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ふぁみふぁみ!  作者:
18/20

No.18 マイ・プレゼンテーション

なんか他に比べて随分長くなってしまいました……

「俺はそういう責任っつうのが世の中で一番嫌いなんだ!」

 

「私もよ」

 

「何で私があんたらの世話しなきゃならないのか、激しく疑問だわ」

 

「僕はそもそも、集団行動自体得意じゃないしね」

 

「…………アルガンってカレー食べる?…………食べないかぁ……」

 

「……ええっとみんな、とりあえず落ち着い……」

 

「大体、あんたらみたいな身勝手な連中の面倒見なきゃならないのよ」

 

「そりゃこっちの台詞だな」

 

「みんな見るからに面倒事起こしそうだよねー」

 

「ねぇねぇ、リィズランはカレー好き?」

 

「……いきなり何よ?」

 

「…………ああもうどうしよう……」

 

 

 

 

 

 ………………

 

 正に、喧々囂々。

 

 初対面同士が良く此処まで無遠慮に言い合えるものだ。ここまでくると、いっそ誉めてやりたいぐらいだな。

 相変わらずクラリッサ一人だけ、全く違うこと言ってるし……

 

「なんかもう、しっちゃかめっちゃかだね……」

 

 肩のリッツが、頭を手で抑えながら零す。

 

「こんな調子で班活動なんて出来るのかな?」

 

「……さあな」

 

 悪魔なら、この程度の諍いは日常茶飯事だが、人間同士の関係性は詳しくない。

 まあ、あまり良い傾向とは言えない……という事くらいは解るが。

 

「はいはい! 落ち着いて」

 

「!?」

 

 ぱんぱんと、乾いた音が響く。

 騒がしく言い争っていた全員が、驚きで言葉を失い、音のなった方を向く。

 

「いい加減にしないと怒りますよ」

 

 静かながら、威圧感のある声が響く。

 音の先に居たのは、黒髪の少女の近くに居た、和装の女の姿をした使い魔だ。

 先ほどの音は、手を叩いた時に出た音らしい。胸の前で合わせた白い手のひらが、ほんのりと赤く染まっている。

 

「………………ご……ごめんなさい……」

 

 彼女の雰囲気に飲まれたのか、全員借りてきた猫のように大人しくなってしまった。

 鶴の一声というやつである。

 

「すごいなぁ」

 

 リッツが感嘆の声を上げた。

 その言葉に反応するように、和装の女も、こちらに向かって微笑んだ。

 

 が、直ぐに円卓の6人に向き直ると、テキパキと仕切り始める。

 

「とりあえず、誰も班長をやる気が無いんですね?」

 

 女の言葉を肯定するように、6人がそれぞれ頷く。

 

「解りました。ですけど、このままじゃ決まりませんので、多数決で決めてしまいませんか?」

 

 そう言って、女は手のひらを合わせながら、にっこりと笑んだ。

 

「多数決……って事は……」

 

「一番他の班員から推された人が班長って事だね」

 

 茶髪の少年の疑問に、今度はリッツが答える。

 

「どういう事?」

 

「班長になってほしい人をそれぞれ選べって事よ……」

 

 クラリッサは、この後に及んで理解出来ていないらしく、リィズランを呆れ返させている。

 

 さも分かったように頷いているが、実際どの位理解出来てるのやら……

 

「……まあ、それ以外に無いだろうな」

 

「異議なし」

 

「分かった」

 

「……解りました」

 

 他の班員も、それぞれ肯定する。

 

「じゃあ、まずは6人の班員、それぞれ自己紹介しましょう」

 

「……何で?」

 

「素性も知らないのに選べる訳無いですからね。とりあえず……名前と魔法に対する知識がどれくらいあるか、今現在どれくらいの事が出来るか。ぐらいの事を説明して下さい。選考基準になりますからね」

 

 テキパキと、段取りを決めていく女。

 もう、コイツが班長になれれば良かったのにな。

 

「りょーかい」

 

「解りました」

 

 もう教官だよこれ。

 

「じゃあ、早速始めましょう。まずは……フィネ、あなたから時計周りでいきましょう」

 

「は?」

 

 一番最初は、女の主人である黒髪の少女が指名される。

 

「……何で私が?」

 

