第三話 下準備は終わり。月曜日は敵
「ふぅ~。やっと終わりました………」
シロさんとVRチャットをしたその日の夜10時頃。
最低限の自主学習や家事等、今日やらなければいけない事を全てやり終え、風呂に入り、明日の支度を終えた現在、俺は自分の部屋のベッドに横になっていた。
今日はいつもより疲れました。
昼間にテンション上げすぎましたかね?
………はあ、凄く眠いです。
今日はもう寝──られないですねそうでした。アバターのメイキングをしないとですね。
俺は机の上に置いてあったヘッドセットを持ってきて、頭に被る。
これヘルメットになりそうですね………さすがにやりませんけどね? 精密機械ですし。そんなことしたら確実に壊れますよ。
ベッドで横になって、電源をいれる。
事前に『VWO』のダウンロードは終えているのですぐできるんですよね………さて、どんな世界なのでしょうか? 凄く楽しみです。
気がつけば、俺は草原に立っていました。
澄みきった青空に深緑の芝生………いいですねぇ。寝転がりたい。
「………ここは」
──ようこそ! 『Various World Online』の世界へ!
目の前に、透き通った長方形の窓が表れ、そこに文字が写し出される。
凄いです。いや、VRだからできる事ですか。
──ここでは、アバター登録、チュートリアル等、様々な事に使われる空間です。
そう文字が更新され、文字の下には『アバター登録』という文字がある。
試しに『アバター登録』の文字をタップしてみると、景色が変わった。
例えるなら──実験室? まあ行ったことないので分かりませんが、真っ白な部屋です。
部屋の真ん中には、俺がチャットの為に使っていたアバターが。
──ここでは、貴方が『VWO』の世界で使われるアバターのメイキングができます。
その文字の下には『手動メイキング開始』と『自動メイキング開始』、『登録済みのアバターを使う』の三択があらわれる。
俺は眠いので、ろくに説明も見ずに『登録済みのアバターを使う』を選択。
その後『決定した後、変更する事はできません。よろしいですか? yes/no』等の最終確認的なものがありましたけど、全てyesを押してしまう。
数秒後『完了しました。ログインしますか?』という問にnoを押してログアウト。
もう寝ます。お休みなさい………。
■■■■
朝五時頃。
俺は『美に入り○を穿つ』のハイライトに心地良い微睡みから叩き起こされ、渋々朝食と弁当を作りはじめる。もちろん洗濯も。
ほぼ一人暮らし状態なので、家事全般を自分でやらなければいけないというのは慣れないと結構大変な事でした。
ですから風呂場洗いは二日に一度でもいいですよね? まあ今は慣れてきたので毎日洗ってもいいのですが……ちょっとした名残です。
家事をしていれば時間はどんどん進んでいき、時計はいつの間にか七時を指していた。
「ああ、もうそんな時間ですか」
俺は朝の家事を済ませ学校の制服に着替え、一応鞄の中をチェック。
忘れ物は何もないので、あとはいつもの登校時間に家を出るだけ──
「ふぁああ……」
少しでも休んだら寝てしまいそうなので、今日は少し早く登校する事にしましょう。
■■■■
「おはよう真茅くん。今日は早い登校だね」
自分のクラスの自分の席に着くと、隣の席の白峰凜花さんが話しかけてきてくださる。
会話がそこまで得意とは言えない俺ですけど、話を聞くのは好きなんで、良く喋るほうではあるんですよ。だから知り合いは多いほうだと思ってます。井戸端会議の奥様とか。
白峰さんはクラスの中でも結構人気な存在である。
コミュニケーション能力も高く、誰とでも仲良くなれるような人。
そして何より容姿ですね。艶のある黒髪にショートボブが似合うこと似合うこと。
出るとこも出てるので、男子からの人気が凄いとか。
そして俺のようなヲタクにも話しかけてくれる大天使様なんですよ。
「おはようございます白峰さん。今日は早く起きたので早く来ちゃいました」
俺も挨拶を返す。
確かに、いつもならもう少し遅い時間の登校をしている。しかし昨日はあまり眠れていなかったので、そして今朝も眠い中で欠伸を噛み殺しながら白峰さんと会話をする。これ死罪になりませんよね? 白峰さんファンクラブとかあったらヤバいかもですね。
「………」
いつの間にか会話は終了。
何度でも言いますが俺はあまりコミュニケーションとるのが得意ではないです。だけど仲良くなるのと話を聞くのは得意なんですよ。不思議ですねぇ。
まあ、趣味の話となれば別ですけどね。
そして俺のいつもの登校時間になると、一人の男子生徒が机に鞄を置いて俺の方へ近づいてくる。
「おはよう晶。今日は早いな」
俺の数少ない友人である吉田浩平くんが来ました。
浩平くんは俺の前の席の人の椅子に座る。
「おはようございます。浩平くん。その言葉、白峰さんにも言われましたよ」
「え! マジで!? もしかして、思考が似t──」
「それは違うと思います」
浩平くんとは高校に入ってからできた友人で、去年から同じクラスでした。俺にとって唯一のクラスメイトの男友達でもあります。
このクラスは商業科の人しかいないので、コミュ力高い人は多いんですよねぇ…………そこそこ俺のような人もいますけど。
最初は知り合いがいないから少し落ち込んでいたくらいですし。
それに浩平くんがいてくれないと男友達がいなくなるので、浩平くんは本当にありがたい存在です。
「ったく。冗談だってわかっていてもそこは同意しようぜ?」
「いやぁ………あはは」
俺は何時も、会話が続かない。この会話中も内心では
「(誰か、こういう時の返答のしかたを教えて頂けませんでしょうか………)」
などと考えているくらいには会話が続かない。
やっぱ会話は難しいですね。
──キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪
「お、もうそんな時間か。じゃあな」
「あ、はい」
浩平が席に戻って行く。
眠気と戦いながら俺の一日は始まった。
とりあえず月曜日は敵。そして火曜日も敵。水曜日も(ry
ちなみに彼の目覚ましの音楽は寝る前の気分で変わるらしいです。