第二十七話 やはり彼も『WF』ユーザーなのだ
午後2時過ぎ、俺は洗濯物を取り入れ等のやらなくてはいけない家事を終わらせて、『VWO』の世界にログインした。今日は夕飯の支度まで終わらせたので、遊び尽くしますよー!
──と意気込んだのはいいのですが………はい。外の凄い騒ぎが俺の借りてる部屋まで聞こえてきてまして出たくないです。はい。
まあイベントの情報の開示もありますからねぇ………何故に広場近くの宿に泊まったのやら………外、出られますかね?
イベントスタートの日でもあるから、広場の皆お祭り騒ぎなんでしょうけど………うーん。これ集合場所行けますかね? 割りとマジで。
物は試しと、俺はさっさと宿を出て集合場所である広場に向かう。
まあ徒歩数十秒くらいの場所なんですけどねー。普段は。
さぁて、シロさんは──
「ショウ」
「こんにちは、シロさん」
シロさんは背後から現れた。少しビビったり。
もしかしたらシロさんもさっき来たばっかなんですかね?
あ、そもそも『フレンド一覧』を見ればすぐに分かったのでは? 盲点。
「ショウ、『例のアレ』は?」
「いや、普通に『浴衣』って言いましょうよ………」
いやまあ楽しみにしている気持ちは分かりますから。
とりあえず落ち着きましょう? シロさん。
俺は『アイテムボックス』からシロさんに『浴衣装備一式』とまとめてあるアイテムセットを渡す。
これでシロさんにも浴衣が渡りました。二人目の浴衣キャラなるか………いえなって下さい。実戦向きに作ったので。
ついでにお守りと武器も入っています。
浴衣は希望通りに藤色の浴衣。藤は藤でも白藤色という薄い紫色ですね。
ついでに桜の花の模様入り。紫陽花と迷ったんですけどね。
「説明いります?」
シロさんは頷く。
ふふふふ………その好奇心を一ミリも隠そうとしない所、やはり仲間ですね! ええ、これで驚いてもらえれば更に作りがいを感じられるわけですね。
「まず、この『浴衣』に名前をつけてあげて下さい」
「………え? 名前ないの?」
シロさんは困惑する。
………いや、仕方がないでしょう? コミュ力、語彙力両方を持ち合わせていない人間なんで。
「この『浴衣』はちょっと特殊で………『名付け』したプレイヤーしか着れないんですよねぇ。
んじゃ、まず『浴衣』の概要からですが、『女性プレイヤー装備時全ステータス上昇 (大)』『男性プレイヤー装備時全ステータス減少 (大)』と『全攻撃・状態異常耐久上昇 (小)』『体力上昇 (小)』『魅了 (小)』があります。
特殊スキルとして『思白藤』というスキルがあります。これは『最後に使われた防御系技能または回復系技能を一度だけなんの消費もなし使う』特殊スキルです。まあ再使用までの時間は長いのでご利用は計画的にどうぞ。
欠点ですが『運減少 (小)』。扱いにくいという点では『耐久比例強化』がありますね。また『レベルアップ時ステータス強化』というその『浴衣』自体がシロさんと共に強化されていくスキルもあります」
一通り説明を終えた俺は、ふぅと一息つく。
いやぁ、疲れました。
「あれ? シロさん? どうかしました?」
「…………ねえショウ」
「? 何ですか」
シロさんの顔色がおかしい。
どうしたのでしょう? もしかして性能がイマイチでしたか?
