第七十五話 Calamity keraunosu 十二の神々と最終戦闘
神々が顕れた。
それも十二神の全員が。
歓声が上がる。勝機が、勝利への活路が見えてきたのだ。盛り上がるのも当然ですね。
俺も再び『万華刀』と『連技の鋭刀』を構える──のですが、この二刀もそろそろヤバい。耐久値はもうほぼ無いのですが。
『ゲンテさん。少し時間ありますかね? 武器の研磨したいんですけど』
『………あるぞ。早くしろよ』
俺はパーティーチャットで許諾を得て、すぐに研磨に取りかかる。
すぐに終わらせ、イベントの終盤を見る。
『さあ! もう終わりにしましょう』
『ああ………どうやら言葉では解決できぬのだからな』
丁度会話が終わった所でした。
『終わったか?』
『はい』
なんか聞かなくても良かった気がします。
俺は二刀を構え、戦闘の準備をする。
しかし、何故かまだ終わっていなかった………マジの夫婦喧嘩は他所で──あ、はい。『WF』だから仕方ないですけどね。
そういうの、俺は大好物ですし。
『堕ちるところまで墜ちたか――ヘラ!』
『そちらこそ、他者に理想を押し付けないでいただいたいわ──ゼウス!』
ヘラ様が右手に持つ杖を振るう。
そして同時に、『緊急イベント:究啓のピタゴラス』と出た──あの、漢字が少々異なりますけど某有名作品の古代文明的な名前はどうなんでしょうか?
ちなみにイベント内容は単純に『パズルを解く』ですけど………俺の得意分野ですが嫌な予感しかしませんねぇ。
俺は早速『参加』のボタンを押す。
するとゼウスの鎧にスライディングブロックパズルが表れた。一枚一枚に数字が描かれてるところからして、15パズルとかですかね。
俺は『登録が受理されました』という文字を見て、パズルに特攻を仕掛けてみた。
まあ『WF』が、そう簡単に解かすはずもなく。片手は空いていないと動かせない仕様とは………鬼! 悪魔! ち○ろ! 鬼畜運営!
それにパズルは近づいてしか解けないらしいですよ? 武器で動かそうにも動かせないので『体術』スキルに感謝しながらパズルを解いていきますね。
ちなみに『体術』スキルは現在Lv5であり、新たに『流水』『虎速』というアーツを取得。
アーツ『流水』は発動から数秒間の間に受けた攻撃を受け流すアーツ。たぶんこれ『行雲流水』からきてますね………まあいいですけど。
そして『虎速』は一時的にAGIを三倍にする退避用アーツ。これはあれですよね。一時しのぎという意味の『姑息』という単語を『虎のような速さで退避し一時をしのぐ』という意味で『虎速』にしたんですよね。掛詞ですか? まあ予想でしかありませんが。
これで俺の戦闘方法は『二刀流』で攻撃。『体術』で回避というヒット&アウェイな戦闘方法になったんですけど、もう一時間と少しでゲーム自体終了という………。
俺はその鬱憤を晴らすように、パズルを解くことにした。理不尽ですか? なんとでも言ってください。
ちなみにこのパズル中にも攻撃は来ますし、結構難易度高──おや? アイギスさんからメッセージじゃないで………す………か…………。
俺はアイギスさんからのメッセージへの驚きのあまり、一瞬パズルを解きそして攻撃を避ける戦法を止めてしまった。
………いや、なんですかあの天国。なんで死んだプレイヤーさん達ピクチャーロジックパズルなんて面白そうなパズルしてるんですか? 俺もそっち行きたいんですけど。
──と、そこで何故か生存しているお三方から連絡が。
『『『死ぬなよ』』』
「いや、羨ましいですけど死にませんよ?」
さすがに俺を異常なパズル好きだと思ってませんか? まあ否定はできませんけど。
それに今は目の前のスライディングパズルを頑張ってるんですが? あ、アイギスさんにこのスライディングパズルの絵スクショして送ろう。
ちなみにメッセージ文章は『立場交換しません?』と、先ほど撮ったスライディングパズルのスクショ。
返信は数秒で来て、お断りされましたよ。まあそんな事出来ませんし………ね!
俺はゼウス様の鎧の上に出たパズルを解ききった。
何か特典──あー、はい。まあそうですよね。あの『WF』がそう簡単に報酬をくれるような方々ではないですよね。
俺の目の前には、新たなパズル──え? これは?
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……え、なんですこれ? そんな疑問に答えるように、俺の目の前に半透明のウインドウが開かれました。
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ルール説明
まずは第一ステージクリアおめでとう! 次は正確さが求められるパズルを用意したよ! 頑張ってクリアしてね
(『WF』運営一同より)
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泣きますよ!? というかルール説明してください!? 一人で解けと?
