01-4
『いやぁ、気付いてたか。』
ガサガサと、エルミアの後ろにある茂みから何かが出てくる音が聞こえたと思ったら、青年男性の声が聞こえた。
『何時から気付いてた?』
若さが残りながらも少し落ち着きのあるその声は、言い方は軽いものの、警戒の色を纏わせている。
勿論エルミアも警戒してはいるが、声の主の警戒はあまりにもわかりやすい。
もしかしたら警戒と言うより、緊張と言っても良いかもしれない。
「焚き火の準備をしだした頃かな……それぐらいに気配を感じだした。」
エルミアは、下手に後ろを向き、斬りかかられるのを避けるため、あえて振り向かずに話した。
相手がどんな容姿かわからないが、手元に携帯用の折り畳み式の隠しナイフを取り出した。
小さく聞こえる足音は音の切れ間から、二足歩行の歩き方ではない。
四足歩行のように聞こえるも、いささか音が軽く感じた。
『最初からってやつだ。お嬢ちゃん、凄いね。』
「私の周りは普通にやってるよ、凄い事じゃない。」
むしろ出来ないと、上司に何と嫌味を言われるか……と思えば、エルミアは声の主が自分の顔を見えないため、軽く苦笑した。
上司の平然と嫌味を言ってくるあの姿は、何年経ってもイラッとする。
『てか、何でこっち見ないんだ?』
「あー……見ても攻撃してこないなら、そっち向くよ。振り向いたらなんちゃら、なんて嫌だからね。」
『大丈夫、大丈夫。何もしないから。』
声の主もエルミアが向かないのを気にしたらしく、自分の方を見ない事を指摘してきた。
言われたからには振り向くしかなく、エルミアはゆっくりと振り返った。
『おっ、思ったより子供だな。』
「…………」
『ん?どうした?』
「その姿、女子供受け狙い過ぎじゃない?」
『そこ言うな!』
声の主を見て、エルミアは一瞬固まった。
声と容姿が合ってないと言うよりも、何処かの世界のある需要を狙ったような姿だったからだ。
両手で持つような丸いフォルムに、白く猫のようで足が見えない長さをもった毛並み、冬毛の時の狐のようなふんわりとした尻尾がついていて、アーモンドのような丸い瞳。
ふわふわの白い毛玉と言う萌えの塊だ。
そりゃ、足音が軽いわけだ。
それがエルミアに話しかけてきた声の主だ。
完全に何かを狙ったような可愛らしい要素なのに、青年男性のような声なため、ある意味見た目詐欺である。