第十話 魔法チュートリアル
な~んかこの世界の時間の流れがおかしいなぁと思ったので、ピクシーさんに聞いてみたら、《この世界では現実時間の1日がこの世界の2日です。ここでは現実での1日が四日くらいです》って言われました。
時間は気にしなくてもいいんでしたら別にいいのですが……時間を気にせずゲームできるのって嬉しいことですね。
《それでは、次は『魔法』のチュートリアルです。
ショウさんは『魔法』スキルを持っていないので『魔力操作』というスキルを習得してみましょう》
魔力操作? 習得とかそれ以前に魔力ってなんですか? ステータスにあったMPのこと……ですかね?
ピクシーさんは俺の疑問を察したのか、説明口調で言う。
《魔力はMPのことです。そしてそれを操作するには……こう、少し意識を体内にある、血みたいなものを動かす感覚で──》
……体内の血みたいなもの? AIとは思えない抽象的な発言に好感を抱きながら、ピクシーさんに言われた通りにやってみる。
「……あ、これかな?」
《ちなみにこれはスキルポイントを使っ──え?》
──スキル『魔力操作』を習得しました。
──特殊スキル『無属性魔法』を習得しました。
脳内に電子的な音声が流れる。
う~ん。なんかこれ、嫌ですねぇ。
「ピクシーさん、この脳内メッセージ的なのなんとかなりませんか?」
《……は、はい、脳内アナウンスは設定からオンオフ切り替え等が出来ます。尚、ワールドアナウンスは一部を除いてオンオフの切り替えができます》
へぇ、それじゃあ、オフにしておきましょう。
俺はメニューから設定を開いて……『アナウンス設定』って場所ですかね? ここ……おお、説明にあった以上に設定が細かすぎる。
「……思ったのですが、このゲーム、色々設定が細かすぎません?」
《……worry-free》
「あ、ハイ、わかりました」
そうでした。WFでしたね。
それじゃあ仕方ないですね。
俺はアナウンス前に音楽をかける設定と、一部のアナウンスを聞かないように設定して『設定保存』の文字を押す。
《オフにしましたね。では説明を続けますが、魔力操作のスキルを習得すると、一緒に『無属性魔法』を習得したと思います》
「はい」
《このスキルは結構便利ですからね──お手本を見せます。真似して見てください》
そう言ってピクシーさんが目を閉じる。
何か神聖な光が出てる。神々しいあれが魔力らしい。
《あ、敵を出すの忘れていました》
そう言って目を開き、ピクシーさんが目前に敵を数種類出す。ドジッ娘属性助かります。
ちなみにだされたスライムはメタリックで、動き出す気配はありませんでした。
《無属性魔法は魔法攻撃と物理攻撃の中間くらいの魔法です。例えば──》
ピクシーさんが魔力を纏い、スライムに殴りかかる。
動きそうにないスライムは、ピクシーさんの殴打一発でポリゴン片となった。経験値多そうです。
《これが無属性魔法のみが使える『身体強化』という技です。やってみ──出来てますね》
俺はピクシーさんがやったみたいに、魔力を身体全体に纏わせる。
纏うというより、流すの方が表現的にはあっている気がします。
《……では次です》
不貞腐れた様子でそう言って、ピクシーさんはまた集中状態になる。
あ、今度は手に魔力を集めた。その魔力を銃弾のように固めて飛ばした……んですか? やれそうな予感。
《この魔法が『魔力弾』です……あ、やっぱもう出来てますね》
ピクシーさんに呆れたように言われてしまいました。
んー、感覚としては流れている魔力を右手に持っていく感覚なので、やりやすいと思いますね。魔法楽しい。
《ちなみにMPが0になると魔法は使えません。それにMPが無くなってしばらくするとEPが減り始めます。EPも0になってしばらくするとHPも減少していくので気をつけてくださいね》
「はい。わかりました」
最後の最後におっそろしい事を聞きました。魔法怖い。
ちなみにEPが0になると『移動速度低下』の状態異常に強制的になるらしいです。怖いですねぇ。
■■■■
「ピクシーさんついでなのですが『歌』スキルはどうすれば発動しますか?」
《いい質問です。このゲームは『JO○SOUND』さんがスポンサーにいるので、カラオケとかもあります。
歌が聴けるのもそのおかげですね。
ちなみに『歌』スキルはシステムが『歌』をうたっていると判断した場合、特殊な効果を及ぼします。歌によってはHP回復にも使えますね。何か歌いますか?》
「……できればチュ○ニズム的なものは──」
《ありません》
ピクシーさんに即座に否定された。
ピクシーさんは会話上手ですね。
「Da○ce D○nce Re○o──」
《ありません》
強めな否がきました。いやまあ無いですよね。わかってますよ。そもそもあったら俺がテンション上げて一人で踊ってますよ。足だけ。
って違う違う。一曲歌おうじゃないですか。『歌』スキルを検証するために。
そもそも、Da○ce Da○ce Rev○luti○nは『歌』スキルというより『ダンス』スキルですよね。あるのかは知りませんが。
「それじゃあ、いきます──」
俺は好きなアーティストの曲を歌った。
数年以上前の歌の、自分のお気に入りの曲を。
何故か曲を歌っているとき、微かにカラオケverが流れていたのは気のせいですかね?
「──え~と……あ、バフが入ってない」
《……さっきの歌は敵の耐性を下げることができますよ。そして『歌』スキルは歌っている間だけバフが入るのです》
へぇ~。それをボーナス戦闘前に言ってほしかったです。
それに曲によって効果もかわるのですか……似たような曲が耐性低下系だと俺、相当偏りますよね。支援スキルと聞いたのですが。
《え~と……戦闘します?》
「ボーナス戦闘ですか?」
《あ、あれ、気に入っちゃいました? あれの次の報酬は2000体討伐ですよ~》
「……スライムをですか?」
《いえ、ゴブリンです》
「ゴブリンってあの? 緑色の皮膚を持つ?」
《はい! そのゴブリンであってます》
……どうしましょう。結構ストレス発散になるでしょうけどまだゴブリンは……。
《あ、ゴブリンではなくスライムにしますか? 難易度上がりますけど》
「そこ、詳しく教えてください」
《はい。1000体以上ボーナススライムを倒したプレイヤーのボーナスステージには、ボーナススライムがボーナスポイズンスライムに変わってでてきます。コイツらは面倒ですよ~。毒持ちなんで》
だから毒持ちスライムと。
う~ん……どうしましょうかねぇ。
「今日はやめときます」
《そうですか……せっかくいい装備があるのに……》
「あの……それっていつでも出来るんですか?」
俺の言葉に、少し悲しそうな表情をしていたピクシーさんの目が、光を取り戻した。
いや、今はもうやらないですよ。絶対。
《β期間ならいつでもできます》
「ありがとうございます」




