第四十四話 負けてもただでは起きない
二回目ー
『──さて! 熱戦に続く熱戦で盛り上がってきたね! 次の対戦はショウvsコータ! じゃあ準備を始めてね? 戦闘開始は一分後!』
俺は戦場内に入って準備運動を始める。ラヂオ体操ですねぇ──まあ必要ないんですけどね。気分の問題ですよ。モチベーション大事。
ちなみにこの闘技場、不思議なことに毎回戦場が変わる仕様なんですね。今回は『雑木林ステージ』。
その名前の通り、森林である。田舎産まれ田舎育ちの俺には嬉しい場所ですね。レベリングも懐かしさから森に行っていたくらいですので。
俺は少し走ったりして、体をほぐす。
まあこれも意味無いですけど。仮想現実ですし。
『一分経ったよ! ステージ説明は戦闘中に行うよ? それでは決闘開始!』
ステージ上空で《Battle Start!》の文字と小さく花火が上がる。それと共に俺は雑木林に一直線に入る。
そして『隠密』スキルを十全に生かして、影に隠れながら進む。
ちなみにステージの大きさも毎回違うらしく、今回は広大らしい。
「おい! 隠れないで出てこいよ! 怖気付いたか?」
大声が聞こえる。
結構遠いような………何十メートルくらいですかね?
俺は慎重に『隠密』行動しながら相手に近づいていく。数分歩き進むと、ついに人影が見えた。
対戦相手のコータさんだ。
彼は雑木林の奥にある開けた場所のど真ん中に立っている。
うわぁ男らしい。装備も鎧に大剣で、一応拳も使うんですかね? ガントレットも装備している。
集団戦で壁役もしてそうな………体力も多そうですねぇ。まあ『騎士』という表現が適当ですかね?
俺は後ろに回り込み抜刀。奇襲をかける。
徐々に徐々に、コータさんとの距離が縮んでいく。
──初手は譲らせてもらいますよ。
そう内心呟いて、俺は無言で《一閃・即撃》を放つ。
真横への迷いのない一筋の線。この《一閃・即撃》の欠点は外した時の硬直にありますから、今のような場面において使われるのが適切なアーツなんですよ。
ちなみに硬直は五秒程度。地味に長いんです。
弾かれても硬直しますが、硬直時間は短いですね。
まあ対人戦ですから、念には念を入れます。《絶斬》を使用。
俺にだけ見える《切断》スキルの誘導線にそって斬る。
この《絶斬》と《一閃・即撃》と《切断》のコンボはついさっき開発しました。
コータさんも首が無防備です。
上手くいけば勝負は決まる。
──ま、実際そんな上手くはいきませんよね。
俺はコータさんの首を斬りきれなかった。
最後の最後で刀身が止まったのだ。
「おお、そこにいたのか! 気づかなかったな!」
俺は距離を取る。
大剣と刀なら大剣の方が長い。
物にもよるけど、今回はコータさんの大剣の方が長い。
「すいません。後少しで倒せると思ったのですが………」
「かはははは! 俺はまだまだ余裕──おっとそれはヤバい」
いつでもアーツを使えるようにしながら突進。コータさんも急いで大剣を構える。
「──」
上から振りかざしてくる大剣を避けて、コータさんを──。
「《兜割り》!」
急いで横回避した。運良く《武舞》スキルが発動した『JUST回避時攻撃力上昇』が出た。
大剣専用アーツ《兜割り》はフェイント攻撃。いえ、目眩ましですか。
先ほどの技は見たことあるから回避出来ましたが………大剣のアーツを全部知っているわけじゃない。
どうであれ、早く倒すのは吉。『攻撃力上昇』の間に俺は近くの石ころを投げよ──
「遅い!」
突進してきた。
しかし大剣が光を帯びている事から何かしら《アーツ》を使っているのが分かる。
たぶん強化アーツだと思いますけど………はてさて。
振り回される大剣の攻撃範囲から逃れながら考える。
しかしコータさんは考えさせる暇を与えないように、無茶苦茶に、予想しづらいように大剣を振り回しながらこちらへ向かってくる。
森の木々などお構い無しと言うかのように俺に近づいてくる。
仕方ないので、一か八かのカウンターを試みる。
コータさんが近づくのを待つ。
「なんだ? 諦めたのか?」
「いいえ? 覚悟を決めただけです」
構えを取り、俺は《桜花》を発動。
ニヤリと口角をつりあげるコータさんをよそに、俺は《桜花》の瞬間移動の間に、二撃目を《鏡花》でカウンター。
想定通り、コータさんは俺に何度も剣撃を浴びせてきてくれた。それを狙った《鏡花》も成功。
余談ですが《鏡花》にはカウンター時に攻撃力を2倍に引き上げる効果もあります。
これが勝負の決定打となった。
『はい! 勝者はショウ! さすがだねー!』
勝者が決したのを宣言されると、森林フィールドは何の道具もないコロッセオみたいな空間になった。
「いい勝負だったよ」
コータさんが俺に話掛けてくる。
「ありがとうございます。強いんですね」
「お前には言われたくないわ……それで」
あれ? なんかコータさんの視線が怪しい。
そういえばコータって名前も……………………………………あ。
「その装備! 一体何れだけの性能を誇っているんだい!? 私は圧倒されてしまったよ! その装備の神々しさに!」
もしかしてコータって『妄執のやりこみコータ』?
確か実況者も行っていて『WF』ではやりこみ要素が多いゲームを重点的に行うプレイヤーさんだったはずなのですが………。
そういえば噂で『コータは装備フェチ』とか流れていたような…………。
俺はすぐに逃走をはかった。
コータ………安直だよね。コレクターからレクを取ってタとーを入れかえただけ…ちなみにレクを抜いたのはレクリエーションのレクと掛けてたからです。
レク………娯楽を指す言葉の略称だから、遊びではなく本気で収集する。安直だね。




