第五十八話 ラストイベント『災禍雷霆』
俺はツキちゃんに何度も謝り、何とかイベント開始数秒前に許しを得ました。
なお恋人座りとやらをやらされておりますが……あすなろ抱きのが伝わりやすいですかね。それよりツキちゃん軽すぎません? 先ほども思いましたけど。
『Ladies and gentleman boy and girls! ハロー皆さんお元気ですかー?』
うわぁ………やっぱ大歓声。
俺は屋根の上にいるんですよ? それでもこの音量って………。
「………おにぃ、先の事許す。本当にありがと」
「………はい」
俺とツキちゃんは屋根上で良かったと安堵と呆れの溜め息つき、大先生のお言葉を待つ。
『今日は『βテスト』の最終日! そして数日後である八月一日からは『VWO正式サービス』スタート! ってな訳で、皆さんにラストプレゼント!』
大先生はパチンッと、指を鳴らす。
すると、先生の後ろに雷を纏った人が出てきた。
威圧感が凄いですねぇ。てか黒。オ○タですか?
『最後は最高神! ゼウス様! 皆で倒そうぜい!』
そう軽いノリでピクシーさんが言うと、俺の目の前に『Last Quest : 災禍雷霆』と出た。
Oh………最後の最後でそんなイベントを行うとは………これは『WF』の差し金ですね?
「………おにぃ?」
「………ツキちゃん。このイベント──久々の負け確イベントですよ」
「あー………」
これは少し神話に詳しい人ならわかると思うんですけど、ゼウスには弱点らしい弱点がないんですよねぇ。唯一の弱点は………女性です。
それは神話上で様々な形で語られている。
「雷を纏った巨人──ゼウスは様々な武器を持っていると聞きますし、ギリシャ神話最強の神様なんですよ。まあ今は俺達くらいの大きさですけど」
ゼウスは万能の神様。天候を操り、姿を変えられる。
武具も『光輝』と呼ばれる最強の防具。武器には鍛冶神キュクロプスが造った『雷霆』と、その強さは計り知れない。
ほぼ倒すことが不可能と言っても過言では無いのが、天空神ゼウス。そしてそれをやってのけるのが、『WF』という無茶苦茶な運営。
「たぶん弱点は『美人に弱い』ことくらい。戦闘なんて出来ませんよ」
「…………楽しそうなの、気のせい?」
ゼウス神が人間を滅ぼす描写も、神話にはありますから、確かにラストイベントの最後の敵には向いているんですけど………というか適役じゃないですか? ヤバいちょっと寒かった。
あとツキちゃん。俺は『WF』の描いたシナリオ的なモノを滅茶苦茶にしたいだけでありまして、決して戦闘に狂ってるとかじゃないですからね?
「………まあのんびr──」
瞬間。俺達は光に飲み込まれた。




