ある日の散歩
グリフォンの巣で暮らしていた頃の話です。
スカイホースのシーフォの上に私は乗っている。私はシーフォやグリフォンたちの上に乗る事が好きだ。背が低い私が少し高い所から景色を見れる。それが楽しい。それに家族の上に乗るのは何だか嬉しい気分になる。
シーフォの背中にくっついて、ぎゅっとするとシーフォは嬉しそうに鳴いてくれる。温かいぬくもりを感じると何だか幸せな気持ちになる。
今日はシーフォとのお散歩だ。
グリフォンたちはお留守番。住んでいる巣からあまり離れない所に行くのよとカミハに注意された。シーフォはそれに了解と言う意味で鳴いた。
日差しが温かい。木々や花の匂いがする。この自然豊かな環境が私はとても気に入っている。人との関わりがなくても、家族が居るだけで何て幸せなのだろう。
その幸福に包まれて、私は嬉しくて仕方がない。
シーフォは森の中でグリフォン達の巣からそんなに離れていない場所に連れて行ってくれた。この森の中は、私にとって好きで溢れている。ううん、シーフォが一緒ならどこだって楽しいんだ。
シーフォと一緒にお散歩するのは嬉しくて、楽しい。
「木の実」
木の実を見つけて呟けば、シーフォはその木の実のなっている所に近づいてくれる。シーフォの上から木の実に手を伸ばす。届いた。
手にした木の実を口にする。おいしかったので、シーフォにもあげるとシーフォは嬉しそうに食べた。
こうして美味しいものを食べると嬉しい。食べる事が嬉しいと感じた事は生まれ育った村ではなかった。こんなにも嬉しい気持ちになれるのはシーフォと一緒だからだ。
おやつとして食べた木の実以外は袋に入れて巣へと持ち帰る。グリフォンたちにも食べてもらうためだ。
この森の中は食べられるものが実っている。とても豊かな自然に恵まれている場所だ。
中には食べられないようなものもあるみたいだけれど、そういうのはなんとなく見つけたら食べられないと分かるから食べない。
シーフォと一緒に進んで見つけた美味しそうな果実もそれだ。桃色の果実。見た目は美味しそうだけど、私の直感は食べたら駄目だと言っている。
シーフォは私の根拠のない言葉も信じてくれて、それを食べることはしない。実際に通りかかった小さな魔物がそれを食べて倒れたのを見ているから、本当に食べ物って見た目で判断できないと思った。
こういうなんとなくの直感がなかったら、私は毒物を食べてとっくに死んでいるのかもしれないとも最近考えてしまう。
「シーフォ、あっち、行こ」
シーフォにそう言えば、シーフォはそちらに足を進めてくれる。もちろん、巣からそこまで離れて居ない範囲でだけど、それでも散歩ってやっぱり楽しい。
「ひひひーん(気持ちがよい)」
「うん」
シーフォも風を感じて嬉しいみたい。私もシーフォが楽しそうだと嬉しい。
ぽかぽかとした日差しを感じながら、私とシーフォはお散歩を続ける。咲き誇る花を見るのも楽しい。お花と一口に言っても、色々な色や色々な形の花があってそういう花を見るのも楽しい。お花を見ると何だか穏やかな気持ちにもなる。
「花、き、れい」
「ひひひーん(そうだね)」
赤、黄、青などの様々な色のお花がこの森の中では咲いている。シーフォの上から降りてその花の傍に屈みこむ。その花々を摘んで、花冠を作る事にした。
花冠を一心に作っている間、シーフォは待っていてくれた。
完成した花冠はシーフォの頭の上に乗せる。私はあまり出来る事が自分にはないから何でもあげられるものがあったら皆にあげるようにしている。私の感謝の気持ちを込めてのプレゼント。シーフォは嬉しそうに鳴いてくれる。
それが嬉しくて、グリフォンたちにもあえようと花冠を皆の数だけ作る事にした。
子グリフォンたちには少しだけ小さ目のものを。そうして全員分作ったのだけど、シーフォは最後に言う。
「ひひひーん(レルンダのは?)」
「私、の?」
「ひひひひーーん(レルンダも一緒の方が良い)」
そんな風にシーフォに言われたので、私の分の花冠も作る事にした。とはいえ、自分の分だと思うと皆の時よりもあまり気合が入らない。
でもお揃いの方が喜ぶと言う言葉に花冠を作った。
それからお土産として採取した木の実と私の作った花冠を持って家族の元へと戻った。グリフォンたち一匹一匹に花冠を乗せてあげると嬉しそうに鳴いてくれた。
私はこんな風に家族と過ごす生活に本当に幸せを感じてならない。
また何かリクエストあればどこかに書いていただければと思います。
書けそうなら番外編としてこちらに投稿していきます。