第三十五話 人は矛盾を抱えているものです
「~♪」
曲を聴き、それに合わせて歌う俺。
某歌い手様の声に癒される今宵の祭り。
一言ではっきり言わせてもらいます。
──最高です。
「………ったく、歌いながらよく出来るな。こんな中で」
「ゲンテさん。逆です」
「逆?」
呆れた様子のゲンテさん。しっかし違うんです。
そう、俺の個人的な偏見というかおかしな思考から出た答えを!
「歌わないと周りの反応が気になるんですよ!」
「いや、それこそ逆じゃね? 普通、聴かれて恥ずかしくなるだろ?」
俺の答えに、呆れを通りこして唖然としながらもツッコミをいれてくるゲンテさん。
流石『WF』のツッコミ役。ナイスです。
「いえ、別に歌を聴かれても気にしないので」
「少しは気にしろ」
別に減るもんはありませんし………俺は適当にツッコミを流しながら、屋台の準備を完全に終わらせる。
さて、準備完了。
どんとこいです! プレイヤー!
俺は共同屋台から個人屋台に移動して、完全な準備を終わらせた。
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「すみませ~ん! 焼きそば一つ!」
「毎度ー!」
「すみません。浴衣を借りたいのですが………」
「ああ、ちょっとお待ちください」
「かき氷一つ!」
「おう! ちょっと待ってな」
何ででしょう。
こんなに忙しいのは、何ででしょう。
俺は個人で『浴衣レンタル』を。
ゲンテさんは『かき氷』を。
共同で『焼きそば』を。
一体、どうしてこうなったんですかねぇ?
「はぁ、はぁ、ゲンテさん。お疲れです」
「………ああ、お疲れさん」
肩で息をしながら (VRなのでそんな概念はないですけど)、俺とゲンテさんは労いあう。
現在屋台は一時的に客足が減ったので、少しの休憩タイムに入りました。
「………まさか、口コミって………」
「……ああ、まったく恐ろしいぜ………」
休憩中の俺達は、少しネットに恐怖心を抱きました。
俺、このイベント終わったら、Twi●terアカウント消すんです………。
「おい、燃え尽きるな」
「ハッ! すいません。少しボケーっとしてました」
「まあ気持ちは分かるがな」
休憩して、自分たちの食べ物食べて、浴衣着て。
存分に楽しめている気がする。
「………ゲンテさん。休憩がてら『アレ』見ません?」
「………いいぜ」
俺は『メニュー』から『イベント』を押し、『口コミ』と書かれた場所を開く。
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運営
どうも、運営の『worry free』です。
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「いや待て閉じるな」
「…………ゲンテさん。読み上げ、お願いします」
もう無理です。
だって『worry free 』のイベントですよ? 過去に『神々への挑戦』とか言って負けた時のペナルティが恐ろしいイベントを開発した『WF』ですよ? もうこの数日、悪い予感しかしないですよ………。
「………いいか?読むぞ?」
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No.570
あの焼きそばの屋台、メッチャ美味いんだけど
ゲンテ:★★★
ゲンテ&???:★★★
No.571
>>570あの『ゲンテ』と『浴衣』の二人の? 星三つって………
No.572
ゲンテのところの食ってきた! 焼きそばもかき氷も最高だった! それに浴衣のレンタルも………
ゲンテ:★★★
ゲンテ&???:★★★
???:★★★
No.573
ところであの『浴衣レンタル』って店主の名前が見えないんだけど
???:★★★
No.574
おいおい、そんな訳ないだろぉ
俺もゲンテの旦那の屋台は行ったぜ。浴衣に興味はない。かき氷うめえ。
ゲンテ:★★★
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「っとまあ、この後からお前の事がびっしりと書いてあるし、『二つ名』ついたけど………聞くか?」
「…………もう、良いです」
そうか、俺のお面の『認識阻害』ですか。
後で外しましょ。
「ちょっと装備外しますね」
「………装備変更か?」
「いえ、お面外しです」
お面のせいで俺の名前が結果発表の時に出るのはいやですからねぇ。
「………さて、後半戦、頑張りますか」
「おう」
俺とゲンテさんは、戦場にいくかのような雰囲気を漂わせながら、屋台へと戻っていく。
自己矛盾ってヤツ。誰でも抱えてるよね………抱えてるよね? ちょっと不安になってきた。