「いや、だって他の人指名したら贔屓みたいじゃないですか」

 

「しなさいよ。贔屓」

 

「嫌ですよ。ほらほら、さっさと済ませら後が楽ですから、頑張って頑張って」

 

「ああ~もう~」

 

 フィネと呼ばれた少女は露骨に嫌そうな顔をしながら反論するが、女は取り合わない。

 殆ど強制的に、少女は立ち上がらされてしまった。

 

「ったく、仕方ないわね」

 

 一度立ち上がってしまえば、もう引っ込みがつかない。少女は観念したように頭を振り、自己紹介を始めた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「そうね……名前はフィネ。フィネ=アクスよ。年齢は15。魔法は……まあ、基本的な事はある程度出来るし、熱や個体を操る魔法は少し得意……ってところね」

 

 指示された事をきちんと消化し、説明するフィネ。淡泊だが、非常に分かりやすい内容だ。

 

「あと、質問なんかある?」

 

「後ろのは?」

 

 手を上げながら、黒髪の青年が尋ねる。

 

「ああ、あれは私の使い魔。雪人の(ひかり)よ。氷なんかを操るのが得意ね」


「皆さんよろしくお願いします」

 

 フィネの説明に合わせて、頭を下げる景。

 

「よろしくー」

 

 青髪の少年が、手を振りながら返事をした。

 

「他に質問は…………なさそうね。じゃ、終わり」

 

 髪をかきあげながら、椅子に座るフィネ。やはりそれなりに緊張したらしく、息を吐きながら椅子にもたれかかっている。

 

「じゃあ次は……」

 

「俺だな」

 

 リッツの言葉に、フィネの左に座っていた、黒ずくめの青年が立ち上がった。

 青年はしばらく、顎に手をかけて考え込むような仕草をしていたが、ややあって、姿勢を正すと、ハキハキと話し始めた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「俺の名前はディルク。年齢は17だ。俺は西のフェクタル出身で、荒れた大地をどうにかしようと思い立ってな、ここへは天候や植物を操る方法を学びに来た。魔法に関する知識は全くと言って良いほど無いし、基本的に頭を使う事は苦手でな。どちらかと言えば、武術や肉体を使った行動の方が得意だ」

 

 ディルクと名乗った青年は、ニコニコと笑いながら軽快に話す。

 気さくというか楽天的というか……まあ、頭を使う事は確かに苦手そうだ。

 

「じゃあ、よろ……ああ、俺も質問聞いておいた方が良いな。質問がある奴居るか?」

 

「じゃあ質問」

 

「ほい、そこの金髪」

 

 ディルクの提案にリィズランが手を上げた。ディルクは、人差し指でリィズランを指差す。

 

「武術が得意って話だけど、あんた、何が出来んの?」

 

 リィズランが足をブラブラさせながら、質問する。

 ディルクはその質問に対し、背中の後ろに手を回しながら、不敵に笑う。

 

「そうだな……例えば。こういうのが得意だよ……っと!」

 

 背中に隠した手をばっと広げる。

 外套が跳ね上がり、ひらりと広がる。その後ろから、槍や剣やナイフなど、十本本以上もの武器が飛び出し、ずさずさと彼の周りに刺さった。さらに、左手には戦輪が数枚、右手には鞭が手にされている。

「あわわっ!」

 

「ちょっ!」

 

 急に現れた武器の存在に、彼の両脇に居たフィネと茶髪の少年が驚き、席から跳ね退く。

 

「どーよ!」

 

「恐っ! 普通に恐っ!」

 

「手品か!」

 

「そういう事やるなら先に言いなさい!」

 

「し……死ぬかと思った……」

 

 本人は得意気だが、こういうのはいきなり見せられると心臓に悪い。

 凄い事は凄いが、それ以上に驚きから来る怒りの方が強かった。

 

「ははは、すまんすまん。まあ、こんな感じで、暗器の扱いが得意なんだわ。こういう黒くて地味な服を着てるのも、そういう理由なんだよ」

 

 外套を翻し、地面に刺さった剣や槍を覆う、再び外套を跳ね上げると、あれだけあった武器が、忽然と姿を消す。

 自分で言うだけあって、確かに見事な技術だ。

 

「じゃあ、よろしくな」

 

