第七十九話 女心? 乙女心? は難しい
東の京の駅から新幹線で数時間。
そして京の都から電車に揺られ数十分。
俺と花月ちゃんと翔真君は一人陰陽師のいる県に到着した………あ、奈良県です。
「………ふう。久しぶりですねぇ」
「ん。数年ぶり」
一息吐いての第一声がそれですか………んー、別にいいんじゃないですかね。
俺も久しぶりですけど………さすがに数年は無いというかできないんですよね。一年以上行かないと怒る子がいるもんで。
「おにぃ。違う女のこと考えるのメッ!」
「………俺、そこまで顔に出てました?」
というか何でわかったんですかねー。怖いから聞きませんけど。
「おにぃの事ならなんでも」
どや顔で威張る花月ちゃん………俺、どういう反応を返せばいいんですか? ヤホーの知〇袋に載ってますかね? まあ冗談はさておきです。
「花月ちゃん達も匠さんの車に乗っていくんですよね?」
「ん」
「当然!」
ですよね。まあ匠さんの負担が大きくなるだけってことで。どうせ近場ですし誤差ですよね。
雑談をしている内に、ポケットの中のスマホが振動する。宛人は匠さんですか。内容は………ふう。
俺は一度スマホの画面から目を離し、何度か眉間を解すようにマッサージして、再度読み返す。
………んー、内容は変わらないですね。見間違いでないとすると現実ですか。
「? おにぃ? どうし………ああ」
花月ちゃん。言い終わらずに悟らないでください。そしてその納得顔は何ですかね? 気のせいか肌寒いです………今、夏ですよね?
「あ、晶兄ちゃん!? な、何か悪寒が………」
翔真君が荷物を両手に抱えたまま器用に腕を擦っている。
ええ。わかります。わかりますとも。俺も嫌な予感しかしてませんもん。
「………匠さん。もう少しで着くらしいです」
「ん。わかった」
俺は駅内の購買で買った、飲みきったアップルティーのパックをゴミ箱に捨て、自分の荷物と花月ちゃんの荷物を少し持つ。
「別に晶兄は持たなくてもいいんだぜ?」
「いえいえ、俺は荷物が少ないから大丈夫ですよ」
俺の荷物は課題と数日分の着替えとスマホと財布。そして事前に作っていた差し入れのみ。
それに対して二人は受験勉強をするつもりなのか、色々と重たそうな本に着替えやお土産。
地味に辞書とかって重たいんですよね。外見通りとも言えますが。
「それに、体調崩したりしたらお祭り行けなくなりますよ?」
「遠慮なく手伝ってもらうぜ。晶兄」
それでいいんですよ。たまには頼ってくださいね? まあ力仕事なんて無理なんで主に家事方面で頼ってもらいたいですけど。
あ、またメール。どうやら着いたようで。
「さて、移動しましょうか」
俺は荷物をきちんと持ち直し歩き出す。
匠さんはいつも駅の隅に車を駐車する。
もはやどこに置いたかは明白なんですよね。
まあ車自体が地味なのでそういう決まりが勝手にできただけですけど。
案の定。駐車場の端に見知った車を発見。早速運転席の窓を軽く叩く。
「よう晶」
「お久しぶりです。匠さん」
本庄匠。それが匠さんの本名。
その名前の通り木工系の作業が得意で、それ以外のことも優れている親戚のお兄さん。
ただ外見は四十代過ぎたくらいのおじさんなんですよね。まあ黒く焼けていて雰囲気がそれっぽいからで、実年齢は三十六歳なのですが。
あれ? もう四捨五入すれば四十では………まあいいです。二十代の時からこんなのなんで、親戚が集まった時はよくからかわれていたんですよ。
「ところでメールにあった蕩音ちゃんは………」
「お前の後ろに………遅かったか」
え? 俺が声に出す前に、後ろから衝撃。ぐふ。
背中に柔らかい感触がして、かつ身動きが封じられました………何で抱きつかれているんですかね?
「久しぶりアキ」
「久しぶりです蕩音ちゃん」
抱きついてきたのは秋凪蕩音ちゃん。確か今年で高一でしたっけ? 一歳差なので高一の筈。
ちなみに蕩音ちゃんと俺は従兄弟で、匠さんは俺と蕩音ちゃんの叔父に当たります。
「おーい早く乗れー。晶の手料理を待つ奴らの為にも」
「あ、はーい」
ちょっと仰け反りながらも俺は荷物をトランクに置く。
うーん。半袖でくればよかったと後悔。翔真君の格好が羨ましいです。
それはそれとして………。
「あの蕩音ちゃん? 当たっているのですが」
「当ててるの♪」
そんな楽しそうに言わないでください………俺にだって欲はあるんですからね? それにそのワンピース薄くないですか? 本当に。
ミラー越しに見たものですが………似合ってますけどね。
「ん。止めろ雌豚め」
「煩い。チキンは黙ってて」
………あはは。俺は花月ちゃんと蕩音ちゃんの話なんてなーんにも聞いてませんから。そもそも、何で喧嘩しているんですかね?
『夢』……この漢字の部首を最近知った阿呆です。
夕部ですって。私ずっと草冠かと思ってました。




