01-5
「声がもう少し可愛かったら良いんだけど……子供っぽい話し方とかさ」
『お願いだから、言わないで!』
本人が一番理解してるらしい。
目を瞑り軽く下を向いて震えているが、丸すぎて尻尾がなければ、何処を向いてるかわからない。
手足はあるのか?と、疑問が浮かんでくるレベルで毛がふわふわで長い。
「……で、どうして私を見ていたんだ?」
『久しぶりに人間を見たから、どんな子かなって思ったんだけど……』
「感想どうぞ。」
『女の子なのに、かなり肝が座ってるなと。』
「…………ライポマースの軍服着てる時に、その感想を聞けるって事は、やっぱり異世界か。」
今の服装から軍の事に触れなかった。
ライポマースはエルミアが住み、軍人として所属している帝国で、色んな面から世界の上位ランクにあるため、かなり有名な国だ。
軍服を着ていたら一目で、その国の者とわかる。
その国の軍服を着ていて、肝が座った女の子と言われると、異世界なんだと改めて納得させられる。
『なぁお前、今……異世界って言ったか?』
エルミアが一人で納得していると、目の前で白い毛玉が目を輝かせながら、エルミアを見つめていた。
愛らしい尻尾が犬のように揺れている。
「異世界か? 言ったけど、それが?」
『この世界で異世界なんざ、経験してる奴しか出ない言葉だ! お前は何処の世界から来たんだ? 地球か? 地球なのか?』
「地球はいたことあるけど、今はガリアって世界からの転移ってとこだね。」
『今はって…………苦労してんだな。』
「言うな……」
どうして地球しか言わないのかは、あえてエルミアは聞かなかった。
大体の見当はつく。
苦労と言われると、思い出したくないものがいくつも出てきたが、それも流した。
黒歴史で済ませられる可愛らしいものではないのだ。。
『細かい話はそこの川に流して。ここで焚き火って事は、野宿か?なら、人間はいないけど、俺達の町に来ないか?』
「人間がいないって、普通に考えたら魔物や人外種が住んでるんだろ? 私が行って良いのか?」
『問題なっしんぐ! アイツらは、俺が転生者だって知ってるから、大丈夫。似たような状態のお前をほっとけるかよ。』
毛玉はエルミアの前で何度か跳び上がった。
いつの間にか警戒が無くなっている。
その姿はやはり可愛らしいが、どう聞いても声がやっぱり似合ってない。