 ディルクはそう言うと、どかっと勢いよく椅子に腰掛けた。

 これで自己紹介は終わりと言う事らしい。

 

「じゃあ次は……お前だな」

 

「あ、う、うん」

 

 驚きから漸く立ち直り、椅子に座ろうとしている、茶髪の少年が指名される。

 指名された少年は、椅子に座るのを取りやめ、立ち上がった。

 

 そして、大きく深呼吸をして息を整えると、静かに話し始めた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「僕の名前はクレオス。年齢は15です。この学校には呪いの解き方を学びに来ました。魔法が使えるって程じゃないんだけど、少し活性術と治癒術が使えます」

 

 背筋を嫌に伸ばしながら、ですます調で話すクレオスという名の少年。

 人見知りが激しいのか、緊張しいなのか、いずれにしても、人前で喋る事にはなれていないらしい。

 

「呪いの解き方……ねぇ」

 

「じゃあ、クレオスは呪われてる訳だ?」

 

 呪いというフレーズに興味を持ったのか、両脇から、ディルクと青髪の少年が問いかけた。

 

「う、うん……まあ、僕がって言うか……」

 

 クレオスはそう言いながら、背中に背負った杖を取り出す。

 薄いクリーム色の、象牙のような材質の杖だ。比較的シンプルなデザインで、丸く潰れている先端に、花の模様が彫られている。

 

「この杖が……」

 

「うーい、どったー!?」

 

 クレオスが、軽く杖を叩くと、ぐらぐらと杖が震え、中から煙と共に、人のような姿をした小さな生き物が飛び出す。

 

「んにゃ!? なによあんたらー」

 

「…………なにこれ?」


 杖の先から現れたそれは、小さくてわかりづらいが、妖精の類のようだ。

 黄緑色の服に、水色の羽がまぶしい。


「これとはなんだなんだー!」

 

「木妖精のココっていうんだけど……」

 

 クレオスが、妖精をつまみ上げて、手のひらに乗せる。

 妖精のココは、知らない人間に囲まれて戸惑いを隠しきれない様子で、すっかり脅えきっている。

 

「ええと、このココが、どうやら杖の呪いにかかっちゃったらしくて、この杖からあまり離れられなくなっちゃった感じなんだ」

 

「へー」

 

「うにうに」

 

「やっ、止めっ……そこくすぐった! ちょっ! ほんとやめっ」

 

 …………速っ!?

 

 ココが、早速クラリッサの玩具にされている。

 クレオスが、青髪の少年に説明をしている間に、なぜかクレオスの手にあった筈のココが、クラリッサの両手の中でもみくちゃにされている。

 

「……え?」

 

「…………あれ……」

 

 クレオスも、何が起きたのか解らないらしく、呆然としている。

 

「くれおーす! 見てないで助けてー! ああ、足の裏止めて! ぞわぞわするー!」

 

「あ、ああっ! ちょっ、ええと……」

 

 ココの懇願に、クレオスが正気に戻る。

 しかし、どうしたら良いか解らずに、オロオロしていることしか出来ないようだ。

 

 はあ、仕方ないな……

 

 俺は、クラリッサに近付くと、肩に手を置いて語りかける。

 

「マスター。返してやれ」

 

「……えー」

 

 クラリッサの顔が、不満そうに歪む。

 

 ……いや、そんな顔されてもな。

 

「いいから」

 

「……分かった」

 

 明らかに名残惜しそうに、クレオスにココを返すクラリッサ。

 ココは涙を目いっぱいに溜めながら、自由になった途端、クレオスの後ろ髪にしがみついた。

 

「お、覚えてろよたれ目ぇ~!」

 

「…………忘れないよ」

 

「……ひっ!」

 

「手をわきわきさせるな」

 

 クラリッサが手を少し上げて動かすだけで、ココは顔を真っ青にしてクレオスの後頭部に隠れてしまう。

 どうやらクラリッサの存在は、ココの中で完全に恐怖のトラウマとして認識されてしまったらしい。

 

 やれやれ……

 

「ええと……じゃあ次の人に……」

 

「うん、おっけ」

 