俺は問題を見る。
………ええ、これを一人で? 目前には大きな正方形。その中に白と黒の四角形があったりなかったり。たぶん3×3の白黒の正方形が散りばめられたパズルですが……取り敢えず攻撃。
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「あー、はい。理解です」
攻撃した地点とその上下左右の正方形の色が反転してました。これあれですね。何かやったことあります。名前は知りませんけど。
取り敢えずルールは理解しました。要は白なり黒なり四角形内の色を統一しろ、ってやつですね。
……これ、時間かかりますよ。
俺は『万華刀』も『連技の鋭刀』もしまい、セットスキルを《体術》《武舞》《無属性魔法》《縮地》《支援魔法》に変更。
そして《無属性魔法》『一点集中強化』と《支援魔法》『AGIサポート』を自身にかける。
『おいおいどうしたショウ。やはり自殺か?』
「いえいえ、違いますって!」
俺はもう一度真ん中右の正方形に攻撃して、初期の形に戻します。予想ではあと二手で全部白く出来ます。まずは下の真ん中ぁ!
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勝ちましたありがとうございました。
そんな訳で上の列真ん中の黒を――大きく回避。そういえば俺、戦っているんでしたね。
『おにい、自殺はメッ!』
「………俺、自殺志願したことないです」
いつも人生謳歌してるんで。
誰か言ってましたよね? 『人生楽しんだ者勝ち』って。故に俺は死ぬまで人生楽しみますよ? もちろん『VWO』も全力でやります。
それにしても、大きく跳びましたねぇ………『一点集中強化』と『AGIサポート』の相乗効果が恐ろしいのですが。
俺は再び思考の海に沈む。幸いにも色は先程までと変化なかったので予定通りに攻撃。全面白になったところで『clear!』の文字が浮かびました。次いで6×6のパズルが出来て――
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難易度上がり過ぎでしょう!? ちょっと厳し――!?
『ちょっとショウく~ん。自殺は駄目だよ~』
「ウザいギャル風は止めてください…………すいませんシロさん。何故俺は思案中にツッコミも考えないといけないんですかね?」
『それがキミの運命なのさ』
そうですか。運命なら仕方ないですね……って、よくないです。
俺は再び『一点集中強化』と『AGIサポート』を使い、今度は下から2列目、右から2番目のブロックを殴って退避。
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ところでクリアさせる気ありますかこれ? 何故攻撃避けながらアクロバティックにパズルを解いているんですかね?
少し『WF』が人外を育成しようとしているのではないかと心配になってきましたよ。AIの次は俺達人間ですか………ヤバいですね。
ちなみにですけど、現在俺は『素手』装備なので、ゼウス様に入るダメージは『一』です。一以上にも一未満にもならないんですよ。
なお、それでも俺にたまにタゲが移るのは何故なんですかね? あ、またか──って、突き!?
俺は横に避ける。
もうそれっぽいところ殴ったんでいいですかね? ……気が遠くなります。
……あ、そうだ。『一点集中強化』『AGIサポート』に加えて『虎速』も使いますか。もはやAGIがチート化しますね! はてさて俺の意識は追い付けるか……はっ! 俺は一体。
俺は前線から離脱し、深呼吸してから再び思案。俺の他にも似たような人いますね。個人プレーで草です。
……いや、迷いますねぇ。その迷いがまた楽しいんですけど。
ちなみに正方形は遠目ながら見えます。他のプレイヤーの攻撃は判定ないらしいですね。ちょっと安心。
じゃあ魔力が切れそうなので、一旦休憩しまーす。
いえね、視界端に映る簡易ステータス。そのHPバーの下にある青色のMPゲージか空っぽ……というか残り二割を下回っていたんですね。気づいたのでやることが増えましたね? 泣いていいですか? 権利はありますよね?
ついでに五割を下回ったEPを回復させていきます。
……今更ですけど、『瞑想』スキルとかないんですか? MP回復速度を高めてくれる奴。
いやまあ願望ですがね? あと『絶食』スキルとか便利そうです……休憩中もそんな事考えていたら頭が休まらないですよね。
あ、ツキちゃんの魔法でゼウス様ダウン。
俺は五割を上回ったMPで、『AGIサポート』。そして九割回復したEPを消費して『虎速』を発動。
一気にゼウス様に近づき、パズルを解く。
なお、叩くのではなく、つつくだけも大丈夫らしいです。
……労働力の削減が出来ますね。
『ショウ。そろそろ起き上がるぞ』
「了解です」
ダウン中に8……いえ7割は解けました。後は近づいて殴るだけなのですが……解けてる人はもう解き終えた様子。パズルの右上にクリア人数とか表示されてて草です。
『おにぃ! これの答え教えて!』
「あの、俺のやつ解いてからで良いですかねぇ!?」
『ん』
俺、重労働。もう働きたくなぁい。週休八日を希望しまーす。
まあ一週間は七日しかないですし、きちんと家事も行いますけど………家事も労働ですよ?
