第六十九話 Calamity keraunosu~神々の王と大斧使い~
ゲンテ視点です
俺は斧を装備して、相手の様子を伺う。
なにせ相手の情報は──攻撃の動作等については一切情報がない。
今からそんな敵を攻略していくのだ。ゲーマーとしてはスリルがあって楽しいっちゃあ楽しい話だが、攻略する一人のプレイヤーとしては、何とも鬼畜なことだと思う。
『さあ、我に続け! 異渡人よ!』
その言葉に、ほぼ全プレイヤーが武器を構え、魔法を使ったりアーツを使ったりして、突進する。
これは全方位からの攻撃だ。
俺は少し距離をとって様子を伺う。
『………煩わしいな』
そう言って、槍を地面に刺す。
すると地面に雷が走り、どんどんプレイヤーを飲み込んで大きく広がっていく。
『………消えろ』
そう言うと、雷光が膨張し、光に飲まれていた大半のプレイヤーが消えていた。
たぶん、死亡したのだろう。
俺は思考を切り替え、目の前の敵への警戒度を引き上げる。
『生きてるか?』
俺は『パーティー・チャット機能』でシロやショウやツキやアイギスと話す。
『俺は無事ですよ。ゲンテさん』
まず、ショウから返事がきた。
『私も無事だよ~』
『ん』
『我があんな矮小な技に殺られるとでも?』
全員、無事なようだ。
俺はそれを確認してチャットを閉じ、再度斧を構える。
「っかー、久しぶりな感覚だ」
俺はスリルを楽しむ若かりし頃のあの気持ちを思いだす。
あの頃は楽しかった。
『………ふん、どうやらまだ死んでいない者もいるのか。死に損ないめ』
ゼウスはそう言って、槍にエネルギーを溜める。
どんどんそのエネルギー量は増えていく。
『あれ、もしかしなくとも『雷霆』じゃないですかね………?』
ショウから、そんな通信が入る。
俺もそう思う。宇宙を焼き尽くした雷は、きっとアレと同様のものだと。
なんとなく、勘でわかる。初見殺しとは何度も戦ったからな。
『………燃え尽くせ『雷霆』』
無慈悲に俺達を倒す最強の敵の、最強クラスの攻撃が、今、俺目掛けて襲ってくる。
けどよ………俺だって、まだまだ現役なんだぜ?
俺はタイミングをはかる。
これから使うアーツはタイミングが重要なのだ。
「………【ジャストステップ】!」
俺はショウのような『連続回避からの反撃』という器用な技は出来ない。シロのような反射神経も判断力もなければ、ツキのような記憶力、アイギスのような勇猛さもない。
だから経験を生かすのだ。その経験がある故に、タイミングを計って行動することはできるのだ。
先ほどのアーツ【ジャストステップ】は『回避』スキルのアーツ。
使い勝手がいいスキルなのだが、習得条件がとても厳しく、習得しても使用者を選ぶアーツなのだ。情報を知っていても、習得していない奴の方が多い。
回避に成功して舞い上がりたい気持ちが溢れてきたが、直後の大きな破壊音によって、そんな気持ちは急速に失せていく。
咄嗟に後ろを見ると、数人いたプレイヤーはいない。
今、着実にプレイヤーが倒されていっているのだ。
「チッ、強すぎだろう? これは………」
俺は冷や汗をかいた気分になる。
もしもあの一撃を受けていたら、今、俺はこの世界で死んでいたかもしれないのだから。
『………まだ生きているか。しぶといぞ。人間』
生憎、そのしぶとさのみで生き残ってきたのが人間なんでね………と、言ってやりたかったが、俺にそんな時間は無かった。
ゼウスが槍を構えて突進してきたのだ。
『これで死ね。人間』
はは、ここで倒れられりゃ、どんだけ楽か………大人の俺が、内心で囁いた。
面白ぇ、いいじゃん。絶対に生き延びてやる………少年である頃の俺が囁いた。
………そうだな。今の俺は『社会人』としてではない。『プレイヤー』として、このゲームをやっているんだな。
「【ジャストステップ】!」
俺は横に避ける。
ゼウスの必殺の一撃を回避することが出来た。
「さあ、まだまだ始まったばかりだぜ? ゼウスさんよぉ」
俺は鼓舞するよう呟き、大斧を構えなおした。
人のふり見て我がふり直せ…それができたら諺になってなかったと思います。
昔の人って達観してますよね。異常に。




