蕩音」

「ん、アキにメイクするの………楽しみ」


 あ、やっぱりそうなんですね?

 蕩音ちゃんの表情が狩人のそれになってますし………。


「大丈夫。全てを私に委ねて………アキちゃん♪」


 いくら俺が女装してるからって『ちゃん』付けは止めてくれませんかねぇ………。とはいえこうなった蕩音ちゃんを、数年ほどあんまり動いていないもやしっ子でかつ移動が制限されている俺がどうにかできるわけもなく。

 俺は諦め、蕩音ちゃんに全てを委ねることにした。

作中で名前だけ登場したゲーム『DF3』の元ネタはPU○Gです。そこに色々ぶちこんで魔改造を施したただけです。なお最近のFPS事情は知りません!

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