第三十一話 イベント準備
一旦宿屋に入ってログアウトした俺は、洗濯物をいれて綺麗にたたんでタンスの中にしまうなどの家事作業を行い、水分補給やトイレを済ませてから、再び『VWO』の世界に入る。
いや、入ろうとしたんですよ。
──トントン
自分の部屋に入る直前にドアを叩かれる音がした。
誰でしょう? まだ回覧板はこない時期ですし………と言っても、呼び鈴鳴らさない時点でお隣さんとはわかりますがね?
俺は解錠してドアを開ける。
そこには息を切らして、見るからに忙しそうな女性であり、お隣の兄妹を一人で育てている偉大なる親御さんである明子さんがいた。
「お久しぶりです」
「晶くん。お久しぶりね」
そう言いながら、鞄の中の何かを探す明子さん。
ああ、来月分のですか。
「別に翔真と花月に渡してもいいんですよ?」
「そう? でも、あの子達は忙しそうだからねぇ………」
あー、そうですか。ちょうど忙しい時期で声もかけずらいんですね。
ですけどそうでなくても俺に渡してるのは気のせいじゃないですよね?
「あ、翔真くんと花月ちゃんのお小遣いはどれくらいでいいですか?」
「それくらい、私があげるわよ。これは生活費だから」
これ、一月の生活費にしては多すぎて………いえ、茶目っ気たっぷりに『余ったら晶くんの好きに使っていいわ』って毎回の事なんで諦めましたが………来月に回してもいいんですよ? あんまり物買いませんし。
「仕事も大事かもしれませんが、家族との時間も大切にしてあげてくださいね」
「………わかっているわ。これからも時間があれば来るつもりだから」
「はい。その時は構って上げてください」
その後、そう言えば時間大丈夫? と思い明子さんに告げると、急いで下に停めてあった車に乗って行った。
とりあえずお隣さんのお家へ。何で秋原家の合鍵もっているのですかね? 俺が。
俺は『五時に入江家集合』と、秋原家のリビング机に置き手紙を置いておく。
後は我が家に来てから言えばいいですよね。
やることも終わったので、少しストレッチをしてから、俺は自分の部屋に戻って『VWO』を起動──
──しようとした。
また、ドアをノックされた。
次は誰ですか? まさか………回覧板?
ドアを開けると、そこには花月ちゃんがいた。
危ない。一瞬ピンポンダッシュかと思ってしまった………あ、これ失礼にあたりますね。
「どうかしました? 花月ちゃん」
「………おにぃ、一緒に『VWO』やらない?」
………これ、生産の時間ありますかねぇ?
ヘッドセットを抱き抱えた花月を見ながら、俺はそんな思考をしていた。
■■■■
約一時間が経過した。
現在、俺はツキちゃん (花月ちゃんのプレイヤーネーム)と一緒に『裁縫』中です。
ちなみにツキちゃんもスキルは自動………あの良くわからんロシアンルーレットもどきで決めたらしいです。そのスキル構成は完全に魔術師タイプ。特に『水属性』と『風属性』はレベル5スタートというチートさよ………人のこと言えない気もしますが。
生産面でもツキちゃんは強かった。ありがたい事に初期から『裁縫』持ち。
ただしSTRは本当に少なく『BP』はSTRに大半がいったらしい。ステータスの構成はバランス型。まあ色々試すのには向いてますからねぇ。バランス型は。
また例のボーナスタイムもやったらしく『極彩杖』というユニーク武器を入手していた。
後でツキちゃんにも防具を贈りましょう。
今回は大量に作れそうですし。
「………ん~、まあこれくらいですかね?」
「いっぱい………」
ゲーム内時間で朝九時。俺の『アイテムボックス』は浴衣でいっぱいになっていた。
勿論、これをメインで行くので、結構儲かりそうですねねぇ。
「それじゃあ、そろそろログアウトして夕飯、食べますか」
「ん。夕飯楽しみ」
………そこまで期待しないでください?
俺は『VWO』の世界からログアウトした。




