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感謝を込めて料理を作る。

ガイアスと出会って、狼の獣人の村に住むようになってしばらくしてからのことです。

 狼の獣人の村にやってきて、しばらくが経過している。

 村の人たちは私にとてもよくしてくれている。私はそれが嬉しかった。



 初めての友達も出来て、ガイアスと出会ってからの沢山の初めてに私は胸がいっぱいになって仕方がない。



 沢山の物を私は皆からもらっている自覚がある。生まれ育った村では感じることがなかった気持ちを沢山受け取っている。



「レイマー、私、何、出来る?」

「ぐるるるるるる(何が?)」

「いっぱい、もらってる。……なに、か、できる?」



 お手伝いはしている。役に立てたらと思って行動している。でもそれだけでは足りないのではないかと思ってしまう。




 地面に座り込んでいるレイマーに、背中を預けてそのふかふかのレイマーのもふもふを感じながら私は話している。

 それにしてもいつも触っているけれど、幾ら触ってもレイマーのもふもふは飽きない。幾らでも触りたくなる。



「ぐるるるるるるるるう(もう十分何か出来ていると思うが)」

「……そう、かな」

「ぐるる、ぐるるるるるるる(ああ。でももし足りないなら料理でも作ったらどうだ?」

「りょう、り?」

「ぐるるるるっるううううう(美味しいものを食べると嬉しくなるだろうから)」



 レイマーにそんなことを言われて、皆に料理をふるまってみたいと私は思った。

 



 それから試しに練習で一人で料理を作ってみた。だけど、上手く行かなかった。

 皆のお手伝いをして料理をすることはしていたけれど、一人で何か作ってみようとしてみるとこんなに難しいのだと実感する。

 皆は凄い。簡単に美味しい料理を作れるのだ。



 生まれた村ではたまにご飯を置かれて、放っておかれていた時は森の中で食べられるものを探して自分で食べていた。

 自分で料理というものをしてはいなかったから、此処で料理のお手伝いをしていて、料理って難しいのだなと知った。



「……ん、むず、かしい」

「レルンダ、何をしているの?」



 こっそり一人で何か作って見たのだけど、カユに見つかってしまった。



「……料理」

「あら、一人で料理していたの? 怪我をするかもしれないから一人でやらない方がいいわよ! 私も昔一人でやって、火傷しちゃってシノミやお母さんに怒られたもの!」



 カユはそう言いながら私に近づいてくる。

 そして私が手に持っていた木の実をつぶして煮た料理を口に含む。



「ちょっと苦いわね!!」

「……うん」

「落ち込まないの。最初だから仕方ないわよ。それにしても何で料理を? あ、ガイアスに食べてほしいとか?」


 何故かガイアスの事を口に出したカユは、にこにこと笑っている。

 美味しくないもの食べさせちゃったのに、カユは気分を害したような様子はない。



「みんなに。……食べて、ほしい」

「皆に?」

「うん……。いっぱい、もらってるから。感謝、伝えたい」



 そう言ったら、「レルンダは可愛いわね」とぎゅっとされた。ぎゅっとされて持っていた木のお皿を落としそうになって慌てて机に置く。



「皆もレルンダが料理を作ってくれるっていうなら喜ぶわよ!! 私も手伝うわ!」

「ありが、とう」



 そんなわけでカユも手伝ってくれて、料理を試しに作ってみる。

 けれど、やっぱりいつも食べているものほど美味しく出来ない。何の問題だろう?



「んー、ちょっと木の苦みとかが残っているわね」

「うん」



 カユと二人でもっと苦みを取って美味しく出来ないかなと話し合っていたら、今度はシノミもやってきた。



「レルンダちゃん、カユちゃん、何をやっているの?」



 やってきたシノミに説明をしたら、「レルンダちゃんは優しいね」と頭を撫でられた。

 そしてシノミも手伝ってくれることになった。



 シノミが手伝ってくれて分かったけれど、私とカユはやらなければならない下処理を少し省いて料理をしてしまっていた。それもあって上手く作れていなかったみたいだ。



「おい、しい」

「美味しいわ。流石、シノミね」

「良かった。沢山作って皆にふるまうんだよね? じゃあ、アトスさんたちに許可をもらわないと。今日の夕飯の一品に加えてもらおうよ」



 シノミはそう言って笑う。



 そうだよね。皆に食べてほしいなら夕飯として加えてもらうことが一番良いかもしれない。

 そんなわけでアトスさんの元へ向かって許可をもらう。アトスさんは「もちろん、いいぞ」と笑顔で頷いてくれた。




 夕食に加えた木の実のスープを出した。



 私とカユとシノミだけで作ったことに皆少し驚いたような顔をした。だけど次の瞬間には「ありがとう」「おいしいよ」とそんな風に言ってくれた。



 そうやって言ってもらえるだけで、皆に少しでもありがとうを返せたかなと嬉しくなるのだった。






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