 次は、鎧を纏い大剣を背負った、青髪の少年の番だ。

 少年は元気よく立ち上がり、びっと背を伸ばしながら話し始めた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「僕の名前はセア、セア=ラン。14歳。世界一の剣士になるために色々な所を旅してるんだ。魔法なんて知識も興味も無かったけど、この肩に居るこいつのせいで魔法覚える羽目になっちゃってここに来たんだ。そんな訳だから、魔法は全く使えないけど、剣術なら大得意だよ」

 

 セアと名乗った少年は、そう言うと、スッと右手を前に伸ばす。

 彼の肩に居た梟が、優雅に飛びながら、彼の右手の先に飛び移った。

 

「彼が僕の相棒のドワイト、まあ、出会ったばかりなんだけどね。なんだか知らないけど、索敵や分析が得意らしくて、それの使い方を覚える為に、ここに入る事になったんだ」

 

「うむ。私の名前はドワイト、黒き闇を飛び、くうを射る彗眼(えげん)なり」

 

「なんかこんな訳分かんない事ばっかり言うんだよね、こいつ。まあ、そんな感じだけど、宜しくね。ああ、なんか質問は……」

 

「はい」

 

「はい、君」

 

 珍しく、質問に手を上げたのはクラリッサだ。セアも、ちゃっちゃとクラリッサを指差す。

 

「ええと……男の子?女の子?」

 

 …………は?

 

「いや、あんたその質問……」

 

 クラリッサの問いに、リィズランが顔をしかめる。

 まあ、かくいう俺も同じ気持ちだ。

 クラリッサは何を考えてるんだ、こんな格好した女なんて居るわけ……

 

「ん? 僕は女、ドワイトは男だよ。」

 

 …………………

 

 …………………

 

 !!!!!?

 

「嘘ぉ! 女ぁ!?」

 

 クラリッサを除く、部屋中の全員の声が重なった。

 

「えっ!? ちょっ! ひどっ!」

 

「マジで女!? 女の振りしてる男とかじゃなく!?」

 

 ディルクが、まだ信じられ無いといった様子で詰め寄った。

 セアもこれには頭に来たらしく、顔を真っ赤にして怒る。

 

「いくら何でもそんな事で嘘つかなあひゃう!」

 

 突如、セアの声が裏返った。

 

「やっぱり女の子」

 

「胸を揉むなぁぁぁっ!」

 

 見ると、何故かセアの後ろにクラリッサが回り込み、鎧の隙間からセアの胸に手を差し込んでいる。

 

「こら、やめろ」

 

 クラリッサの腕に手を回し、無理やり引き出した。セアはよほど恥ずかしかったのか、胸を押さえ、顔を真っ赤にしている。

 

『確かにこの反応は女の子だね……』

 

 リッツが耳打ちしてくる。

 

『だな……』

 

 こうして、なんだが変な空気のまま、セアの自己紹介は終わった。

 

 

 

「次は……」

 

「私よ」

 

 手を上げながら、リィズランが立ち上がる。リッツが彼女の肩に飛び移り、自己紹介が始まった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「私の名前はリィズラン。年齢は14。ここに入学したのは修行の一環。風と光を操る魔法が得意で、魔法の知識もそれなりにあるわ。ヴィランティアラには、半年前から居るから、ちょっと詳しいわよ」

 

 相変わらず自信満々といった感じで、ペラペラと自己紹介をする。

 リィズランは一通り自分の説明を済ませると、肩のリッツをつまみ上げる。

 

「で、こいつは私の相棒、フェランアイビーっていう種族のリッツ。またの名を下僕」

 

「いや、ちょっと待って、それは聞き流せな」

 

「こいつ、物を飲み込んだり吐き出したりするのが得意だから、何か持って欲しい物があったら言ってくれて良いわよ」

 

「いや、ちょっとリィズ! 下僕って」

 

「以上。何か質問ある?」

 

 彼女の手の中でバタバタと暴れるリッツを無視して、リィズランは自己紹介を終えてしまう。

 相変わらず、あいつのリッツの扱い方は、逆に清々しいものを感じるな……

 

「ほい」

 

「何? ええと……ディルクだっけ」

 

 手を上げたのはディルクだ。

 リィズランが彼を指すと、手を下げながら質問する。

 

「質問って程じゃねえけどさ、なんで半年前からここに居るんだ?」

 

「ああ、それね。ここの校長のエルヴィラ様、知ってる?」

 