余分な思考はさておき、最後の一手の前に一旦退避。槍による悪魔的な全体攻撃が去ったので、最後の一手。
いや、ゼウス様にじゃないですよ? パズルの方ですよ? いらぬ誤解を生んですいません。
解くと同時にパズルは輝きを増していく。うわ眩しい。これがホントの光輝……!? とまあ冗談はさておき。光が収まると鎧がポリゴン片になり破裂しました。
今のゼウス様の姿は、石像でよく見るあの姿。
防御力低そうですねぇ……皆声もなく総攻撃開始です!
俺は武器を『万華刀』『連技の鋭刀』に切り替え、スキルも《刀》《二刀流》《縮地》《無属性魔法》《武舞》に変更。
そしてゼウス様にHPをちらりと見る。
五割は切ってますね。
俺は再び『四季折々の万華鏡』にチャレンジします。
まずは『春風之太刀』で大きく踏み込み『涼風之太刀』で右足の『切断』。
『グッ………!』
大きな音をたて、ゼウス様は倒れる。
しかし俺の連撃は終わりません。
次は『秋』ならば『狐花』……別名地獄花または捨て子花。それ以外にも様々な別名を持つあの花ですよね……枯れゆく曼珠沙華って。
それにしてもですが、何故に倒れている相手に幻覚を見せるんですかね? 追加効果の毒確定付与も最高です。
最後は冬。ならばもう『風華』しかないでしょね。舞え踊れ冬の静寂を連れて──なんちゃって。
そして視界端のHPゲージMPゲージの下に『四季折々の万華鏡』のバフのマーク。
ちなみに『華々の狂乱』も『再三再四』も発動中……HPを犠牲にどんどんステータス上昇中です。
「『百花繚乱』」
俺は最後の切り札。万華刀スキル『百花繚乱』を発動。
途端、俺の意識が加速していき、他のプレイヤーさんの一手一手が細かくわかるようになった。
……さて、始めましょうか。
俺はまず『鉄華』を発動。そこから『夜桜』『双華』『蓮華』……万華刀のアーツを繋げていく。
……時は満ちました。
俺は全ての万華刀アーツ……『朧華』『瓊花』『狐花』『氷花』『解語之花』『花紅柳緑』『花鳥月夕』『花鳥風月』『古樹生華』『槿花』『華胥』『蓮華』『風華』『鉄華』『双華』……最後の一つ、最高のアーツを残して。
これらを使いきったところで『百花繚乱』の効果は切れました。
ですが、まだゼウス様はダウン中。残りHPも数ドット分しかない。
俺は『万華刀』を片手で構え直す。
その万華刀も、何故か白い輝きが走っている気がします。
「『千変万化の誇り』」
──俺の体が、分身が勝手に動き始める。アーツ特有の感覚に支配されます。
アーツの影響か『連技の鋭刀』はいつの間にか鞘に納められ、俺俺の分身は両手で万華刀をしっかりと持ち、『千変万化の誇り』を開始した。
アーツ『千変万化の誇り』は特殊な条件を満たさないと発動出来ない特殊なアーツ。
その効果は『全ての万華刀アーツを鋭い一撃として放つ』というモノ。
言うなれば『全ての万華刀アーツをクールタイムを無視して使える』という破格の効果。
故にその『条件』を満たすのは難しいですし、出来たとしても、それはボス戦時のみ──まさに今のような戦闘じゃなければいかんのです。
その『条件』は『万華刀アーツを一回の戦闘で全て使う』。
この『条件』故に、中々一般的なモンスターとの戦闘では使う機会に恵まれないアーツ。
だけどその効果は最高。
この『千変万化の誇り』全ての万華刀アーツの効果を大幅に引き上げる効果も合わせもつ。
そしてこの『千変万化の誇り』は、『百花繚乱』の上位互換とも見てとれます。説明文通りに表現するなら『全ての万華刀アーツを鋭い一撃として放つ』アーツですからね。
その連撃数………後で誰か計算してください。
『グフッ、まさか我が………貴様らに負けるとは………な』
ゼウス様がどさっとその場に倒れる。
表示されているHPは………ゼロ。
俺達はゼウス様に勝ったのだった。
戦いおーわり!
2023/4/18 改稿
パズルは名前分からんので有識者様をお待ちしております。なお行間の影響で正しく正方形に見えないのは仕様です。