「これ──普通に凄い装備ね……」
「ありがとうございます。それではこの『浴衣』に名前を──」
俺は内心ほっとしながら説明を続けようか迷う。
………人が集まって来てるんですよね。
俺がここで説明を続けるか、それともどこか違う場所で説明するかを考えていると、シロさんが話しかけてきた。
「ショウ、キミの『浴衣』は名前があるのかい?」
「? ありませんよ?」
だって名前付けなくても着れますし──あ、これ嫌な予感。
「それじゃあ一緒に考えよ?」
「……………はい」
俺の浴衣は新調され、茜色の鮮やかな色合いが個人的に好みな代物で『全ステータス強化(中)』と『状態異常耐久上昇 (小)』、『体力上昇 (小)』『防御力上昇 (小)』。
そして特殊スキルに『緋紅』という全ステータス強化 (中)をするものがある。
また俺とシロさん共通で『名付け親』専用のスキルがあるのですが、これは魔力で耐久力を回復できる優れものだったり。使用条件は『名前を付けること』。これすると装備者が限定されるので色々便利なんですけど、名前をつけるのは………うーん。
それとダメージ数割をHP・MPに変えられるスキルもあります。
「……まあ、『紅玉衣』でいいですかね」
俺は気楽に名前を決めた。
この『浴衣』自体もそこまで目的があって作ったものではないですし、なんか頭に浮かんできたのでこれに。
一方シロさんはまだまだ唸っている。
「………でも、『桜花』はいれたいなぁ…………」
俺は無言で見守る。
いやぁ、白峰さんの考えている姿も可愛いなぁ。と、思いまして。
まあ俺が白峰さんと釣り合うような人間ではないので、それはさておきです。
まだまだ説明していない武器と御守りがあるんですけど………。
シロさんの集中の邪魔も出来ないので、考えつくまでアイテム整理でもしてますね。
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数分後
「ショウ、ごめん。結構時間かかっちゃったね」
「いえいえ、大丈夫ですよ。
それと武器とかの説明………入ります?」
俺は送ったアイテムから『武器』と『御守り』を出すように求める。
シロは出現した途端に驚きを露にしていた。
「………説明お願い」
「了解です。
まず武器ですが………」
俺は自分の『アイテムボックス』から、シロと同じ『短剣』を取り出す。
「これは『ソードブレイカー』と呼ばれる武器です。対人特化の武器ですね。利き手とは逆の手で持つのが一般です。
一応武器持ちのモンスターにも効果ありなのでご安心を。
使い方ですが、形状から察する事ができる通り凹凸に引っかけてそこで武器を折ります。
また、先端の尖っている部分は相手に刺すための場所です。攻撃力に保証は出来ませんので、そこまで期待しないでくださいね」
「………うん。わかった」
「続いて『御守り』ですが、シロさんの浴衣──『藤桜』の補助的な物です。効果は『幸運上昇(中)』で、装備のデメリット解消効果程度しかないですが………」
「説明ありがとう。質問をいい?」
「はい、なんでしょう?」
質問? まあ、ありますよね。急にこんなに多くの装備を貰ったんですし。
俺はどの事だか予想しながら質問に耳を傾ける。
「あのさ………送られてきた装備の中にさ…………」
「?」
何んですかね? 色々と譲渡しちゃいましたが………もしかして気に入らないものでもあったり?
「………凄く効果の高いポーションが入っているんだけど」
「…………………え?」
シロさんは「ほら、これ」と、指をさす。
俺は横から、それを覗きこんだ。
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ポーション(凝縮)
効果:六十秒でHP1000回復。しかし、味は苦い。
消費期限:残り30時間
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ポーション(レモン味)
効果:六十秒で300回復。味はレモン。
消費期限:残り30時間
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え? これ………何かおかしいですか?
そもそもこれは………。
「これはゲンテさんに買い取ってもらおうとしたら「駄目、無理」って言われたやつです。効果は高めなのでもしよければ。それにその他のフルーツ系もありますし」
「………まあ、うん。ゲンテさんの気持ちも分からないわけじゃない」
え~、いいと思うんですけどねぇ。
レモン味以外にはイチゴ味とかブドウ味とかある。
味をつけた分、効果は落ちているからいけないのでしょうか?
「………う~ん。まあいいです。フリマ的なイベントがあったら出します」
「それが良いと思うよ」
まあ、無かったら自分で飲みますか。
んー、スキル名あとで変えるかも。ちなみに装備の効果は高めですが、性能は中の上くらいです。
上には上がいる。まあ晶くんが生粋の生産職なら、話も変わってきたのですが………ifっちゃう?
ちなみに回復薬の効果は上級のそれに匹敵。凝縮は論外です