「校長先……あの入学式の時に暴れてた……?」

 

「ああ、あの白い服着たのな」

 

 リィズランの発言に、クレオスが答える。

 ディルクもそれで分かったらしく、手のひらを打った。

 

「そ、そんな事してたの……?」

 

「してたしてた、教師総出で押し止められてたな」

 

「挨拶も適当だったね、確か」

 

「し、師匠のバカ……」

 

 己の師の行動に、頭痛でも覚えたのだろう、リィズランは、苦虫を噛み潰したような顔でこめかみを抑える。

 

「ま、まあ良いわ……私は、そのエルヴィラ=ビショップの弟子なのよ。で、みんなより早く、ここで生活してるって訳」

 

「ほう、そいつはすげえな」

 

「気に入らないわね」

 

「別に凄かったりする訳じゃないわよ。もともと実力が買われた訳じゃないし」

 

 照れて謙遜しているのか、言い訳のようにそんな事を言うリィズラン。

 まあ、あの女の事だから、確かに実力以外で弟子を選ぶ可能性も十二分に有り得る話だが……少なくとも、これまでの行動を見る限りでは、リィズランに才能がないという事は無いだろう。

 

「ま、まあそんな感じね。これで私は終わり。次はほら、あんたよ」

 

「えー……」

 

 リィズランから指名されたクラリッサは何故か顔をしかめる。

 解ってたことだろうに、今更嫌そうにすんなよ……

 

「いや、みんなやってるんだから……」

 

「…………分かった」

 

 リッツに促され、立ち上がるクラリッサ。

 最後は、彼女の自己紹介だ。

 

 ……つーか、ちゃんと出来るか不安なんだが……

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「クラリッサ。ええと……今年で13……だよね?」

 

「俺に聞くなよ」

 

「なんか良く解らないけど、入らなきゃいけないとか言われたから来ました。魔法は使えません。武器も使えません。字を書くのが得意です。食べるのが好きです」

 

 指を折り曲げながら、たどたどしく説明するクラリッサ。まあ、予想通りだが、予想以上には出来ている。

 

「それと、こっちはセシリア。多分悪魔」

 

「悪魔だよ」

 

「おいおい……」

 

「うん、まあそんな感じ。おしまい」

 

 自己紹介が終わり、早々に座ろうとするクラリッサ。

 

「ま、待って待って!」

 

 それをクレオスが慌てて止めようと、声を上げた。

 

「?」

 

「聞きたい事があんだろ?」

 

「は、はい……」

 

 俺が問いかけると、下を向きながらクレオスが答える。

 先ほどの勢いはどこへやら、まるで、空気が抜けたように勢いがなくなってしまった。

 

「ほら、聞いてやれ」

 

「うん、何?」

 

「ええと……間違えてたらごめん。さっき入学式で、ドラゴンに乗ってたのって、そこの悪魔の人だったような気がするなー……なんて……」

 

「うん、そうだよ」

 

 まるで腫れ物にでも触るかのように、おずおずと質問してくるクレオス。

 しかし、クラリッサは差して気にもせず、呆気なくバラしてしまう。

 

「や……やっぱり……」

 

「うそ……」

 

「……まじかよ」

 

「……恐っ」

 

 4人の班員の顔が凍りつく。

 ……まあ、こうなるわな。

 

 更に、リッツがリィズランの肩から飛び降り、話し始めた。

 

「正確には、僕とリィズランとクラリッサとセシリアが乗ってたよ。で、乗せてたのが……」

 

「はい、この子。アルガン」

 

 ポケットの中から、まるで鍵でも出すかのように、アルガンを掴み上げるクラリッサ。

 

「……ちょっと見せて」

 

「はい」

 

「……………」

 

 フィネがアルガンを受け取り、マジマジと眺める。

 

「……うん、確かにドラゴンだわこれ……これ、クラリッサの使い魔よね」

 

「うん」

 

 クラリッサの代わりに、リッツが答える。

 

「じゃ、決まりね」

 

 フィネは、アルガンをクラリッサに放り投げると、そのまま、クラリッサを指差す。

 

「あんた班長」

 

 ………………

 

 ………………

 

 ………………

 

「なんで?」

 

「強いから」

 

 ……………………は?

 

「はあああああぁぁぁぁぁっ!?」

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