第百五話 昼は人間、夜は妖怪の世界
消耗品を買い終え、俺は集合場所へと向かう。
『結構密集してるんですねぇ』
「なんだかんだで色々揃ってますしねぇ」
ピクシーさんと二人、感想を言いながら観光を楽しんでいます。
え? 向かいながらなのでセーフかと。
別に急ぐ気もありませんしね。
『あ、もう四十分になりますよぉ』
「まだ二十分もありますか………あ、あの店行きません?」
『いいですねぇ』
ちなみに『カリテア』にはまだプレイヤーが一人もいません。
そりゃそうですよね。近くの街に行くよりレベリングを重視してる筈ですし、第二の街に行く利点もまだあんまりですし。
ですので妖精姿のピクシーさんがいても誰も驚かないんですね。
『んー! 最高の息抜きですー』
「なんかピクシーさんがどこかの懐中時計を片手に急いでるウサギに──すいません」
なんか謝りたくなったので謝りました。
いやホント………何か圧がピクシーさんから放たれまして。
それにしても『空腹度』は実装されませんでしたか………んー、今後に期待ですかね。
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「──これくらいですかね」
買うべきものを買い、途中寄り道もしましたが、時間通りに集合場所に到着。
いたのはツキちゃんとトアちゃん。
………なんだかギスギスしてますねぇ。
「おーっす………ん? どうしたこの空気」
「あ、ヨウゲツさん」
さすがに『ツキちゃんとトアちゃんがメンチ切りあってます』とは言えなかったので、アイコンタクトで『いつも通りのアレです』。
「後はシロさんか?」
「丁度クエスト終えた旨を伝えるメッセ来ましたね」
んー、モスチャット大草原ですか………また推奨レベルが上がるわけですね。
夜だからまだ俺は平気なんですが………まあ頑張りますか。
「ショウ! マリンちゃん! そしてヨウゲツさーん!」
「………お、来ましたねぇ」
頭上からシロさんの声。
俺達がそちらを向くと、シロさんは屋根の上から華麗に飛び降りる。
「………なあショウ。俺シロさんは常識人だと思っていたんだ」
「はは、ヨウゲツさん面白いこと言いますね」
「ちょ、ショウ!? ヨウゲツさん!? どういう意味!?」
どういう意味って………俺とヨウゲツさんは顔を見合わせる。
常識って、なんでしたっけ? まあ──
「ねえ『WFユーザーに常識人はいないよね』って同意するの止めよ!? 特大ブーメランになるよ!?」
「まあ常識はずれな行動してるのはわかってました」
「俺もー」
シロさんは「嘘だろ」と言いたげな青ざめた表情を右手で隠し、一歩下がる。
「………嘘、でしょ。あの『クレイジーチェス』と『もはや草原広がる太平洋』が………!?」
「「ちょっとその異名は酷すぎませんかねぇ!?」」
特にヨウゲツさんの『もはや草原広がる太平洋』とか………ヤバいです。ネーミングセンスが天才的。
「あーもうマジかショウにバレたぁぁぁぁぁ!」
「ははは、別に広めませんよ『もはや草原広がる太平洋』さんwww」
「笑うなよ『クレイジーチェス』だろ!」
別に気にしていませんし?
それより、そろそろ行きません? ツキちゃんとトアちゃんも俺達見て喧嘩を終わらせたようですし。
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「《闇夜に踊る星星よ・その光で我が敵を滅したまえ》」
「《孤高なる炎帝よ・その炎を以て万象を焼け》」
色とりどりの光線と炎で出来た凶鳥がゴブリンの群れを殲滅していく。
………んー、ツキちゃんの魔法『色彩銀河の七光線』が『ベリーメリー○ゥインクルスター』を連想してしまう………。
ちなみに俺の魔法は某レゾナ○トオプスの『炎の○死鳥』………いえ演出とかは多少違いますけどね? 連想ですよ連想。
「え、えげつねぇ………」
「これくらい当然」
………まあトアちゃんの『継続強化』がいい仕事をしていたのは確かなのですがね。
というか継続していきながら随時その強化率が上がっていくとか強すぎませんか『楽師』。
まあだからこそ、『楽師』は強化専門の職業なんでしょうねぇ。
「──さて、そろそろいいですかね」
いい感じにゴブリンの数も減り、俺は魔法から剣に装備を変える。
「──『ソード・アップ』」
俺はいつも通りの戦術に『ソード・アップ』を使用する。
………さて、始めましょうか。
魔力を足に籠め、一気に駆ける。
両手で『タルワール』を持ち、魔力で強度と威力を上げながらゴブリンを屠っていく。
「『シャドウ・サプライズ』」
シロさんも加わり、更に殲滅速度はあがる。
………というかシロさんどこにいるんですかね?
「『シャドウ・ウォーク』………『シャドウ・スラッシュ』」
全くどこにいるのかわかりませんねぇ………というかポリゴン片だけ眩しいです。
「ちょいと俺も失礼するぜ?」
ヨウゲツさんが一体のゴブリンを屠りながら言う。
歓迎ですよ。ええ………。
俺は後ろからくる弓矢を剣で弾き、簡単な魔法で反撃。ついでの『呪符』。
おかしいですねぇ………弓矢持ちはいなかったと思ったんですが。
「………もうPKが流行っているんですか?」
「ああ………まあいるよなぁ」
俺達は殲滅を中断し、彼らへと視線を向ける。
彼らは更に魔法と弓矢を飛ばすが、明後日の方向に飛んでいった。
その隙に一人。
「──まず一人………言い分くらいなら聞きますよ?」
敵のリーダー格らしきプレイヤーが指示を出す。
魔法部隊三人、弓矢は一人で剣士は倒した分も含め四人ですか………全員『夜目』やそれに類するスキルは持ってると判断したほうがいいですね。
──まあ、いいですけど。
「会話も無しですか………悲しいですねぇ」
「!? 化物か!」
………ああ、急に出てきたように見えましたか。
俺は『スラッシュ』で斬りやすい足首を狙う。
「次」
俺は居合い抜きの構えで剣士達を待つ。
「捉えたぁ!」
そういえば何で狙うんでしょう………まあいいですけど。
俺は魔法使い達を斬りながら考える。
まあドロップですよね。たぶん。
誰かがPKの旨さを知って、それを集団で始めたか………ならばたぶん、俺にとっては害悪でもなんでもありませんねぇ。
「《五行を司りし獣の一角よ・孤独にして孤高の炎帝よ・いまここに顕現し・その炎を以て悪を滅せよ》」
炎は三人の剣士を燃やす。
防御不可。対人でのオーバーキル。
………まあ、詠唱によるある程度の制御は可能と知れたのは収穫ですね。
俺は最後にリーダー格のプレイヤーの元に歩み寄る。
「ひぃ! く、来るな! 殺すなら殺せよぉ!」
「まあまあ………そう慌てずに」
俺は一尾と『狐火』を取り出す。
さあ、魑魅魍魎の恐ろしさを教えてあげましょうか。
期末考査も終わったわけですし、答案返却だけして即終業式でもいいと思うんですよね。どうせ勉強に時間を使うわけではないのですから冬休みを多くしてもいいと思うんですよ (建前)。
運動、大☆嫌い (本音)。




